ロッカーの中まで評価される新時代入試の衝撃

ロッカーの中まで評価される新時代入試の衝撃

インターネットは教育をどう変えていくのだろうか?PCやタブレットさえあれば、誰もが同じような情報・知識を手に入れることができる世界になれば、「パッケージから作られたブラウニー」のように、テストスコアでは、ほとんど差がつかない状況になるだろう。

まさにそのような時代を迎えた今、大学はどのように人財を選んで入学させるのか? この問いかけに対する1つの回答として、今米国で話題なのが、“Coalition for Access, Affordability, and Success”だ。

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これは、生徒が学生時代の記録を「スチューデントロッカー」と呼ばれるクラウド上のデータバンクに何でも蓄積することができるしくみだ。日々の活動の記録や、学校で課された宿題、論文、画像はもちろん、動画、受賞歴など、様々な経験を、生徒が自分でデータ上に保存することができるプラットフォームになっている。

言ってみれば、ポートフォリオを作成するための材料を溜め込む、オンライン上のロッカーだ。

このシステムは、生徒の意思で共有化することによって、高校のカウンセラー、教師、メンターなどから、フィードバックを受け取ることも可能にしている。生徒は、この蓄積されたデータを使って、大学入試の出願資料を作成することができるので、出願直前に過去の資料をひっくり返す必要はない。

すでに90近くの名門大学が、このシステムを経由して学生の入学志願書を受け付けようとしている。志願者を学校の成績とSATのスコアという「結果」だけで評価するのではなく、ロッカーの中身を覗いて、学びと活動の「プロセス」を見ることで、自大学の求める人財像に、より適合した学生と出会いたいというのだ。

このシステムによって、アメリカの高校の進路指導のあり方が変化していくことは間違いない。学習者が自分のデータをどれだけ蓄積でき、誰からどのようなフィードバックを受け、ブラッシュアップをかけ、自己の成長を可視化できるかが、これからの入試で求められることになるだろう。

言い換えると、学習者自身が蓄積しないかぎりデータは変わらないし、さらに、指導者がその蓄積したデータに対して積極的に干渉しなければ、ただの記録にしかならないのだ。

また、学生の目線に立つと、このシステムの出口として90以上もの大学が見えていることになるので、これまで視野に入っていなかったような想定外の進路が選択肢になる可能性がある。ほかにも、学力が原因で大学に進学することすらあきらめていたような学生が、高校生活を充実させていけば、大学進学の可能性が広がるのだという気付きにつながるかもしれない。もはや教科書を通じた教育だけが、大学への道標ではないのだ。

自分自身がふだん使っているロッカーの存在が自分の未来につながる入口になるのである。

このように、観点を変えることで入試のしくみが変わる。そして、教育プロセスが変化していく。多面的・総合的評価型入試を実現しようとしている日本も、遅かれ早かれ、米国と同じ課題に直面するだろう。今のうちから、この新しい潮流を捉えて、改革の舵取りをすることには大きな価値があるはずだ。

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