「スーパーグローバル大学」の意外な盲点

「スーパーグローバル大学」の意外な盲点

グローバル化の時代を生き抜く人材を育てるためには、大学自体もグローバル化しなければならないことは言うまでもない。その流れを牽引する大学として2014年に文部科学省主導のもと、日本の37校が「スーパーグローバル大学」が指定された※1が、世界のトップ大学との距離感はなかなか縮まらないというのが実情だ。

※1:「文部科学省:スーパーグローバル大学創成支援」を参照。

入試のあり方そのものに迫る

その大きな要因の1つに、入試制度が世界標準ではないことが挙げられる。

アメリカでは、Common ApplicationやUniversal College Applicationなど、ハーバード大やプリンストン大など、数十、数百の大学が共通のプラットフォームで学生を募集する仕組みが確立している。

学生は、学業成績、課外活動の履歴、テストスコア、エッセイ等をインターネット経由で提出すれば、合否を受け取ることができる。しかも、一度に複数の大学に提出できるので、何度も自分の名前や住所を書く手間もない。

ようするに、学力必須のAO入試が完全にオンライン化されているイメージだ。これこそ、日本がやろうとしている「多面的・総合的評価型入試」の先駆けと言える。

世界標準の入口が設けられていないと、世界の学生を募集することはできない。世界から学生が集まらない大学をグローバル大学と呼ぶのは困難だ。

外国人留学生が多いとされる大学でも、協定校からの交換留学による場合が多く、正規の授業料を払って学びに来ている学生の比率は、欧米の大学に比べれば圧倒的に低い。

東京大学の平成27年度の外国人学部留学生数(永住者を含まない)は278名。正規学生全体の約2%だ。ハーバードやイエールの国際学生の比率は、例年10%以上を占める。たった8%の違いだと思うかもしれないが、約5倍の差があることになる。

10人に1人が外国人留学生か、50人に1人が外国人留学生か、では大違いだ。この差を縮めるためには、川上をおさえる以外の方法はない。グローバル人材を育成して世界に送り出す川下戦略も当然重要だが、人材の仕入れをグローバル化する川上戦略がなければ、世界の大学と肩を並べることは困難だ。

日本では、「インターネット出願」が流行り始めているが、それはいわゆる「願書」をWebで出せるというだけで、入試プロセスの全てがオンライン化されているわけではなく、いまだに受験料の支払い領収書は郵送しなければならない場合などもある。

この流れのままで、世界各地にいる優秀な人材をリクルーティングできるわけがない。日本の大学に入学するために、わざわざ手書きで願書を書いて、書類を整えて国際便で送付するような奇特な人は極めて少ないのだ。

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