世界中の学生と学び合う場がある 〜 グローバル・リンク・シンガポール2017セミナー・説明会レポート 〜

世界中の学生と学び合う場がある 〜 グローバル・リンク・シンガポール2017セミナー・説明会レポート 〜

科学・社会課題をテーマに発表と議論を行う、中高生のアイデアコンテストがある。その名も「グローバル・リンク・シンガポール2017」。シンガポール国立大学(NUS)を舞台に、中高生が研究発表を行うビッグイベントだ。第3回となる2016年は、アジアの6つの国と地域(日本・シンガポール・マレーシア・タイ・インドネシア・台湾)から27校82名の中高生が集まったという。そして来年の第4回開催に向けて、日本の中高生、保護者、SGHやSSHの教員などを対象に、説明会が実施された。

会場となった立教大学池袋キャンパスの教室は、ほぼ満席。多彩な特別ゲストを招き、様々な角度から、グローバルに活動する心構えを掘り下げる会となった。前半では「グローバル人材になるために中高生に取り組んでほしいこと」というタイトルで、2名の講師が登壇された。どちらのお話も非常に興味深い。

英語を学ぶことは、可能性を広げること

1人目はシンガポール南洋工科大学(南洋理工大学)の佐藤裕崇准教授だ。シンガポール南洋工科大学と言えば、2016年のアジア大学ランキングで、シンガポール国立大学に続いて第2位を獲得した超名門大学。佐藤氏は、生きた昆虫に小型コンピュータを取り付けて、人の行動範囲を超えたデータ収集を可能とする「昆虫サイボーグ(Cyborg Insect)」の研究で有名だ。

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佐藤氏は今年「グローバル・リンク・シンガポール2016」の基調講演に登壇し、学生たちの研究発表の審査員を経験され、中高生たちの数々のイキイキした研究発表に、とにかく感動したという。例えば、東日本大震災を経験した学生は、崩れた建物のコンクリートに着眼し、そのコンクリートを再生するメカニズムについて発表したらしい。みずみずしい感性で科学的に思考する経験が、彼らの可能性をどこまでも広げていく。

この研究発表の最大のポイントは、「全てを英語でこなす」という点だ。ここでいう「全て」というのは、発表のことだけを指しているわけではない。発表後に交わされるタフな質疑応答までもが一貫して英語だ。そんな究極の場面を経験することで、参加者は英語によるコミュニケーションの難しさと同時に、英語が伝わる楽しさを痛感することだろう。

佐藤氏は、「英語は将来を保証するものではなく、可能性を広げるものだ。」と述べ、参加する中高生たちに、英語の重要性を切に訴えた。筆者の心には、「英語が堪能でないだけで、日々発表される新たな学術論文を読む機会を損失しては、あまりに勿体ない。」というメッセージが突き刺さった。

自分のニッチを創造しよう

さらに、自分の生きる道をどう選ぶかという話の中で、こんな言葉が提示された。

Superstar or Niche(スーパースターになるか、自分のニッチを創造するか)

全てをうまくこなし、世界を舞台に百戦錬磨で生き抜くスーパースターはそう多くはない。そんな中で、スーパースターでない多くの人は何をすべきか。それは「自分のニッチを創造することだ」と佐藤氏は言う。ニッチとは、一般的には「隙間」や「小規模な分野」を意味する言葉だが、佐藤氏の講演の中では、もっと深い意味で用いられていた。

たくさんのことを勉強し、習得し、それらの組み合わせの中で自分にしかない独自の分野を打ち立てることを意味していたのだ。そういった点において、この「グローバル・リンク・シンガポール」のような機会を活用して、自分の未知の物事に果敢に触れていくことは、自分のニッチを創造する重要な要素づくりになるだろう。

世界で、自分をゼロにする経験をしよう!

2人目の講師として、東京工業大学の原正彦教授が登壇された。タイトルは同じく「グローバル人材になるために中高生に取り組んでほしいこと」だ。原氏の講演は強烈なデータとともに幕を開けた。指標の入っていない円グラフが提示され、それが何の割合を示したグラフなのかを参加者に連想させた。

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答えを聞いて驚いた。実はこのグラフ、ある調査で日本人に対して「留学したいと思うか?」「海外に出て仕事をしたいと思うか?」という問いかけをした時の「Yes・No」の結果だというのだ。

Aは全国の高校生を母数にしたもの。全体の3分の2程が海外を敬遠し、国内に目が向いている。そしてBは高校生男子。そしてCは高校生女子だ。これを見ると、特に高校生男子は海外への意識が極めて低いのだ。

そしてさらに強烈なのはDのグラフだ。これは「海外で働かないか?」と問われた時の答えだというのだ。日本人の留学生数が減少してるという問題は様々なメディアで取り上げられているが、世界に目を向けるマインドが、社会に出てからも極めて消極的ということだ。

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こういった内向きの志向が、キャリア形成の可能性を大きく狭めていると原氏は言う。講演の中で、グローバルに活躍する意味を次のように列挙された。

世界に出るということは、異なる価値観を認識し、自分を一度ゼロにする経験を持つということだ。

例えば、大学を卒業してからも、人は就職・結婚・出産・死別などと様々な経験をする。その初めてする経験の中で、既存の概念を自己否定し、新たなコンピテンシーを身につけていく。この自己否定と成長の繰り返しがキャリアの形成の本質だとすると、この「グローバル・リンク・シンガポール」が、自身のキャリア形成の第一歩となることは間違いない。

発表の場は、自分で用意する!

会の後半では、学生時代に「Intel ISEF(International Science and Engineering Fair)」に参加した2名の先輩が、登壇された。この通称「ISEF」は、「国際学生科学技術フェア」などと和訳され、世界中の高校生たちが自分の研究を披露し合う科学研究コンテストだ。今回取材した「グローバル・リンク・シンガポール」と非常に近い発想で行われているビッグイベントである。

先輩たちは、生々しい2つのエピソードを話してくれた。1つ目は、実際に会場でポスター発表をしていた時のこんな話だ。

海外の中高生の中には、道端で知らない人に積極的に声をかけて「私のプレゼンテーションをぜひ聞いていってくれないか」と売り込みにいく学生がいっぱいいる。これには驚いた!

どうだろうか。道行く人に、自己アピールの時間をくれと英語で迫るアグレッシブさを肌で感じるのだ。そんな同世代の仲間と出会うだけでも価値があると筆者は思う。

そして2つ目はこんなエピソードだ。

研究の発表は、みんなスーツを着たり、お気に入りのネクタイを締めたりと、とにかくスタイリッシュでおしゃれ。懇親会もパーティスタイル。そういう点からも、「研究ってカッコイイんだ」って思える!

要するに、研究発表を通じて「社交の場」の経験をするのだ。こういった普段とは違ったドレスアップの文化を肌で感じることも、新たな価値観を中高生の中に芽生えさせる大切なきっかけなのかもしれない。

説明会を通し、「自分が高校生の時にこんな機会があったらどんなによかっただろう」と筆者は実感した。興味関心を持たれた読者の方は、ぜひ行動に移してみてほしい。きっと唯一無二の経験になることだろう。

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