LINEグループの中で送信した「かわいくない」という言葉をきっかけに、クラスメイトから無視をされ不登校寸前になった小学生の話を知っていますか?
2014年9月発行の国民生活センターの情報誌『国民生活』でも、「インターネットと上手につき合う」の章でこの話が取り上げられています。
友達にもらったぬいぐるみについて「このぬいぐるみ、かわいくない」と書いたところ、書き手は「かわいくない?(すごくかわいいよね)」と伝えたつもりが、受け取った相手には「かわいくない!」と否定的な言葉に受け止められてしまったというもの。
高校生に「かわいくない」という言葉の事例を知っているかを尋ねたところ、「小中学校で毎年講演に来る人が違っても、同じ例を言っているのを聞く。またか!と思う。」と言われるくらいに、情報モラルの講演では定番と言えるフレーズになっているようです。
「テスト、どうやった?」にたいして「適当にやった」と返信を受け取り、本当は「どの程度できた?」と聞きたかったのに…と少し笑えるものまで、文字でのやりとりによる言葉の行き違いは他にもあります。
行き違いがある言葉の例
否定的な意味合い | 否定的ではない意味合い | |
---|---|---|
大丈夫 | 結構です、不要です | OKです |
いいよ | 不要です | OKです |
おかしいわ | 変わっている、変だ | 可笑しい、面白い |
なんでくるん? | なぜ来るのか?来てほしくないのに | どの交通手段で来るのか |
文字やスタンプなどを利用したコミュニケーションでは、身振り手振りや声の抑揚、表情などを伝えることはできません。
しかし、子供たちはネット上でやり取りする言葉だけに注意を払えばよいのでしょうか?
ネットは日常生活の延長線上であり、日々の生活と切り離して考えることはできないことは、先にあげた「かわいくない」に代表される言葉の行き違いで、現実での無視につながることからもわかります。
親子で鍛える言葉の使い方
井戸端会議で多くの保護者から聞く親子間の会話は、おおよそこんな感じでしょうか。
「お母さん、お茶」
「お母さん、プリント」
子供が単語で会話をするので、理解できなくて困るというのです。
我が家でも、子供が低学年のうちはそのようなやり取りが日常茶飯事でした。
そのつど、
「お母さんはお茶じゃない、お茶をどうしたいの?」や、「お母さんはプリントをどうすればいいの?」と返事をするのです。
そうすると、自然と子供の言い回しも、「お母さん、お茶入れて」「お母さん、プリント見といて」というように、何をどうして欲しいのかがわかるような言い回しに変わってくるのです。
相手に気持ちや物事を伝えるために必要な言葉は、日常会話から十分に学ぶことができるのではないでしょうか。
通知が子供たちを追い詰める
さて、子供たちの日常に話を戻すと、朝起きてすぐに子供たちがスマートフォンを手にしたとき、メールやメッセージアプリにSNS、ゲームなどさまざまな通知が画面にあふれています。通知を一気に消し去ってもよいのですが、メッセージ通知があるにもかかわらず既読にしないと「未読無視」と言われてしまい、「既読無視よりたちが悪い」と言われかねないというプレッシャーを感じるという声もあるのです。
相手がメッセージを見ることができない環境にいるかもしれない、また、見る余裕がないかもしれない、返信することができる環境ではないのかもしれないなどと、スマホの向こう側を思いやることができれば「既読無視」や「未読無視」という受け止め方はなくなるのかもしれません。
メッセージアプリの新着が通知に現れると、とりあえずスタンプや一言を送ることが礼儀のようになってしまい、送信前に一呼吸する余裕すらなくなってしまわないように、普段から、言葉に対する意識を高めていきたいものです。
ネットでもリアルでも、相手の状況・環境を意識し、伝えたいことをはっきりと表現する
最初に取り上げたLINEの問題をはじめ、こうしたトラブルに共通するのは「思い込み」、つまり、自分の価値観の押し付けです。相手がどう思っているのか、まずその気持を持ってコミュニケーションを取ることがとても大切です。そのうえで、自分が相手に何を伝えたいのか、何をしてもらいたいのかをはっきりと表現することが大切です。インターネットやスマートフォンが普及したことで、いつでもどこでも誰とでも、簡単にコミュニケーションを取れるようにはなりました。しかしそれはあくまでコミュニケーションのきっかけが作りやすくなっただけです。
大人はどうすべきか
こういった言葉の行き違い問題、それに起因するコミュニケーショントラブルが起きるたびに、子供たちは「ネット上での言葉の使い方には注意をするように」と指導されています。しかし、相手を考える言葉遣いについてはネット上の問題だけではないのです。スマホに詳しくないからネットのことはわからないと、別の誰かに対応を任せてしまうのではなく、学校、家庭、友達間でネット上だけではないリアルな言葉の練習をしてみませんか?