スマホ依存、原因は人間関係のトラブル? 背景となる原因を探ろう

スマホ依存、原因は人間関係のトラブル? 背景となる原因を探ろう

子どものモバイル端末所有率が高くなっている昨今、テクノロジーの発展が期待される陰で、「スマホ依存」という言葉も聞かれるようになりました。スマホがないと苛立ったり、パニックに陥ったり。社会生活がままならない子もいます。そこで、前回の「気づかぬうちに中毒かも?!スマホ依存度を測るには?」では、ネット依存の定義を援用し、スマホ依存の診断チェックをご紹介しました。では、そもそもスマホ依存はなぜ起こるのでしょうか?

大抵はコミュニケーション上の問題が原因

勉強のちょっとした息抜きにスマートフォンのゲームをやり、しばらくした後、勉強を再開するなど、どんなに夢中になっていてもスマートフォンの利用時間を制限できるのであれば問題ありません。問題なのは、勉強そっちのけでスマートフォンに没入してしまっている場合です。そのような依存的傾向は、何かから現実逃避したいという気持ちからやってきていることが多いのです。

久里浜医療センター院長である樋口進先生の『ネット依存症』(PHP新書)によると、スマホ(ネット)依存に陥る原因の典型は、人間関係のトラブルだとのこと。たとえば、多感な中高生時代ならば、入った部活の人間関係がギクシャクしたり、いじめにあったりというようなことから、ストレス発散目的でスマートフォンゲームにはまって夜中までプレーしてしまう。そのまま寝不足になって、遅刻になって…という経緯を辿ります。もともと成績が優秀なお子さんが依存に走る場合も多く、保護者も今までにないことへの対処に困って、子どもの話を傾聴できず、怒ったり強制的に利用を制限したりすることでさらに子どもとの関係が悪化、子どもは孤独になって引きこもっていく……という悪循環が起こるのです。

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このような人間関係のトラブルが原因の場合、ただスマートフォンを取り上げるといった対応をとっても、子どもは暴れてしまったり家出してしまったりというような猛反発をしてくるか、別の依存先を見つけて没入していってしまうかして、問題は全く解決しません。心が悲鳴をあげている状態の緊急避難場所としてスマートフォンを選んでいるだけなのですから、子どもが何に対して悩みを抱えているのか大元の原因を探って、救いの手を差し伸べてあげる必要があります。

うつ病やADHD、広汎性発達障害との合併精神障害の可能性も

他の精神疾患が背景となって、スマホ依存と重複障害を起こしているケースも考えられます。韓国やアメリカなど各国の報告によると、ネット依存者がうつ病などといった気分障害やADHD、広汎性発達障害などと合併精神障害を起こしている事例が数多く認められています。

うつ病(気分障害)やADHD、広汎性発達障害それぞれについての詳細は、LITALICOさんのページにわかりやすくまとめられていますので、スマホ依存が疑われる子が以下の精神疾患と似た傾向がないかもチェックすることをお勧めします。

・うつ病(気分障害)
気分の持続的な落ち込みを主体とした症状が現れている状態。
https://h-navi.jp/column/article/35025875

・ADHD(注意欠陥・多動性障害)
年齢あるいは発達に不釣り合いな注意力、及び/又は衝動性、多動性を特徴とする行動の障害で、社会的な活動や学業の機能に支障をきたすもの。
https://h-navi.jp/column/article/165

・広汎性発達障害
コミュニケーションと社会性に障害があり、限定的・反復的および常同的な行動がある
https://h-navi.jp/column/article/175

こういった患者の多くはコミュニケーションをとるのが苦手で、集団の中で自分の立ち位置を見つけられずにスマホ依存へ向かっていくことがあるのです。

社会不安障害の患者がスマホを手放せないという例も聞かれます。社会不安障害とは、他人の視線や評価を極度に恐れ、発汗・赤面・震え・動機などの症状が出る疾患です。幅広い層がなりえますが、特に10代半ば頃から発症することが多いようです。人と接する際に不安や緊張、息苦しさを感じることから、できる限り人とコミュニケーションをとる機会を避けていく結果、社会生活が送れない状態になっていき、不登校や引きこもりになりやすいのが特徴です。オンラインゲームやSNSなどといった、直接的に誰かと対峙することのないスマートフォンのサービスは、利用しても傷つくことがないからどんどんのめり込んでいくわけです。

人生計画や生活目標がないから依存になる

自分が将来どんな職業に就きたいかやどんな大人になりたいかといった人生計画がないこと、人生計画から棚卸しされる日々の生活目標がないことが依存へと向かわせもします。

将来の夢がみつかっていなくとも、たとえば勉強がわかるから面白いとか、部活にのめり込んでいるとか、習い事が楽しいとかといった、打ち込める何かを持っていればスマホ依存へとは向かわないでしょう。できる限り上位の成績をとりたい、大会を乗り切りたい、上手いと褒められたいなど、目標があるかないかで日々の過ごし方は変わってくるはずです。

スマホ依存者は、PC経由のネット依存者よりも、動画やブログを延々と閲覧し続けてしまう傾向にあり、可処分時間をコンテンツ消費につぎ込んでしまいがちです。これはコンテンツ接触型の依存といわれていますが、とりわけ生活にこれといった目標がないために、刺激を求めて際限なくスマートフォンを触り続けてしまっているのです。

もし、学校の授業についていけないことが原因で、学習上の目標を失っているという場合は、どこでつまずいているのかを突き止めてあげることが大切です。時間をかけても同じ場所でつまずいてしまっている場合は、LD(学習障害)を抱えている可能性もありますので、支援の仕方を考えたいところ。また、別にストレス発散できる何かを見つけること、ストレス発散先がスマートフォン利用となってしまっても時間を制限して自律的になることなどを意識させましょう。

・LD(学習障害)
基本的には全般的な知的発達に遅れはないが、聞く、話す、読む、書く、計算する又は推論する能力のうち特定のものの習得と使用に著しい困難を示す様々な状態
https://h-navi.jp/column/article/41

SNSならではの「きずな依存」

LINEやFacebook、InstagramなどといったSNSは、誰かから好意的な反応や「いいね!」をもらって存在を承認してもらえるという一方で、常に繋がり続けていないといけないというネットワーク依存を引き起こします。東京大学大学院 情報学環の橋元良明教授は、これを「きずな依存」といっています。とくに日本人は同調意識が強く、ムラ社会傾向があるため、ありがちな依存タイプのようです。
http://www.nippon.com/ja/currents/d00102/#auth_profile_0

これには「負の強化効果」というのが働いており、見なければ気が済まない、返事が来ていないかそわそわする、自分がログアウトしているうちにネット上で何かが起きるかもしれない(悪口を書かれていたり、面白い話題に乗り遅れたりするかもしれない)などという強迫的な気持ちを抱くようになり、繋がり続けようとするのです。

本当は学習の妨げになったり、自分の好きなことを邪魔されたりするので、子ども自身がやめたいと思っていても、友だちの手前やめられない状態になっていることが多いので、ときに先生や保護者が悪役となって、スマホを取り上げたり、利用状況を厳しく監視したりすると、ホッとする子どももいます。

いかがでしたか?

以上のように、同じスマホ依存でも、その原因を探り、根本的な問題の解決法を見出していくことが何よりも大切なのです。これには子どもの様子を窺うこと、こまめに声をかけて話を聞くことに尽きます。場合によっては、専門家に相談してみるのもよいかもしれません。

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