ID・パスワード共有は愛の証?!~共同アカウントからセキュリティ教育を考える

ID・パスワード共有は愛の証?!~共同アカウントからセキュリティ教育を考える

インターネットホットライン連絡協議会が公開しているインターネットに関わるこども関連の記事一覧(IHJ:2016年こども関連記事)を眺めていると、不正アクセスに関する事件が起こっていることをたびたび目にします。

2015年にIPAが行ったキャンペーン「パスワード-もっと強くキミを守りたい」では、少女漫画をモチーフにした胸キュンラブストーリーでパスワードについて訴えましたが、パスワードの大切さを伝えることは一朝一夕にはいかないようです。

ID・パスワードを共有する「共同アカウント」

中高生が利用するSNSは、LINEだけでなくTwitterやMixChannel、Instagramなど数多く存在しています。

LINEは複数のスマートフォンで一つのアカウントを共有できませんが、TwitterやMixChannel、Instagramではログインに必要なID・パスワードを共有すれば、同じアカウントを複数のスマートフォンで共有することができます。

ID・パスワードを共有して利用するアカウントは、「共同アカウント」と呼ばれています。

この「共同アカウント」の一つである「カップルアカウント」は、何気ない日常や、二人で遊んだこと、LINE会話のスクリーンショット、記念日のお祝いや、他のカップルアカウントとのやり取りなどに利用されています。

「カップルアカウント」の他にも、友達同士の交換日記的な投稿や、部活の情報発信など様々な目的で「共同アカウント」は利用されています。

Twitterでは、複数人で安全にアカウントを共有する機能として「TweetDeck Teams」を推奨しているのですが、画面は英語ですし、ブラウザを利用する必要があるなど、日本語化されたTwitterアプリを利用している子供たちには少しハードルが高く感じられます。

LINE QやYahoo!知恵袋などの質問掲示板では「共同アカウント」についての質問を行うと、「TweetDeck Teams」の利用ではなく、ID・パスワードの共有を薦められているのが現状で、そこにパスワードが大切なものであるという意識を感じることはできません。

パスワード共有は愛の証?

先に挙げた「カップルアカウント」は、普段利用しているアカウントとは別に作成するものですが、既に利用している個人アカウントのID・パスワードをお互いに共有してこそカップルという層も存在しています。

付き合っている相手とID・パスワードをお互いに共有している場合には、SNSのプロフィール欄に「○○乗っ取り中」と書かれていることが多く、乗っ取り中と書いてある相手方には「○○乗っ取り中」と同じように書かれ、いつでもお互いのアカウントにログインできるようにしているのです。

さて、相手のアカウントにログインしてすることと言えば、おおよそこんな感じです。

  1. プロフィール欄で付き合っているアピール
  2. 自分以外の異性とのDMのチェック
  3. 自分以外の異性フォロワーとの絡みチェックやフォロー解除
  4. 「からまんといて」「近づかないで」など異性へのけん制投稿

浮気をしない、やましいことがないという意思表示のためにID・パスワードを共有するのです。

しかし、別れた後にお互いに教え合ったID・パスワードを悪用されないと言い切れるのでしょうか?
せめて、別れてしまったら、お互いに教え合ってしまったID・パスワードの変更はしておきたいところです。

「乗っ取りごっこ」という名の不正アクセス

また、他人のID・パスワードを利用した「乗っ取り」を遊びとして受け止め「乗っ取りごっこ」をしあう姿もSNSで見かけることがあります。

以前、電車の中で、こんな会話を耳にしました。

「○○のアカウント乗っ取れたでー!」
「『いえーい』って書こうやー」
「写真載せよ!」
カシャっ!
「『乗っとった!いえーい』って書いて写真載せたでー」

会話を聞くだけでも、遊び感覚なのがわかります。

乗っ取られた相手も「乗っとった!いえーい」という投稿に対して「やめてwww」と投稿し、一つのアカウントを舞台に会話が繰り広げられれば、そこに、緊迫感を感じることはできません。

でも、よく考えてみてください、推測によるログイン突破は明らかに不正アクセスという違法な行為です。

子供たちが「不正アクセス禁止法」について学ぶ際に、学校では悪意を持った第三者による犯罪事例が紹介されますが、お互いに共有するID・パスワードについてや、遊びの延長線上と取られがちな乗っ取りごっこに絡めて解説されることはほとんどありません。

子供たちにID・パスワードの大切さを伝えるためにどういったアプローチが興味を持たれるのか。

子供たちの利用方法から、セキュリティ教育のあり方を考える必要があるのではと考えています。

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