2020年、次期学習指導要領はどうなる? 中教審の答申から

2020年、次期学習指導要領はどうなる? 中教審の答申から

    昨年の2016年12月21日、中央教育審議会(以下、中教審)が「幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について(答申)」を公開しました。
    2020年の学習指導要領(以下、指導要領)で大きな改革が行われることはわかっており、教育関係者は中教審の発信に目が離せない昨今ですが、膨大な資料を読むのは結構骨が折れます。そこで数回に分けて、一体どのように変わるのか、答申の内容を一つひとつみていきたいと思います。

    ■前回の改訂ポイントと課題は?

    まずは、2020年の指導要領について触れる前に、前回の2008~2009年の改訂はどのような内容だったか振り返ってみます。

    この回は、2002年から実施された「ゆとり教育」の見直しが図られ、「詰め込み教育」回帰との対立を焦点に議論が重ねられました。①知識・技能、②思考力・判断力・表現力、③主体的に学習に取り組む態度という学力の三要素の育成が重視され、言語活動や体験活動等を充実させるなども打ち出されて、改めて「生きる力」をしっかりと育むために授業時数が増加しました。

    OECDによる学習到達度調査(PISA)の日本の結果は、2000年代前半の順位の落ち込みから改善されてきています(下図)。これは2008~2009年の改訂に伴い、児童・生徒に対する学校の構い度が高くなったことが導いた結果でしょう。

    平均得点及び順位の推移。 (OECD生徒の学習到達度調査(PISA2015)のポイントから抜粋)
    平均得点及び順位の推移。
    (OECD生徒の学習到達度調査(PISA2015)のポイントから抜粋)

    OECD生徒の学習到達度調査(PISA2015)のポイントPDFデータ

    ただし、次のようないくつかの課題も出てきています。

    • 学ぶことと自分の人生や社会とのつながりを実感しにくく、社会生活に生かせない
    • 情報化の進展で、視覚的な情報と言葉との結びつきが希薄になり、読解力に問題がみられる
    • 生命や自然の大切さへの理解、文化芸術の感性を高める機会が限られている
    • 多様な人々と協働する中での規範意識や、よりよい生き方を模索する機会などといった道徳教育が不足している
    • 運動する子とそうでない子の二極化傾向が見られ、かつスポーツと多様に関わる機会が少ない

     

    ■2020年の指導要領ではどう変わる?

    上記のような2008~2009年改訂の課題に加え、情報化やグローバル化が人知を超えて加速度的に進展している現代では、子供たちが就く職業やどういった人生を歩むのかが予測不能であることも問題視されています。そこで、予測できない変化に主体的に向き合って、自分の力で人生を切り拓いていけることを2020年の指導要領では重視し、次のような項目が盛り込まれるようです。

    1.「社会に開かれた教育課程」の実現

    ①社会や世界の状況を幅広く取り入れ、学校発で社会を創る目標を掲げる
    ②自らの人生を切り拓いていくために求められる資質・能力を明確にする
    ③学校教育を学校内に閉じず、地域や課外と連携する

    2.学習指導要領等の改善の方向性

    (1)枠組みの見直し

    ①「何ができるようになるか」(育成を目指す資質・能力)
    ②「何を学ぶか」(教科等を学ぶ意義と、教科等間・学校段階間のつながりを踏まえた教育課程
    の編成)
    ③「どのように学ぶか」(各教科等の指導計画の作成と実施、学習・指導の改善・充実)
    ④「子供一人一人の発達をどのように支援するか」(子供の発達を踏まえた指導)
    ⑤「何が身に付いたか」(学習評価の充実)
    ⑥「実施するために何が必要か」(指導要領等の理念を実現するために必要な方策)

    (2)好循環を生み出す「カリキュラム・マネジメント」

    ①教科横断的な視点で教科内容を配列
    ②子供たちの姿や地域の現状をもとに、PDCAサイクルを回す
    ③地域などの外部の人的・物的資源も活用

    (3)「主体的・対話的で深い学び」の実現(アクティブ・ラーニングの視点)

    • 生涯にわたって能動的に学び続けることができるような「主体的・対話的で深い学び」の実現
    • 子供たちが「何ができるようになるか」を明確にしながら、「何を学ぶか」という学習内容と、「どのように学ぶか」という学びの過程を重視

     
    各項目の詳細説明は割愛しますが、大きなトピックスとしては、学力の3要素が「知識・技能」「思考力・判断力・表現力等」に加えて「学びに向かう力・人間性等」となり、主体性や道徳的観点が意識されています。

    また、すべての基盤となる言語能力や情報活用能力、問題発見・解決能力を体系的に学ぶことや、現代的な諸課題に対応して次のような力も育むことが述べられています。

    • 健康・安全・食に関する力
    • 主権者として求められる力
    • 新たな価値を生み出す豊かな創造性
    • グローバル化の中で多様性を尊重するとともに、現在まで受け継がれてきた我が国固有の領土や歴史について理解し、伝統や文化を尊重しつつ、多様な他者と協働しながら目標に向かって挑戦する力
    • 地域や社会における産業の役割を理解し地域創生等に生かす力
    • 自然環境や資源の有限性等の中で持続可能な社会をつくる力
    • 豊かなスポーツライフを実現する力

     
    発達障害を含む障害のある子供が在籍している可能性があることを前提に教材や授業が組み立てられることや、帰国子女や外国人児童生徒の日本語能力に応じた支援をすることなど、よりインクルーシブな教育も行うべきと掲げられており、幅広く今後の教育が目指す理想像が示されているとわかります。

    ■願いごとではなく、これからやること

    しかし、これらを先生方が網羅できるのか、筆者としては疑問です。半年くらい前に、東京大学 大学院教育学研究科・教育学部の本田由紀教授が「神社の絵馬じゃないんだから、何でも書けば叶うわけじゃない」というようなことをおっしゃていたのが今でも忘れられないのですが、指導要領にはとにかく「○○の力も、△△の力も…」と身につけさせたい能力が端から列挙されているため、七夕の短冊か神社の絵馬に書かれた願いごとのようなものにも見えてしまいます。能力というのは言葉で説明されても実体をつかみにくいものですし、子供によって備える能力が異なるため、わかりやすく全部の力を教授することはできません。

    ですから、これも指導要領のなかに書かれていますが、実態に合った教育を個別に段階的にしていくことが大切で、そのための予算・人員配置が肝になってくるでしょう。

    小学校では、今まで第5・6学年に35時間ずつ課されていた「外国語活動」が第3・4学年にスライドし、第5・6学年には「外国語」が70時間ずつ課されることになり、全体の授業数が増加します。
    中学校は教科内容に大きな変化はありませんが、高等学校は「公共」や「歴史総合」などの新設教科の設置・再編が行われます。
    小中高校すべてにプログラミングの授業も導入されるため、先生方の負担は増える一方です。今ある資源を最大限に生かしつつ、新たな資源(ヒト・モノ・カネ)をどうするか考えていくために、今後の文科省の動きも日々チェックしたいものです。

    次回は各教科の内容がどう変わるのかについて言及します。
    お楽しみに。

    ・参考資料
    幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について(答申)【概要】(PDFデータ)

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