2020年、次期学習指導要領~外国語その2:指導計画案や教材はどうなるの?

2020年、次期学習指導要領~外国語その2:指導計画案や教材はどうなるの?

2016年12月21日に中央教育審議会によって出された「幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について(答申)」を数回に分けて読みとっていくシリーズ。2月14日に出された学習指導要領改定案も踏まえながらご紹介していきます。今回のテーマも前回に引き続き、外国語についてです。

前回の「2020年、次期学習指導要領~外国語その1:国際基準に近づくための枠組みとは?」で答申の基本的な枠組みを押さえましたので、今回は2017年1月30日の有識者会議で出された指導計画素案や教材例について言及します。

■今までの外国語活動はどうだった?

現在、小学5・6年生が受けている外国語活動では、国により作成された小学校外国語活動教材例「Hi, friends!」が、希望を出した約2万校の学校に配布されています。地域・学校・学級の実態に合わせながら活用されており、子供たちも積極的に授業に取り組んでいるようです。

ただし、中学校での英語の授業と接続が悪く、音声中心で学んだ内容や基本的な表現が生かせないこと、日本語と英語の音声の違いや英語の発音と綴りの関係、文構造の学習などにおいて課題があることなどが指摘されています。

学習指導要領改訂の2020年には小学5・6年生向け教科書、小学3・4年生向けの補助教材が使用できるよう、新教材(児童用冊子、教室用デジタル教材、年間指導計画例、学習指導案などを含む教員用指導書)が開発されます。2017年には校内研修用資料が教育委員会等を通じて周知されるそうです。では、新教材とは一体どんな内容なのでしょうか。

■外国語の新教材はどうなるか?

次のようないくつかの方針が示されています。

①新教材の方向性

  • 児童の興味関心、発達段階を考慮した内容、言語材料、デザイン、イラストに
  • 特別支援教育の観点で配慮
  • 学年間・学校種間の円滑な接続に留意

②冊子等の構成

  • 冊子・デジタル教材・指導上の留意点等が書かれた冊子・学習指導案等を作成
  • 他教科における既習事項と結びつけながら柔軟に活用できるように

③内容の構成

  • 次期学習指導要領に国が定める5つの領域別の目標と対照しながら作成
  • 単元の最後にできるようになることを目標として配置
  • 児童の発達段階や学年に応じてインプットからアウトプットへ向かうようなモデル
  • 新出事項、既習事項、アウトプットを有機的に結合
  • 学んだ内容を中学年から高学年にかけて繰り返し学べる
  • 児童に身近でわかりやすい場面を設定

④内容

  • 第3学年からは「聞くこと」「話すこと」中心、高学年にかけて文字を「読むこと」「書くこと」を系統的に加えていく
  • 各校の学習到達目標を活用して小・中・高等学校を通じた学びを設計
  • アルファベットの文字の認識、日本語と英語との音声の違いやそれぞれの特徴、文構造への気付きを促す
  • 動詞の数を充実させる
  • 過去形も導入(小6)
  • 三人称(He, She)も扱われる(小5)

⑤国語教育との連携

  • 国語教育と外国語教育の相互の連携を図り、可視化
  • トピック、活動、言葉の仕組みなどの面で国語教育との関連を図る

⑥高学年における文字指導

  • 文字はあくまでも音声を補助するものと位置づけ、発音と綴りの関係に傾倒しすぎない
  • 文字が正確でなければ話せないという児童が出ることのないように注意
  • ピクチャーカードにも4線を示す
  • 日本語のローマ字表記と英語のアルファベット表記の違いが、音の構成や発音と表記の対応関係の違いであることなどに触れつつ指導

⑦ICTやデジタル教材の活用

  • デジタル教材や電子黒板、インターネット等、テレビ会議システムなどの活動
  • ICTを用いた指導方法について映像等を用いた指導事例の作成や研修教材・研修マニュアルを作成・普及
  • ICT環境の整備状況を踏まえながら、効果検証

⑧短時間学習への対応

  • ICT等も活用しながら10~15分程度の短い時間を単位として繰り返し教科指導を行う短時間学習を含めた柔軟なカリキュラムと「カリキュラム・マネジメント」
  • 短時間学習と45分授業を関連させる
  • PPP(Presentation, Practice, Production)の一部が抜けてしまわないように

⑨体制の整備

  • 教材開発をはじめとする教員養成、採用、研修、中・高学年それぞれの課題に応じた指導体制の整備等の条件整備
  • ICTの活用を推進するためのハードウェアの充実促進
  • 各学校で中心となって授業を担当している教員に対して、校内研修

上記を踏まえた、各学年の年間指導計画例素案がこちらとなります。

各学年の年間指導計画例素案(PDFデータ)

筆者が中学生のときに習ったような表現がいくつもあり、今後の小学生の英語力に注目……というか、いよいよ大人として恥ずかしくない程度に英語を学んでおかなくてはと危機感をもつ方も多いかもしれません。

■児童用冊子はどんな風になる?

1月30日の有識者会議では、児童用冊子のサンプルたたき台も公開されました。すべての学年において、児童が誌面に実際にかきこんだり、会話・歌・チャンツ・ゲームなどを通して表現に親しんだりと、各ユニットで工夫が凝らされています。

▼「I like blue.」(3年生)
言語や文化によって見方や考え方に違いがあることに気付く
色の言い方や好きかどうかを尋ねたり答えたりする

(児童用冊子のサンプルたたき台より)

 
▼「Alphabet」(4年生)
身の回りにアルファベットの文字で表されているものがあることに気付く
活字体(小文字)と読み方に慣れ親しむ
(児童用冊子のサンプルたたき台より)

 
▼「I want to go to Italy.」(5年生)
できることやできないことを尋ねたり答えたり,説明したりすることができる
活字体の文字とその音が分かる
音声で慣れ親しんだ簡単な語句や基本的な表現で書かれたものの意味が分かり、相手に伝えるなどの目的をもって簡単な語句を書き写すことができる
(児童用冊子のサンプルたたき台より)

 
▼「Junior high school life」(6年生)
中学校生活への期待や目標などについて自分の考えなどを伝え合うことができる
これまでに学習した簡単な語句や基本的な表現で書かれたものの意味が分かる
例文を参考にスピーチの原稿を作成できる
(児童用冊子のサンプルたたき台より)

 
教師用指導書サンプル(構成案)たたき台を見ると、各ユニットのゴールや、扱う表現例・語彙例・発話例などが示され、映像やゲームへの誘導などもあり、わかりやすく丁寧な指導書に見えます。ただし、それなりに英文の例示が多いため、一度も外国語の授業をやったことのない先生、英語を苦手とする先生にはまだハードルが高そうです。今後の研修内容やフォロー体制に注目していきたいところ。

したがって、次回は外国語の指導員育成について触れたいと思います。
お楽しみに。

参照資料・サイト

  1. 答申:PDFデータ
  2. 答申要約:PDFデータ
  3. 小学校の新たな外国語教育における補助教材の検証及び新教材の開発に関する検討委員会(第2回)資料2-1
  4. 日経新聞「英語教育「過去形」小6で 小3~4は読み聞かせ 文科省が指導計画素案」
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