2020年、次期学習指導要領~外国語その3:不安高まる指導教員の整備

2020年、次期学習指導要領~外国語その3:不安高まる指導教員の整備

2016年12月21日に中央教育審議会によって出された「幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について(答申)」を数回に分けて読みとっていくシリーズ。2月14日に出された学習指導要領改訂案も踏まえながらご紹介していきます。今回のテーマも前回に引き続き、外国語についてです。

小学校高学年での外国語教科化などといった大変革に向けて、指導教員の確保や育成をどうするかは最重要項目。どのような施策がなされるのかみていきましょう。

■不安浮きぼり、教員の実態

先日、京都府内の公立中学校の英語科教員74人のうち、TOEICで730点以上(英検準1級相当)をとれたのはたったの4人、2回目受験での合格者も16人のみで、最低点は280点だったというニュースがありました。

「中学英語教員、TOEIC「合格」わずか 疑問も」(毎日新聞)

英語を専門としている中学校教員ですらこのような状況ですから、まだ指導が始まったばかりの小学校では教科力に不安のある教員が多いのは容易に想像できます。

全国の現役小学校教員206人を対象に行った調査によると、実際に自身の英語力について、「まったく自信がない」「どちらかと言えば自信がない」と答えた小学校教員が6割以上いるとのこと。「英語が苦手な教員でも授業運営ができる教材の開発」や「ALTの増員」「教員の研修制度の充実」が求められていることがわかりました。

「6割の小学校教員が英語力に自信ない 苦手でも活用できる教材求める」(教育新聞:購読者限定記事より)

■あと3年で求められる体制整備

新学習指導要領が小学校で全面実施されるのは2020年度からですから、あと3年で体制を整備していく必要があります。残されている時間は少ない。そこで今、各自治体で急ピッチでさまざまな取り組みが進められています。

①教員研修の改善・充実

  • 各地域の「英語教育推進リーダー」等が中心となって研修を実施
    (小・中・高等学校の連携、教育委員会と大学・外部専門機関との連携も含む)

②大学における教員養成の改善・充実

  • 教科としての外国語教育に関する指導法を教職課程に位置付ける
  • 次期学習指導要領を踏まえた課程認定がなされるまでの間は、各大学の小学校の教職課程において、小学校における外国語教育の教科化に対応したカリキュラムを開発・開設

③採用における改善・充実

  • 国際基準であるCEFRのB2レベル程度(英検準1級、TOEFLiBTスコア80点程度)以上の者を採用するような取り組み
  • 専科指導教員の採用選考では、英語力の基準を設定し、留学などの海外経験の評価・面接試験・模擬授業などによる実技試験等によってコミュニケーション能力などの専門性を考慮

④地域・学校における指導体制の改善・充実

  • 学級担任がALTや外国語が堪能な外部人材等とのチーム・ティーチングを活用しながら指導したり、専門性を有する中・高等学校の外国語担当教員や中・高等学校の英語免許を所持する小学校教員が専科指導を行ったりすることも検討
  • 中・高等学校の外国語担当教員が小学校教員を兼務して専科指導者として区域内の複数校を指導したり、地域のバランスなどに配慮しながら中学校英語免許を所持する現職の小学校教員が指導したりすることも検討
  • 小学校高学年と中学校での学びを円滑に接続するために、9年間を通じた教育課程を編成
  • 教員やALT等として、ネイティブ・スピーカーなど外国語が堪能な地域人材や外国語担当教員の退職者等、外部人材の受入れを推進

英語教育改革実施計画スケジュールは以下の通りです。

■人手不足は深刻、各自治体が独自に取り組み

たとえば静岡県では、県内の小学校教諭で中学校の英語免許を持つのは全体の5%にとどまるそうです。大学の教職課程に小学校の英語が加わるのは2019年度のため、新課程で免許を取った教員が現場に出るまで6年間も待つ必要があります。そこで、独自の小学校英語指導資格(LETS)を創設し、県内の全公立小学校に有資格者を1人以上配置するとのこと。

「小学英語指導に独自資格」(中日新聞)

仙台市でも、英語教育推進モデル校への外国語指導助手(ALT)配置を拡充するそうです。

「小学校ALT増員 仙台市が英語教科化に対応」(河北新報)

先生たちから不安の声が絶えないのは、きちんと教えてあげたいという責任感から生じていると思われます。体制づくりが少しずつ前進している自治体もちらほらとありますが、今後さらにすべての教員が安心して指導できるように整備は急がれます。

参照資料・サイト

  1. 答申:PDFデータ
  2. 答申要約:PDFデータ
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