2016年12月21日に中央教育審議会によって「幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について(答申)」、2017年2月14日小中学校の学習指導要領改訂案が出され、プログラミング教育について話題になっています。
前回の「2020年、次期学習指導要領~情報科:プログラミング教育のほかには?」でも、プログラミング教育については書きましたが、皆さんはどれくらい理解できたでしょうか。もう少しイメージを鮮明にするために、改めて整理してみたいと思います。
■「プログラミング的思考」って一体何?
2016年6月16日に出された「小学校段階におけるプログラミング教育の在り方について(議論の取りまとめ)」を読み込むと、プログラミング教育で育成する資質・能力がわかります。
段階 | 知識・技能 | 思考力・判断力・表現力 | 学びに向かう力・人間性 |
---|---|---|---|
小学校 | 身近な生活でコンピュータが活用されていることや、問題の解決には必要な手順があることに気付くこと。 | 発達の段階に即して、「プログラミング的思考」を育成すること。 | 発達の段階に即して、コンピュータの働きを、よりよい人生や社会づくりに生かそうとする態度を涵養すること。 |
中学校 | 社会におけるコンピュータの役割や影響を理解するとともに、簡単なプログラムを作成できるようにすること。 | ||
高等学校 | コンピュータの働きを科学的に理解するとともに、実際の問題解決にコンピュータを活用できるようにすること。 |
さまざまな文書に出てくる「プログラミング的思考」という言葉の定義もここで1回だけ説明されており、見逃してはならない部分です。
“自分が意図する一連の活動を実現するために、どのような動きの組合せが必要であり、一つ一つの動きに対応した記号を、どのように組み合わせたらいいのか、記号の組合せをどのように改善していけば、より意図した活動に近づくのか、といったことを論理的に考えていく力”
また、具体的に、プログラミング教育は各教育課程で次のような位置づけと考えられています。
ねらい | 教科・時数など | |
小学校 | ・身近な生活でコンピュータが活用されていることや、問題の解決には必要な手順があることに気付くこと ・各教科等で育まれる思考力を基盤としながら基礎的な「プログラミング的思考」を身に付けること ・コンピュータの働きを自分の生活に生かそうとする態度を身に付けること |
新教科にはせず、現行の各教科のなかに組み込む |
中学校 | 簡単なプログラムの作成や、コンピュータの働きの科学的な理解などを目指し、技術・家庭科や情報科において構造化された内容を体系的に学んでいくこと | 技術・家庭科の「情報に関する技術」において実施 |
高等学校 | 情報I(共通必修科目) 情報II(選択科目) |
とくに小学校段階では、「一人で黙々とコンピュータに向かっているだけで授業が終わったり、子供自身の生活や体験と切り離された抽象的な内容に終始したりすることがないよう、留意が必要」と明記されています。かといって「楽しいだけで終わっては学校教育としての学習成果に結びついたとは言えず、子供たちの感性や学習意欲に働きかけるためにも不十分」ともあり、授業のねらいをはっきりとさせて組み立てていくことが求められます。
■小学校での活動例として
上記の文書には、具体的な活動例も記載されており、一部を表にまとめてご紹介します。あらゆる教科のなかでプログラミング教育を実施していくことになりそうですので、担任の先生方は柔軟に対応していく必要がありそうです。
教科 | 内容 |
---|---|
総合的な学習の時間 | 自分の暮らしとプログラミングとの関係を考え、プログラミングを体験しながらその良さに気付く |
理科 | 電気の性質や働きを利用した道具があることをとらえる学習を行う際、プログラミングを体験しながら、エネルギーを効果的に利用するために、様々な電気製品にはプログラムが活用され条件に応じて動作していることに気付く |
算数 | 図の作成等において、プログラミングを体験しながら考え、プログラミング的思考と数学的な思考の関係やそれらの良さに気付く |
音楽 | ・創作用のICTツールを活用しながら、与えられた条件を基に、音の長さや音の高さの組合せなどを試行錯誤し、つくる過程を楽しみながら見通しを持ってまとまりのある音楽をつくる ・音長、音高、強弱、速度などの指示とプログラムの要素の共通性など、音を音楽へと構成することとプログラミング的思考の関係に気付く ・デジタルによる演奏と生の演奏から感じる違いなどに気付く |
図画工作 | 表現しているものを動かしてみることにより、新たな発想や構想を生み出したり、異なる視点からよさや美しさを感じ取ったりする |
特別活動 | 既存のクラブ活動にプログラミングを体験する学習を取り入れたり、子供の姿や学校・地域の実情等に応じて、プログラミングに関するクラブ活動を運営・実施したりする |
■未来の学びコンソーシアムが始動!
3月9日には、文部科学省、総務省、経済産業省が連携して「未来の学びコンソーシアム」が立ち上げられ、プログラミング教育についての取り組みを始めました。
未来の学びコンソーシアム
https://miraino-manabi.jp/
“未来の学びコンソーシアムは、文部科学省、総務省、経済産業省が連携し、次期学習指導要領における「プログラミング的思考」などを育むプログラミング教育の実施に向けて、学校関係者や教育関連やIT関連の企業・ベンチャー、産業界と連携し、多様かつ優れたプログラミング教材の開発や企業等の協力による体験的プログラミング活動の実施等、学校におけるプログラミング教育を普及・推進してまいります”
今後はさまざまな実践事例がこのサイトに掲載されていくものと思われます。定期的にチェックして、最新情報をつかんでいきたいですね。