教科書はどう変わる?――次期学習指導要領を見据えて

教科書はどう変わる?――次期学習指導要領を見据えて

2017年5月23日に、今後の教科書の改善点について、文科省より報告書が出されました。この報告書には、「次期学習指導要領の実施に向けた改善」と「デジタル教科書の導入の検討に関連した改善」のふたつが記されており、注目に値する内容です。今回はそのうち、「次期学習指導要領の実施に向けた改善」の主な内容を整理していきます。

■次期学習指導要領の実施に向けて

報告書には、まず、次期学習指導要領でまとめられている

①生きて働く「知識・技能」の習得
②未知の状況にも対応できる「思考力・判断力・表現力等」の育成
③学びを人生や社会に生かそうとする「学びに向かう力・人間性等」の涵養

の3つの柱を踏まえ、「何を学ぶか」「どのように学ぶか」「何ができるか」といったことを 意識した教科書内容であるべきと述べられています。

以下に、報告書の各項目について重要な検討事項と思われる点を挙げていきます。

1.教科共通の条件

(1)資質・能力の育成に向けた「主体的・対話的で深い学び」の視点に立った改善

・中教審答申で「形式的に対話型を取り入れた授業や特定の指導の型を目指した技術の改善にとどまるものではなく、子供たちそれぞれの興味や関心を基に、一人一人の個性に応じた多様で質の高い学びを引き出すことを意図するものであり、 さらに、それを通してどのような資質・能力を育むかという観点から、学習の在り方そのものの問い直しを目指すものである」と言及されているように、教科書の内容が型にはまった指導を誘導するようなものとならないよう留意する。

(2)「発展的な学習内容」の規定の見直し

・「発展的な学習内容」の図等が、「発展的な学習内容」とそれ以外とを区別している線(枠囲み)の上に重なっていたり、図等の一部分が少しでも枠囲みからはみ出たりしている箇所がある場合、検定に引っかかることがあるが、形式的な区別に拘泥しすぎることなく、教科書を使用する児童生徒の立場から見て「発展的な学習内容」とそれ以外の内容が実質的・客観的に区別できれば良いことを検定基準上において明確化する。

(3)「引用資料」に関する規定の見直し

・変化の激しい現代において、児童生徒が現状について正しく理解するために、可能な範囲で新しい統計資料を用いる。特に統計資料は児童生徒が興味や関心を持ち、自ら調べ主体的に学ぶことに資するよう、出典ができる限り記載されることが適切である。

2.教科固有の条件

(1)外国語科における既定の見直し

・中教審答申で、小学校の外国語教育は「教科化に伴い、小学校高学年において年間35単位時間増となる時数を確保するためには、教育課程全体の枠組みの状況を考慮すると、ICT等も活用しながら10~15分程度の短い時間を単位として繰り返し教科指導を行う短時間学習を含めた弾力的な授業時間の設定や時間割編成を、教育課程全体を見通しながら実現していく必要がある」とあり、弾力的な時間割編成の考え方も踏まえた教科書の在り方が求められている。
・小・中・高等学校で階的に実現する領域別(「聞くこと」「読むこと」「話すこと(やり取り)」「話すこと(発表)」「書くこと」の五領域)の目標と教科書の内容との関係の明示をする。
・語彙について、小学校で600~700語程度、中学校で1,600~1,800語程度、高等学校で1,800~2,500語程度と整理され、語彙や文法などは個別の知識・技能が実際のコミュニケーションにおいて活用されることを踏まえる。
・外国語の教科書の内容(本文のスクリプト)を音声化したものを発行者のサイトに掲載した場合については、 URL・QRコード等の積極的な記載を許容する。

(2)社会科、地理歴史科及び公民科における規定の見直し

・平成26年1月に検定基準の社会科、地理歴史科及び公民科の「固有の条件」が改正され、次のような項目が加えられている。

  1. 未確定な時事的事象について記述する場合に、特定の事柄を強調しすぎていたりすることはないこと
  2. 近現代の歴史的事象のうち、通説的な見解がない数字などの事項について記述する場合には、通説的な見解がないことが明示されているとともに、児童生徒が誤解しないようにすること
  3. 閣議決定その他の方法により示された政府の統一的見解や最高裁判所の判例が存在する場合には、それらに基づいた記述がされていること

・諸資料等を基にするなどして、これまで以上に課題を追究したり解決したりする学習活動が見込まれるところであり、今後は、個々の記述だけでなく、単元や題材、節、見開きページなど一定のまとまりも含め、教科書の記述において、児童生徒がより一層多面的・多角的に社会的事象を考察することができるよう配慮する。
・18歳への選挙権年齢の引下げも踏まえ、様々な課題について選択・判断が求められる有権者の育成を目指して主権者教育の充実を図る。

(3)理科における規定の見直し

・現行の検定基準では実験及び観察と学習内容の一体化について、以下のように書かれているが、どのような場合に一体のものとして扱われるかについて明らかではないので明確化する。

  1. 実験や観察の記述(通常、実験や観察の記述は、枠囲みの中に、実験や観察の目的・準備するもの・方法・結果・考察などが記述されている)が、その実験や観察に関する本文の前のページや後ろのページにあること
  2. 「~の実験をしてみよう」「~の観察をしてみよう」といった実験や観察の記述への案内文が、実験や観察に関する本文に直結している場所に配置されていること

(4)小学校におけるプログラミング教育に関連する規定の新設

・小学校段階について、理科における電気の性質や働きを利用した道具があることをとらえる学習、算数における多角形などの図の作成等を例示しながら、次期学習指導要領におけるプログラミング教育の位置付けを踏まえつつ、 学習内容を取り上げる。

(5)その他高等学校の教科固有の条件の見直し等

・高大接続システム改革会議の「最終報告」(平成28年3月31日)の「歴史系科目や生物など、高等学校教育における教材で扱われる用語が膨大になっていることが学習上の課題となっている科目」について、各教科の「見方・考え方」につながる主要な概念を中心に、用語の重点化を図る。
・「教科書に記述されている内容は、すべて教えるものである」 という教科書観について、「理解の程度に応じた指導の充実」や「学ぶ意欲の向上」、「自学自習」などに資するといった見方に転換すべきという提言を踏まえ、「発展的な学習内容」の充実、他教科と関連する記述等の充実を図るための規定の見直しや、図書の内容の厳選を求める規定の見直しを行う。

3.学習指導要領改訂を反映した教科書づくり

・教育目標や教育内容を再整理し、構造も変えていく。
・小学校における短時間学習を含めた弾力的な時間割の編成について「外国語教育や特定の学年にとどまらず、すべての教科等と学年全体を見通す

■形式のみにとらわれない検定を

以上、どの項目も時期学習指導要領の内容と照らし合わせたときに納得のいくものになっているように思います。しかし、私たちが「教科書検定」と聞いたときに思い出すのは、東京書籍の小学1年生用の道徳教科書の「パン屋」という表記を「和菓子屋」へ修正する検定結果が報じられたことではないでしょうか。

産経新聞を引用すると、次のように記されています。

「和菓子屋」への修正があったのは、東京書籍の1年用の道徳教科書に収録された教材「にちようびのさんぽみち」。学習指導要領の内容項目「伝統と文化の尊重、国や郷土を愛する態度」に合わせた教材だが、「我が国や郷土」の要素が不足しているとみられた。ただ、検定意見は教科書全体に付けられた。

これは、社会科などでは特定の記述の修正が求められるのに対し、道徳では教科書全体で内容項目とその要素を充足させることが求められるためで、特別なことだとされています。

道徳の現行学習指導要領は、学習内容を ①自分自身 ②人との関わり ③生命や自然、崇高なものとの関わり ④集団や社会との関わりに分類したうえで、「友情・信頼」などのキーワードと、教えるべき価値を「内容項目」として示しているため、複雑すぎるという理由も背景にあります。

だとしても、「パン屋」を「和菓子屋」には形式的で短絡的な修正のように見え、批判が殺到しました。

次期学習指導要領の内容が少しずつ固まり始めていますが、戦後最大の改訂で、プログラミング等の新たな項目が多く盛り込まれていること、「歴史総合」や「公共」など教科の組み替え・新設が予定されていることなどから、教科書検定も混迷をきたすのではないかと予測されます。今回の報告書にあるように、型にはまった検定にならぬよう、進めていってほしいものです。

■参照サイト
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/tosho/toushin/1386149.htm

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