米国名門大学は、なぜ「寮生活」を薦めるのか?

米国名門大学は、なぜ「寮生活」を薦めるのか?

『Times』が発行する高等教育情報誌『Times Higher Education』でのレポートをはじめとする大学ランキングで、トップ10に入るリベラルアーツ大学に共通していることがあることをご存知だろうか?

それは、1年次で必ずと言ってよいほど「寮生活」を必須としている点だ。必須にしていない大学でも、“strongly recomended (強く推奨する)”とし、学生の意志で寮生活を選択する仕組みになっている。結果的には、100%近くの新入生が寮生活を選ぶことになり、キャンパス内で生活をしているのだ。

「まず大学に来たら、大学のコミュニティの一員になることが優秀な学生の条件だ」

多くの大学のアドミッションオフィサーが口を揃えてこのように語る。質の高い研究成果を上げるためには、その環境にのめり込む必要があるという考えから出てくる言葉だ。

全てに当てはまるわけではないが、スタンフォード大学やハーバード大学などは、いずれも郊外にキャンパスを構えている。嫌が応にも、勉学や研究に没頭し、大学のコミュニティの一員にならざるを得ないわけだ。

ラーニングコモンズの出現

「大学のコミュニティ」というテーマを考えるにあたって、日本の大学に浸透し始めた「ラーニングコモンズ※1」を見てみよう。

※1:ラーニングコモンズとは、複数の学生が集まって、電子情報も印刷物も含めたさまざまな情報資源から得られる情報を用いて議論を進めていく学習スタイルを可能にする「場」を提供するもの(文部科学省のサイトより)。

従来の大学図書館は、本の貸し出しを中心に、自己学習スペースの提供を行ってきた。しかし、近年では、各大学の図書館内に、複数の学生が集まり、グループワークや議論を行いながら学ぶための「場」がつくられるようになった。

ラーニングコモンズは、米国の大学では当然のように設置され、日々、学生が学び合っている。しかし、日本のラーニングコモンズを見てみると、読書をしたり、パソコンに向かいリサーチをしたりする風景のほうが多いように見受けられる。

あくまでも宿題をこなしに来ているという様子で、目的が終わればあっさりと解散。アクティブラーニングとしての場というには何かが不足しているようにも思える。

スタディラウンジという米国大学の文化

一方、アメリカの寮に必ず設置されているのが「スタディラウンジ」と呼ばれるスペースだ。

まるでリビングルームのようなアットホームな空間。学生が自習をする場として、自分の部屋より広い空間を用意しようというのが大学側の当初の目的だったようだが、実際の使われ方としては、同じ寮に住む学生たちが集まり、コーヒーやココアを片手に会話をしたり、ゲームをしたりと、コミュニティの形成に一役買っている。いつでも誰でも使える、共有スペースといったところだ。

たとえば、筆者がコロンビア大学の学生にインタビューしたところ、同大学のスタディラウンジでは、専門分野の異なる学生たちが集まって、自分と他の学生の研究がお互いにどう関係しているのかを話し合ったり、他の仲間のリサーチの悩みを一緒に解決したりということが日常的に行われているという。

学生たちは「キャンパスの中で、研究室と同じくらい核となる場で、スタディラウンジでしか学べない貴重な学びがある」と語っていた。

一般的に「優秀な学生」と言えば、人気のゼミに入り、長い時間を研究室や図書館で過ごす学生というイメージが強い。しかし、今回のインタビューによれば、実際のところは、スタディラウンジで話題の中心になり、日常会話をファシリテートする学生こそ、本当に優秀だと見なされる。

アメリカのトップリベラルアーツ大学の多くが寮生活を必須にする裏には、仲間とともに学び合う日常をつくる人財育成の工夫なのかもしれない。

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