海外名門大学の合格基準「ブラウニーの秘伝レシピ」とは?

海外名門大学の合格基準「ブラウニーの秘伝レシピ」とは?

米国ボルチモアにある名門大学Johns Hopkins Universityを訪れたとき、同大学のアドミッションオフィサー(入試課職員)が語っていたことが印象に残っている。

「ACT(共通テスト)のスコアやGPA(学校の成績)でアプリケーション(入試出願資料)を見ると、どの生徒も大差はない。志願者が合格するかどうかの決め手は、その子のお母さんが “Secret Brownie’s Recipe(秘伝のブラウニーのレシピ)”を持っていたかどうかなんだ」

筆者が所属する企業のパートナー会社で、オンラインアプリケーションシステムを開発・提供している米Applications Online社からの提案を受け、Johns Hopkins Universityの教職員と、複数のミーティングを行ったのだが、その中から見えてきたのは、今日のアメリカの大学が抱える大学入試の課題だった。

そのアドミッションオフィサーによると、アメリカの家庭で育った子で、ブラウニーを作れない子はいないそうだ。しかし、ほとんどの家庭が、箱を開けて、卵と水を混ぜて、オーブンに入れるだけで美味しくできるパッケージを使うので、どのブラウニーも大して変わらない味がする。つまり、ほとんどが同じ味になるのである。そこに、家庭の味を出すために、ひと手間かけて、工夫を加えられるかどうか、母親による一手間があるかどうか、あるいは本人が工夫するかどうかが、本人自身の個性にも影響するというのだ。

前述のJohns Hopkins Universityのアドミッションオフィサーの言葉は、それと同じことが入試でも言えるということを意味している。「秘伝のレシピ」とは、まさにその人の創意工夫の領域を指し、そこにこそ人間の奥行きが表れるというわけだ。すでに長年にわたって多面的・総合的評価を行ってきたアメリカらしい、入試現場の生の声である。

この基準で「試験当日一発型」と言われるこれまでの日本の客観テスト(ペーパー入試)を当てはめてみるとどうだろうか。受験生が持っているであろう秘伝レシピを炙り出す仕組みになっているとは言えない。むしろ、決められた味、指定された味を出すという「正解探し」に傾いている。

このことからわかるのは、進行する大学入試改革の要は、「受験生の秘伝レシピを引き出すための構造改革」ということだろう。そこで次の2つのキーワードを覚えておいてもらいたい。

①ポートフォリオ評価
日々の創造の記録・気づき・発見をまとめ、評価対象にしようとするもの。客観テストの一面的な評価ではなく、受験生を多面的な力や変化率を評価する。日常を作品集にする考え方。

②パフォーマンス評価
身体や五感を活用して解答するプロセスを評価しようというもの。筆記による自由記述やプレゼンテーションなどの実技・実演も含まれている。

これらの評価方法が大学教育だけでなく、初等・中等教育にも浸透し始めている。しかし、どのような基準で評価するかはまだ手探りといった状況でもある。そこで、これらの評価方法を行うときには、ルーブリック(達成度を判断する段階的な基準)と呼ばれる評価基準の作成が、セットで求められる。そして、このような評価方法には、正解・不正解がなく白黒がつかないため、必ずと言って良いほど、平等性・公平性の問題が取り沙汰される。「評価者の主観で決まってしまうとは何事か?」という話だ。

しかし、大学入試で言えば、本来的には、大学入学とは、大学と受験者とが、相思相愛になれるかどうかで決まる。最終的には、双方の主観が一致したときに、合格という結果がつくに過ぎない。極論を言えば、入学後に必要な基礎勉強をさせる自信があるのであれば、入学時の基礎学力はほとんど求めず、意欲の高さだけを評価対象にする大学があっても良いはずだ。

高校も大学も学生も、個性があってしかるべきである。これらを十把一絡げに議論しようとすることにこそ、真の問題があるのではないだろうか? 当然ながら、個性を出すことで、大勢に受け入れられないというような場合もあるだろう。そうなったとしても、それは主観に対しての自己責任なのだ。少なくとも米国の教育は多様な価値観を受け入れる、主観を前提とするスタンスで行われているのである。

一人ひとりが“Secret Brownie’s Recipe(秘伝のブラウニーのレシピ)”を持てるか、持っているのであればきちんと周りに伝えられるか、その環境づくりこそが、これからの大学入試改革の要となるだろう。

Related Post

Other Articles by Jane Chung