[米国教育最前線レポート]最先端都市NYで人気のアートスクールの流儀とは?

[米国教育最前線レポート]最先端都市NYで人気のアートスクールの流儀とは?

This report is based on an interview with Michel Barry, Admission Officer of Pratt Institute on June 29, 2016.

40年以上マンハッタンに住んでいて思うことがある。東京の1/25の面積に、食にしても、エンタテイメントにしても、やはり、世界最高峰のものが詰まっている。そのぶん競争も激しく、このような環境で生き抜いているブランドには、それ相応の力がある。磨き続けなければ取って代わられてしまうという必然が、都市全体のレベルを高めているように思う。

アートも例外ではない。世界一の現代アート美術館MOMA、ブロードウェイミュージカル、マイケルジャクソンがデビューしたアポロシアターなど、世界的なアートの発信源となっている。実は、米国で初めて創立されたアート・デザインスクールも、ニューヨークにある。その名もPratt Institute(プラットインスティテュート、以降プラット)だ。

世界トップレベルのアートを生み出し続けるニューヨークで、プラットは、どのような教育を行っているのだろうか? 同大学のアドミッションオフィサーに、インタビューを行った。

■プラットの理念を教えてください。

「There is no Pratt way to do something. (プラットの流儀はない)」――この言葉は、プラットの思いを表現した一言です。理念の押し付けによって学生の長所を潰してしまう教育では、アートに向き合うクリエイティビティは育まれません。だからこそ、「流儀はない」という流儀があるのです。各学生は、様々な分野でアート感覚を磨き、自分だけのビジョンを持っています。個性を育み、最高レベルまで高めることが私たちの使命です。

■プラットが伝統的に行っている独自の教育は?

プラットは、異なる分野での経験が、必ずや自分の専門分野で役立つと考えています。たとえば、フィルム科の学生はドローイングやペインティングをしっかり学ぶことにより、自分のビジョンをより正確に伝えることができるようになります。専門性を高めるために、幅広い知識を身につけることが重要なのです。

自分の専攻科目だけに視野が狭まりがちな新入生が、広い視点でアートと向き合い、インフラの問題で高校時代には着手できなかった経験(3D・彫刻・鋳型・家具製作等)をする事により、色々な角度から自分の進路を再考するチャンスとサポートを与えられると思っています。

■基礎プログラムはすべての学生が対象ですか?

ほとんどのアメリカのアートスクールはファウンデーション(基礎)のプログラムを持っています。プラットも同様に、入学した最初の年はアートの知識を学ぶ「基礎プログラム」を中心に授業が行われます。しかし、プラットの特長は、ほとんどの学生がこの基礎プログラムを受講する中、ファッションや建築科の学生は、最初の日から並行して専門性の高い授業に挑戦するということです。

■入学者の選考にはどのような基準がありますか?

アドミッションオフィサーたちは、入学する人財の発掘を担当しています。特に、私たちプラットのアドミッションオフィサーは、様々な分野に豊富な知識を持ったメンバーが多いです。私たちは、入学希望の学生のポートフォリオ制作のアドバイスなども行い、学生とコンタクトを取るようにしているのです。

中には入学の1年前から相談してくる学生もいます。入試では、3つの審査があります。1つ目は高校からの内申書、2つ目はテストスコア(SAT・ACT・TOEFLなど)、3つ目はポートフォリオです。とくにこのポートフォリオ審査は一番時間をかける重要な仕事です。

多くの学生から「正しいポートフォリオとは何か?」と聞かれますが、そんなものはありません。ポートフォリオ制作を楽しんでいることが一番大切ですし、本人がエキサイトした感覚は、できあがったポートフォリオから伝わってしまうから面白いのです。

■海外からの学生の審査プロセスはどうなっていますか?

海外からの学生も、国内の学生と同じプロセスで評価しています。一点異なることとして、英語のコミュニケーションスキルを重視しているということです。たとえば、海外の学生のSAT、TOFEL等の平均スコアを審査する場合、その点数の内訳がどうなっているのかも確かめます。数学は高得点だけれども、英語の能力が低いとニューヨークでは生きていけません。

■入試制度や審査基準は変化していますか?

審査の大枠は変化していませんが、ポートフォリオ作品のレビューの仕方は確実に進化しています。現在は、様々なメディアを使ったプレゼンテーションがあり、デジタル技術の発展により、写真だけでなく動画による提出も多くなっています。作品によっては、多くの写真を見せるより動画の方が伝わりやすいこともあるのです。

■日本の学生にメッセージをお願いします。

日本からだけでなく、英語を母語としない学生は、必ず英語のコミュニケーション能力を鍛えてほしいと思います。いかに彼らが優れた感覚と技術を備えたアーティストであっても、それを上手く説明できなければ、アメリカでは成功できません。

学生たちにはいつも「英語は書けば書くほど上達する」と伝えていますが、自分のやりたい道を進むためには、努力を惜しんではいけません。

また、 以前は日本からの学生も多かったのですが、最近、アジア圏からは中国や韓国の学生がほとんどです。ぜひ、日本からも再び多くの学生にチャレンジしてほしいです。

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