米国大学に見る留学生獲得の課題と戦略[③世界各国の教育関係者の質問から紐解く留学の課題と解決策]

米国大学に見る留学生獲得の課題と戦略[③世界各国の教育関係者の質問から紐解く留学の課題と解決策]

International ACACカンファレンスレポート、最終回となるとなる今回はパネルディスカッションの最後に行われた質疑応答の様子から、教育現場にいる人たちが抱えている課題、意識している問題に迫り、私たちが何をすべきかを考察します。

今回のパネルディスカッションは、以下5名のモデレーターとパネリストによって行われています。

名前 所属
James Montoya The College Board
Karen Kirstof Smith College
Countney McAnuff Rutgers University
Rodney Morrison Stony Brook University
Kristina Wonf Davis University of California, San Diego

 

これまでの様子は以下を参照。

 

質疑応答:アメリカ留学に対する疑問と回答

最後に、会場からの質疑応答を行い、パネルディスカッションが締めくくられました。

 

Question:留学生のサポートは?

今までのお話は大変興味がありました。大学が学生たちの最終的な成功を考えていることはよくわかりました。もう少し具体的にどのような手助けを留学生にしているか、教えてもらえればと思います。

Countney:

私たちラトガーズ大学では、就職のためのプログラムを増やし、留学生を含むすべての学生たちの卒業後100%の就職率を目指しています。留学生の学業のサポートだけでなく、指導教官の職場で働いたり、その他にさまざまなインターンシップのプログラムを行っています。また、精神面のサポートも重要だと考えます。指導教官は、どこの誰に相談すればよいかなど、彼らの疑問や不安の扉を開ける手伝いをしています。

 

Question:留学生のいるクラス編成で意識すべきこと

留学生を含むクラスを構成するときに気にしていることを教えてもらえますか?

Countney:

私たちは留学生と国内の学生とのバランスを常に考えています。そして留学生や国内の学生にとってのクリティカル・マス(結果を出すための必要量)とはどのようなのものなのか、彼らがどのくらいの大きさのグループが心地良いと感じるか、あるいは阻害された気分になるかなど、人種や宗教、文化の影響も考える必要があると考えます。

余談ですが、去年の感謝際には17人の留学生を家に招き交流を図りました。そのときに彼らにクラスのことを尋ねたところ、たくさんの異なる意見が飛び交いました。それぞれの個人がいかに違う考えを持っているのか、改めて思い知らされたものです。

今日の大学はこのような多様性を求めていると感じています。社会的・経済的にもこのようなことの必要性を感じている人は少なくないと考えます。

 

Question:大学におけるアラブ・ムスリムとの接し方

私はドバイで留学生のサポートをしています。先日、1人のアラブ系の学生が「本当にアラブ人のアメリカへの留学は安全なのか?」と聞いてきてきました。彼は自分がイスラム教徒であることで迫害を受けるのではないかと心配していたのです。

Karen:

私たちはキャンパスで何が起きるかは予測できませんが、皆さんが私と同じようなメディアの情報を受けているとしたら、恐怖を感じてもおかしくない内容が飛び交っています。

ここで注意しなければいけないのは「それは確率の問題ですから、ほとんど安全です!」と一言で簡単に片付けてはいけないということです。アラブやムスリムの生徒は、もしかするとそのコミュニティではあまり歓迎されないかもしれませんが、これからの社会や世界全体の流れを考えれば彼らは必要な存在であると考えます。それはお互いを理解するためには必要なことであり、必ず両方にメリットはあると思っています。

 

Question:ICT~オンライン教育のこれから

近年、教育自体が個別的な要素を多く含んできていると思っていますが、オンラインでの授業はこれからどのように変化していくのでしょうか?

James:

ちょっと前にオンライン教育の記事を読みましたが、ここ数年で大きく伸びて来ていると書いてありました。

Rodney:

いろいろな情報へのアクセスを学生に提供するという点では、利用価値があると思いますが、これから考えなければいけない課題も多くあると考えます。

Countney:

各大学によって状況は変わってくると思いますが、アメリカ政府や各教育省庁はオンライン授業の設置を推し進めています。これからそのための援助が増えると思います。しかし、大事なことはどのような結果を導き出せるかという点です。ラトガーズ大学ではハイブリット・コースと呼ばれる伝統的な授業とオンラインを併用したクラスを行っていますが、オンラインだけのクラスはありません。

Rodney:

私たちの大学の電気関係のエンジニアクラスで、オンラインの授業を始めたところ、教育庁から視察に来た職員から、「モニタの向こう側に本人がいると、どうやって証明するのですか?」という質問を受けました。確かに、授業を聞いていないでテレビを見ているかもしれません。そのためにオンラインの授業中に20~30の質問をして確かめる作業をしています。

James:

大変重要な問題だと思います。今の学生はTechnology Native(最新技術が当たり前の世代)と呼ばれるほど、コンピュータや機械から離れることはできません。これから5年、10年先にどのように変化していくか、大変興味があるところです。

 

Question:アメリカ国内で起きている事故と安全性

私はインドの留学生をサポートしているカウンセラーですが、近年、アメリカの学校で、大量殺人や各地の警官による迫害やその対立が頻繁に起こっていると感じています。そのことについて大学ではどのような対処を行っているのでしょうか?

Rodney:

オバマ大統領のダラスでの演説にもありましたが、大変、残念な事件だと考えています。皆さんが考えられているのは、本当に学生の安全を保障できるかということだと思います。ここに集まったパネリストの大学のほとんどが安全性を第一に考えて、学校内の守りを固め、できる限りの対策は取っていると考えます。

しかし、Virginia Techのような悲劇はどこにでも起きる可能性は否定できません。また、その州によって銃刀法の違いがあるのも大きな問題点だと言えます。しかしアメリカだけに限らず他の国でも同じような状況になってきているのは、皆さんご存知だと思います。

 

Question:リベラルアーツを目指す留学生は必要なのか?

今までのお話を聞いていると、コンピュータサイエンスもリベラルアーツと認識されたり、医療関係やビジネススクールの増設など、専門性が高いエンジニア系の受け入れの話がほとんどでした。

しかし私が担当しているのはリベラルアーツへの入学を望む留学生がほとんどなので、エンジニア系の生徒に援助が増えるとリベラルアーツ系の留学生に影響が出るのではないかと心配しています。皆さんの大学ではリベラルアーツの学部へ進む留学生は求めていないのでしょうか?

Countney:

そんなことはありません。私たちの大学ではリベラルアーツへ進む学生も必要だと考えています。ただ、留学生の大半がエンジニアを目指す学生であるのは事実です。

しかし、その理系と文系のバランスはいつも話されている議題です。たとえばエンジニアを目指す400人の生徒がある1つの地域から応募してきた場合、すべてを受け入れることは不可能です。ですから私たちは多様性やクラスの中のバランスを考えて留学生を選ぶようにしています。

James:

私たちは様々な国をめぐり留学候補生と会話してきましたが、アメリカの大学はリベラルアーツを目指す学生を喜んで受け入れたいと思ってきました。ただ、先ほどもありましたが、今はエンジニアを目指す留学生が多い状況です。私たちは、今後、エンジニア志望の留学生と同じようにリベラルアーツ志望系の留学生にも来てもらいたいと考えています。

今日は皆さんにお集まりいただき大変嬉しく思っています。また、パネリストの皆さんにも感謝します。

現在、高等教育の存在はとても重要なものとなってきています。冒頭(前編)でも話したように、教育はNew Global Diplomacy(新しい地球規模の外交)となると確信しています。

皆さんの力をお借りして、それを推し進めていきたいと考えています。本当にありがとうございました。

最終日は外の会場でランチパーティが行われた。世界各地から集まった教育関係者が交流する。
最終日は外の会場でランチパーティが行われた。世界各地から集まった教育関係者が交流する。

グローバル化と留学、大学が今直面する現実。その先へ

以上、3回にわたりInternational ACAC Conferenceで行われたパネルディスカッション「What International Counselors Need to Know about Trend in American Higher Education」の模様をお届けしました。この規模での教育関係者向けのカンファレンス自体が日本では珍しい上に、留学をテーマに扱う内容は非常に希少価値の高い内容だったのではないでしょうか。ここ数年、日本でも少子化への対策の1つとして産学官が協力して、留学生受け入れについて取り組んでいますが、まだまだ課題が多いのも事実です。

アメリカの大学の先行事例を知ることは、これから先の日本の大学および教育環境を形成していく上で非常に大切だと筆者は感じます。これからもアメリカの動向をお届けしてまいりますのでお楽しみに。

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