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相互関係を意識する~ハザード分析システムから考える

2016年11月16~18日の3日間、パシフィコ横浜にて日本最大級の組込みシステムの展示会・カンファレンス「Embedded Technology 2016」が開催された。今回で30回目を迎えたこのカンファレンスは、国内はもちろん、国外からも多くの企業・組織が参加する「組込みシステム」に特化した展示会・カンファレンスだ。

目に見えない裏側にある組込みシステム

最近はとくにインターネットの発達により、この組込みシステムが担う役割の重要性が高まり、それととともに組込みシステムに関する研究・取り組み、また、それらを活用したさまざまなサービスやプロダクトが登場している。たとえば、EducationTomorrowでよく取り上げているスマートフォン、あの機械の裏側にもさまざまな組込みシステムが含まれている。

他にも、たとえば、社会インフラの裏側だったり、本メディアの主題でもある教育分野にも組込みシステムの存在がある。

教育の分野にも組込みシステム、IoTが浸透し始めている。
毎年自然災害に悩まされる日本では、その対策として組込みシステムの役割が大きくなっているそうだ。

STAMP/STPA思考から考える教育論

今回は、Embedded Technology 2016の会場で、筆者が出会った「STAMP/STPA」という手法から、相互関係と教育について考察してみる。

STAMP(System Theoretic Accident Model and Processes)とは、マサチューセッツ工科大学のNancy Leveson教授が提唱するが新しい事故モデル理論である。そしてSTPA(System Theoretic Process Analysis)は、STAMPをもとに開発されたハザード(危険)要因を考えるためのアプローチを指す。

これまで、多くの機械の開発および操作・運用に関して、事故防止のための取り組みや対策が考えられてきた。その多くは、ハードウェアに要因があると仮定し、事故要因は機械そのものの故障や、機械の操作によるものと考えられ、分析が進んできた。

一方、STAMPの場合、事故要因は構成要素間の相互作用から創発的に発生するものと仮定し、1つの要因ではなく、複数の要因間から想定外の事故が起こる可能性が高まるとしている。そして、それらを分析する手法としてSTPAがある。背景には、機械の高機能化に伴う複雑化が挙げられ、Embedded Technologyの主題でもある組込み機器の進化がある。

また、IoT(Internet of Things)の普及に見られるように、コンピューターで制御されたシステムが、日常生活のあらゆる場面において密接に関与するようになってきたからこそ、事故防止のためにも人と人、人とシステム、システムとシステム、さらにはその関係の先に生まれる状況、それらすべての相互関係を分析する必要がある時代になってきたのだ。

相互関係という意識を持つ

この「相互関係」を教育の世界で考えてみよう。最近はAO入試のように、学生を教科書で教える知識やそれに紐付く学術試験だけで判断するのではなく、実体験から得られた経験であったり、学生自身が持っている個性を評価する動きが強くなっている。また、学生側にとっても、大学で何を学ぶのか、入学する前から検討するようになった。結果として、従来の入試のような画一的な試験だけではなく、大学および学生どちらにとっても最適なマッチングをするための施策が増えている。すなわち、これもまた、学生の立場、大学の立場、双方の立場をもとにした相互関係を意識した試験ではないだろうか。

これからの時代、インターネットやさまざまな機械がさらに進化することで、人間はもちろん、機械、システム、さらにそれらが絡まって生み出される環境までもが複雑に関係し合う社会になる。こうした未来を予測したときに、相互関係を意識した教育とは何か、1つの指針が見えてくるだろう。

また、大学という場を考えたとき、入学時に学生自身が持っていた興味は在学時に変化するかもしれない。場合によっては、AO入試で学生がアピールしたもの、あるいは教師が評価したものとまったく異なってしまう可能性もある。これらもまた、大学という場と学生・教師、全員の相互関係から生み出される可能性があるものだ。

まだまだ日本の大学は入試に対するウェイトが高いと感じる。しかし、在学期間、さらには卒業後までのすべてに対して、相互関係の意識を持つ人財こそ、これからの時代に必要となると筆者は考えている。

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