「高大接続システム改革」という言葉は、一般的にはあまり浸透していない。しかし、教育関係者なら知らない人はいない超重要フレーズだ。何ら当たり障りのないこの言葉の中には、日本の教育を大きく左右する一大構想が含まれている。
「国づくりは人づくり」。教育が変われば国の行く末も変わる。決して大げさではなく、日本の人材育成のカタチが、この改革にかかっていると言っても過言ではない。
平成28年3月31日に文科省から発表された最終報告は、70ページ超の大ボリューム。全文を読めば全容は分かるものの、そんな暇はないという人のために、簡単に要約した上で、この計画が抱えている根本的な課題を考えよう。
ザックリ解説!「高大接続システム改革」とは?
誤解を恐れず、構想の全文を削ぎ落として、要点のみを抜き出すとこうだ。
【前提】
- グローバル化の進展等、世界は急速に変化し、先が見えない時代が到来した。
- 従来型の教育で知識を詰め込まれただけの人材は、新しい時代を生き抜くことができない。
- この事態を打開するため、高校の教育、大学の教育、そして、接合点となる大学入試を改革する。
【施策】
- すべての教育現場を、受動的な学びではなく、アクティブラーニング=能動的な学びの場に変える。
- 知識の獲得のみならず、思考力・判断力・表現力等、多様な力を育むための教育を行う。
- 大学入試は、多様に育まれた力を面接やポートフォリオ等によって総合的に評価するものに変える。
これによって、高校の教育、大学の教育、大学入試は接続し、三位一体の改革は成され、新しい時代に対応できる人材を育成できる教育システムが確立されるわけだ。
はたして、一大改革は実現可能なのか?
問題は、これをどのようにして具体化・現実化するかだ。本改革の主旨に異論を挟む人はほとんどいないが、どう実現するかのプロセスがほとんど示されていないために「机上の空論だ」「不可能だ」「遅らせるべきだ」といった意見が噴出しているのが現状だ。
しかし、世界の変化は待ってはくれない。今求められているのは、革新的でありながら、現実的で具体的な解決策だ。それを見出し、実行するために、まず必要なのは、蛸壺型の管理システムから脱却し、産学官の垣根を越えたステークホルダーの協力体制ではないかと筆者は考えている。
現状では、大学は大学の、高校は高校の、企業は企業の言い分を、それぞれが抱えて持っているに過ぎない。もはや、きれいごとでは済まされない段階に来ている今、お互いが日本の将来のため、ぶつかり合う覚悟が必要だ。
このまま、なし崩し的に、何の衝突もなく進んでいけば、おそらく、日本の教育制度はガラパゴス化の一途をたどる。教育は「国家100年の計」というが、これでは「100年の計画倒れ」になりかねない。
その事態を防ぐためにも、一歩先を行く諸外国のモデルを参考にするべき時機が来ている。