スマホの使いすぎが生活を壊す?!その先の未来

スマホの使いすぎが生活を壊す?!その先の未来

生活に欠かせないものとなっているスマートフォン。大人だけでなく子どもも、通学中の電車で、友だちとの連絡や遊びで、就寝前のベッドで……どこへでも気軽に持ち運べるからこそ、手放せず依存傾向に陥っていないでしょうか。

子どもたちのスマホ利用と睡眠時間

平成26年11月に文科省が行った「睡眠を中心とした生活習慣と子供の自立等との関係性に関する調査」は、睡眠を中心とした生活習慣と自立や心身の不調等との関係性について明らかにするために、全国の小・中・高校生2万人を対象として行われたものです。

その結果を見てみると、スマートフォンを使用する時間が長いほど就寝時刻が遅くなること、寝る直前まで各種の情報機器に接触する頻度が高いほど起きるのがつらいと感じる子どもが多いことがわかりました。また、同調査内には就寝時刻が遅いほど、自己肯定感も低いという相関関係が報告されています。以下3つのグラフは、それぞれ下表内の左右の問または条件を掛け合わせた場合の結果です。

携帯電話やスマートフォンで通話やメール、インターネットをする。 次の日に学校がある日は、ふだん何時ごろに寝ますか。
携帯電話やスマートフォンで通話やメール、インターネットをする。 朝、ふとんから出るのがつらいと感じることはありますか。
次の日に学校がある日は、ふだん何時ごろに寝ますか。 自分のことが好きだ。

 

以下は中学生のグラフですが、小学生・高校生も似た傾向がみられました。

fig01

fig02

fig03

スマホの使いすぎで見られる症状

久里浜医療センター院長である樋口進先生の『ネット依存症』(PHP新書)などによると、睡眠不足のほかにも、スマートフォンの使いすぎによって次のような症状が出るようです。

身体面での症状

  • 視力低下
  • めまい
  • 肩こり
  • 吐き気
  • 倦怠感
  • 寝不足によるだるさ
  • 栄養障害
  • 骨粗鬆症
  • エコノミー症候群
  • 筋力低下

驚きなのが、栄養障害や骨粗鬆症なども考えられるようなのです。これらはなぜ引き起こされるかというと、たとえばスマートフォンのゲームに熱中してしまってきちんと食事をとらない、お菓子や炭水化物だけをつまんでいるなどといった、栄養バランスの偏った食生活をしているからのようです。

エコノミー症候群も似たような理由から起こっており、長時間同じ姿勢のままスマートフォンに熱中していたために血栓ができて、肺の動脈に詰まって呼吸困難になったり、全身の血液循環に支障をきたしたりしてしまうようです。スマホ依存ではありませんが、韓国ではPC経由のネット依存者がエコノミー症候群になって死亡した事故が実際に起こっています。

同じく、運動部をやめてネット依存になった引きこもりの子どもは、筋力・瞬発力・柔軟性・握力・持久力全てが平均値以下になったという調査報告も出ています。部屋にこもってスマートフォンコンテンツを楽しんでいる子も同じ結果になりかねません。

やはり、バランスのとれた食事、適度な運動、睡眠時間の確保は心がけたいものです。

精神面での症状

スマートフォンの使いすぎは精神面へも影響を与えるようです。

  • 感情がコントロールできなくなる
  • いつもイライラしている
  • 攻撃的になる
  • 無感情・無感動になる
  • スマートフォンがないとパニック状態になる
  • スマートフォンを利用していないときの意欲低下が著しい
  • 自己中心的な考えに傾く
  • 話がかみ合わない
  • 思考能力が低下する
  • 記憶力が低下する
  • 眠ろうとしても眠れない

これらのほとんどが、物事を考えたり、自分の行動をコントロールしたりする、脳の前頭前野という場所の血流量が下がり、働きが鈍くなっていることが原因と考えられています。見えないかたちでスマートフォンの過剰利用が脳を蝕んでいる可能性があるのです。

また、スマートフォンがないとパニックになったり、スマートフォンを利用していないときは生気がないような状態になったりするのは、薬物依存者やアルコール依存者などが起こす禁断症状と似たようなものだともいわれています。前回も取り上げましたが、子どもからスマートフォンを取り上げれば問題が解決されるのではなく、依存の根っこの原因(人間関係の悩み、いじめ、勉強がわからない…など)を明かして対処していかなければ、また別のかたちで問題が起こるというわけです。

社会生活への影響

スマートフォンの使いすぎは心身に変化をもたらすとともに、社会生活へも影響を与えていきます。子どもがスマートフォンを使うことを何よりも優先し、次のような現象が起こってきたら、一度時間をとってじっくりと話し合いましょう。

  • 成績の低下
  • 遅刻・欠席
  • 昼夜逆転の生活
  • 引きこもり
  • 人間関係悪化
  • 家庭内不和
  • 恋人離脱
  • 過剰な課金

問題を突き止めた先の解決法~MOOCやN高校なども糸口~

スマートフォンを使いすぎるそもそもの理由は現実にある問題から逃避したい気持ちからやってきています。ちょっとしたリフレッシュのほか、長時間利用でも調べ学習や課題提出など有意義なことに利用している場合には気にする必要はありませんが、明らかに社会生活に支障をきたしてきているようならば注意が必要です。

スマートフォンが悪いわけではなく、その背景に問題が潜んでいるのです。まずは根本原因を突き止め、もし友だちとの人間関係の悩み、いじめ等があるようだったら、教師・学校・保護者が連携をとっていく。子ども自身がスマートフォンを置いて、対人コミュニケーションの仕方を少しずつ身につけられるように支援しましょう。部活や塾など、居心地の良い場所探しを手伝ってあげるのがよいと思います。

それでも引きこもりなどが続くなら、よほど大きな心の傷を抱えているということです。成績不振などについても性急にならずに、むしろ方向転換して、子どもに合うスマートフォン教育コンテンツをがないか探す、MOOC(Massive Open Online Course)のようなオープンな教育環境で興味のあることをとことん追究させてみる、といった方法も考えられます。最近、日本ではカドカワによる単位制・通信制学校のN高校も登場しましたので、そちらへの進学も視野に入れるなど、新たな道を提案することもできます。

何度も書きますが、スマートフォンを長時間使っているから依存なのではなく、無目的にダラダラ触ってはまっていってしまうのが依存なのです。せっかく便利なツールですから、自律的にうまく使うことを考え,子どもに適した教育方法を模索していきましょう。

次回は、SNSが学習面にどう影響するかについて取り上げます。お楽しみに。

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