「分解」から生まれる「理解」~新しいテクノロジーを生むための環境づくり

「分解」から生まれる「理解」~新しいテクノロジーを生むための環境づくり

「ダイソン」の名前を聞いたことある方は多いだろう。サイクロン式掃除機を初めて開発・製造したイギリスの電化製品メーカである。ほかにもさまざまな製品を開発し、私たちの日常生活に提供している。

その創始者であるジェームス・ダイソンが2002年に設立したのが「ジェームス ダイソン財団」である。同氏が「21世紀が進む中、これからはますますエンジニアが必要となる」と考え、デザインとエンジニアリング分野の教育を支援することを目的に設立した財団である。

ここ日本でもさまざまな取り組みをしており、その1つが今回紹介する「ダイソン エンジニアリングボックス」だ。

ダイソン エンジニアリングボックス

「ダイソン エンジニアリングボックス」――これは、教育関係者向けのプログラムで、教師が無料で使える、デザインエンジニアリングを教室に持ち込むための貸出教材である。

対象となるのは、ダイソンのサイクロン掃除機DC48。製品のほか、ダイソンの開発ストーリーやエンジニアリング哲学などが紹介されたティーチャーズ ガイドが用意されており、教師はこのエンジニアリングボックスをもとに、生徒に対して、技術の説明を、分解・組立という実体験とともに教えることができる、実社会につながった教材だ。ここで強調したいのは、「ダイソン エンジニアリングボックス」は、ただ製品を分解できるだけではなく、教師と生徒を含めた関係までをサポートしている、いわば「教育の環境」を用意している点だ。

詳細な説明および申し込みはすべて専用Webページに用意されている。もし興味がある教育関係者がいたらぜひ申し込んでみてもらいたい。

ダイソン エンジニアリングボックス
http://www.jamesdysonfoundation.jp/resources/engineering-box/

engineering-box_jp-version

「分解」から生まれる「理解」、新しいテクノロジー

今紹介した「分解」という行為。

「分解」とは、1つに結合されているモノを要素や部分に分ける行為である。今紹介した「ダイソン エンジニアリングボックス」は、「分解」する行為を、実在する製品を使って行うものである。

そして、「分解」する行為から生まれる成果として「理解」がある。なぜなら、その1つに結合されているモノを要素や部分に分けることで、そのモノ自体の原理・本質を知ることにつながるからだ。

情報化社会の今、つい人は新しいモノ・コトを探すために、「未確認のモノ」「目新しいモノ」への意識が強くなる。また「目立ちたい」という意識から人と違ったモノ・コトに目が行きがちである。たしかに、突発的に新しいモノ・コトが生まれるとき、そういった偶発的な要素も大切だろう。

しかし、そういった感覚や意識にだけ頼っていては新しいモノ・コトは生まれない。とくにテクノロジーの分野では、感覚だけに頼り、意味もなく目立つだけでは進化ではなく退化につながる恐れすらある。

感覚以外の部分、たとえば事実として残っている情報であったり、歴史であったり。これまでに蓄積された知見を知り、自分自身の頭で理解することがが非常に重要になる。

今世の中には本当に優れたテクノロジーが多数存在している。ここで改めて実在するテクノロジーやそれを活用したプロダクトに目を向け、見なおし、理解し、未来につなげていく。新しいテクノロジーの誕生にはその観点がとても大切だ。加えて、その知見の伝道者となる人物、教える立場、学ぶ立場の人間も必要となる。そう、ダイソン エンジニアリングボックスが目指す世界のように。

新しい価値観、新しいテクノロジーが日々生まれている現代だからこそ、この意識を持ち実行できる教師・生徒、その環境が求められているはずである。

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