AIが突き付ける価値観の変化とサービスの本懐

AIが突き付ける価値観の変化とサービスの本懐

先日、筆者はAIに関する記事を書いた。

記事の最後に、技術進化が想像の域を越えた概念を生み出す可能性について考察した。今回は、想定内ではありながらも、気づかないうちに新しい時代になっている、AIの1つである「機械学習」がその要因となっているという話だ。

宿泊施設の料金体系はどうやって決まる?

皆さんはMagicPriceというサービスをご存知だろうか? これは、宿泊業者向けのサービスで宿泊施設の料金最適化を図ってくれるというもの。

たとえば日本の場合、お盆は多くの人が夏休みを取りハイシーズンとなる。さらに、祭などの催し物が行われればその時期、その地域や場所には多くの人が訪れる。そうなると、宿泊料金は当然跳ね上がる。また、たとえば、年末年始の直前、仕事をしている大人にとっても、勉学に励む子どもたちにとっても、11月末~12月というのはオフシーズンとなり、旅行する人口は大幅に減る。結果として宿泊料金は低くなる。

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こうした時期的要因に加えて、季節ごとの天候、はたまた、利用者の経済力だったり特別な行事を考えながら宿泊業者は自身の施設の宿泊料金を最適化し、稼働率を高め、利益の最大化を目指す。

従来の宿泊施設では、さまざまな要因を人間自身(宿泊施設の経営者・担当者)が調べ、まとめ、分析し、考え、答え(宿泊料金)を導き出していた。非常に手間のかかる、そして時間のかかる作業だった。MagicPriceはこうした一連の要因を、コンピュータやインターネットを活用しまとめ上げ、それらのデータとともに機械学習を活用して計算し、その施設にとって最適な、そして、利用者にとっても最適な宿泊料金を算出してくれるというものだ。

サービス業とは人にサービスを提供するもの

大変便利なサービスであり、今、旅行業界はもちろん、周辺関連業界からも注目集めている。

このように、一概にすべて機械的に管理することが正しいかどうかはわからないが、このサービスを活用することで今まで宿泊施設の経営者が頭を悩ませていた問題を解決できると想像する。それは利益の最大化だけではなく、人材の確保などもそうだ。それは、施設内の従業員の数の問題だったり、それに伴う労働環境の整備(とくに休日の設定)といった、周辺部分に関して、機械によって一元的に管理できれば、悩みの種は減るはずである。

するとどうなるか。経営者自身が悩みの種を減らせた分の時間で、自身のサービス、すなわち「宿泊施設の価値」の最大化に意識を注げることになる。結果として、ユーザに対する価値、「おもてなし」の向上につながる。

筆者は宿泊業界の人間ではないが、おそらくこれまで宿泊施設を経営していた立場にとって、「宿泊料金」「稼働率」というのは非常に重要な問題だったと推測する。もちろん、これからも。その悩みを減らし、「おもてなし」に注力できること、これはサービス業の本懐ではないだろうか。今回紹介したMagicPriceは、テクノロジーによってそれをサポートしてくれるものなのである。

思考停止と価値観の多様化。感情を持たないテクノロジーとの付き合い方

今回取り上げたのはあくまで1つの例である。どのような形であれ、サービス業、つまり人に対するおもてなしは、今後も人が積極的に関わるべきことに異論はない。しかし、筆者がここで伝えたいのは、そのとき、テクノロジーを活用できるかどうか、テクノロジーを受け入れられるかどうかが大切な時代になってきたということだ。

たしかに、コンピュータやインターネットといったテクノロジーを使うと、

  • 一元的、機械的だから、人間が持つ温かみや多様性が生まれないのではないか
  • 人に対するおもてなしはすべて人が関わるべき
  • 人の繊細さはテクノロジーでは実現できない

といったような、人間主義的な考えを主張するケースを耳にすることがある。とくに、伝統文化のように属人性が強いものの場合、こうした考えが強くなる。

また、仮にテクノロジーを受け入れられたとして、

  • 機械が効率化してくれるから人間は楽できる。だから楽しよう

こういった考え方が生まれるかもしれない。いずれも1つの価値観であり否定はしない。しかし、サービスの観点で考えたとき、自分の価値観にこだわったり、テクノロジーを否定したり、あるいはテクノロジーにあぐらをかくのではなく、テクノロジーをきちんと活用しさらなる価値につなげていく、そういった思考が大切ではないだろうか。また、それができた人間こそが次の時代を生き残れるはずだ。MagicPriceの例で言えば、「宿泊料金の最適化」は人間より機械のほうが優れているのであれば、そこを受け入れて、その次の部分を人間が担えば良いのである。

話を戻して、前回のAIに関する記事では、論理飛躍としてAIが人間をリードする立場になったらという投げかけを行った。それについては継続して考察してみたい。

一方で、今回紹介したMagicPriceのようなアシスタントとしてのAI、テクノロジーによるサポートというのは、これからますます増えてくるはずだ。そうなったとき、「これまでの経験」にこだわり、思考停止をしてしまうのか、あるいは、それを受け入れて「さらなる価値」につなげられるのか、それを決めるのはサービスを提供し、そして享受する側である人間にほかならない。

この先、AIに限らず、テクノロジーがどんどん進化していく中、テクノロジーとどう付き合うべきか、人間社会全体できちんと考えていくべきである。テクノロジーの進化のスピードは自分たちが想像する以上に早く、それ以上のスピードで、人は無意識のうちにそのテクノロジーに慣れてしまうのだから。

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