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スマートフォン、とくにチャットは脳へ悪影響を及ぼす? 知っておきたい、学習効果との関係

中高生のLINE使用はいまや当たり前のものとなっています。

1年前の調査でも古さを感じてしまうくらい、ネット社会では時代を捉えるスピード感が早まっているので2016年の調査を提示できないのは残念ですが、2015年のMMD研究所の調査によると、10代のLINE使用率は96.9%とのこと。さまざまな調査から、モバイル端末を所有している10代(小学生は除く)は70~80%はいるとわかっていますから、LINEがいかにコミュニケーションツールとして重要な役割を果たしているかは明白です。

しかし、LINE外しなどといったトラブル例もよくニュースになっているので、大人としては心配という面も多いでしょう。また、LINEばかりやっていて勉強に悪影響がないかという不安もあります。そこで、今回はスマートフォンやLINEの使用時間と脳への影響についてご紹介します。

スマートフォン、とくにLINE等のコミュニケーションアプリ使用で学習効果が消える!?

2016年8月2日に刊行された『2時間学習効果が消える!やってはいけない脳の習慣』(青春出版社)では、衝撃の事実が明かされています。こちらの監修は同研究所教授で「脳トレ」で一躍有名になられた川島隆太先生、著者は東北大学加齢医学研究所助教の横田晋務先生。

川島先生・横田先生らは、仙台市の小学生と中学生7万人に対して、スマートフォン利用と脳の関係について7年間調査を行ってきました。そこで明らかになったのは、スマートフォンの使用時間が増えると成績は下がるということなのです。しかも、算数・数学の成績の低下が顕著ということがわかりました。

単純にスマートフォンの使いすぎで勉強時間が減ったからなのではと思われる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、よく見てみるとそうでもなさそうなのです。

たとえば、算数・数学の勉強時間が2時間以上で、スマートフォン利用が4時間以上の正答率は55%なのに対し、勉強時間が30分未満でスマートフォンをまったく利用しないという子の正答率は60%です。つまり、スマートフォンを長時間使うと、2時間以上も勉強している子が、ほとんど勉強していない子より成績が悪くなっているのです。長時間の勉強にもかかわらず、スマートフォンの使用時間が長い子どもの脳から、せっかくやった学習内容が消えてなくなる……。怖いと思うのは筆者だけでしょうか。

LINE等のコミュニケーションアプリを使用している子の結果はさらに衝撃的です。

スマートフォン以上に、勉強時間の長さに関係なく、LINE等の使用時間が増えるほど成績が下がってしまっているのです。そして、やはり算数・数学の成績の落ち込みは顕著です。

学習効果が消える理由は?

長時間のスマートフォンやLINE等の使用で学習効果が消えるのは、脳の前頭前野の活動が低下して引き起こされている可能性が高いです。これは、2000年代前半に話題になった、ゲーム脳やメール脳と同じ状態だと考えられます。

前頭前野というのは、物事を考えたり、自分の行動をコントロールしたりする場所です。この場所の血流量が下がり、働きが鈍くなると、前回の「スマホの使いすぎが生活をこわす。その先の未来」でお伝えしたように、感情のコントロールができなくなって対人関係がうまくいかなくなったり、鬱になったりしてしまうのです。

一見、LINEなどでメッセージを送るときは、言葉を打つから脳は活動しているのではないかと思われるでしょうが、実は予測変換で出てくる言葉を選択するだけ、スタンプを選ぶだけ、とあまり高度なことを行っていないので、脳の働きは良くはないようです。

脳の機能低下を引き起こさないために

今までの内容を読んで、スマホも、そしてLINEなども使わないほうがいいのではと思われる方も多いでしょうが、それは現実問題として難しいですね。では、どれくらいの使用だったら学習に支障がないのでしょうか。

詳細は上述の書籍を手に取っていただきたいのですが、平日のスマートフォン使用が1時間未満であればテストの平均点は高いまま維持できるのではと考えられます。調べ学習的に使用することもあると思いますので、有効に使うことができればむしろプラスになるとも考えられますね。

ただ、残念なことに、LINEなどは使えば使うほど学習によくない効果が出てしまうのでなるべく使わないほうがよいのかもしれません。少し考えれば容易に想像できますが、LINEなどが脳の機能低下を招く原因は、次のようなものが考えられます。

とくにLINEの通知音は、電話のアラーム音や、視覚的な光通知よりも、圧倒的に気になることが多く、テストの点数が下がるという実験結果が出ています。

算数や数学の点数が低くなってしまうのは、ある程度の時間机に向かって集中しないと解答できないのに、その時間を確保できていないからだと思われます。そして、算数や数学の成績が自己肯定感の高さも左右すると言われていますので、まずは集中できる環境を作ることが大切。

子ども同士で使用時間を決めさせたり、テスト期間中は使用しないようにしたりと、ルールづくりをすすめましょう。

次回は、スマートフォン利用に対する自治体等の取り組みについてご紹介していきます。

お楽しみに。

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