サイトアイコン EducationTomorrow

動画学習の未来について考える~近未来教育フォーラム2017レポート

2017年11月16日、デジタルハリウッド大学・デジタルハリウッド大学大学院・デジタルハリウッド主催による、未来の教育を考えるイベント「近未来教育フォーラム2017」が開催された。今回で8回目となる同フォーラムは、「Augmented Human―人間拡張への序曲―」というコンセプトのもと、これからの教育、とくにICTや最新テクノロジーとの関連を扱うセッションが多数行われた。本メディアでも前回に引き続きフォーラムの模様をお届けする。

デジタルハリウッドのeラーニング・動画学習のこれまで

今回聴講したセッションは「デジタルハリウッド教材導入校の本音~教員・学生の評価から考える授業活性化の提案」。担当はデジタルハリウッド株式会社まなびメディア事業部の石川大樹氏(冒頭写真右)と細野康男氏(左)。

デジタルハリウッドでは2009年からeラーニング・動画活用による授業や学習コンテンツを提供してきており、動画教材の利用者は現在3,000名/年にまで増えているとのこと。

また同校の授業のほか、デジタルハリウッドが制作した動画教材を導入した学校・企業は2015年度までは6組織、2016年度に3組織追加、2017年度に7組織追加と年々その数が増えている。

さらに現在は動画+実際の授業(集合学習)を合わせたハイブリッド教育やアクティブラーニングへのシフトが進んでいるそうだ。

動画学習の現状と限界と可能性

こうした実績を積みながら、デジタルハリウッドではeラーニング・動画学習において1つの課題を見つけ出した。それは「動画の工夫」と「全員が受講すること」は必ずしも一致しないという点。どういうことかというと、たとえどんなにすばらしい動画を作ったとしても、学習する生徒(学習者)全員が受講しているとは限らない現状がある。

この点について細野氏は「”学習者個別の心情・状況を把握すること”が、eラーニング・動画学習の成果を上げるための最重要課題だ」と述べた。

eラーニング・動画学習の2017年時点でのベストアンサー

現在、ハイブリッドラーニングの次の展開として「マイクロラーニング」、さらにその先には「アダプティブラーニング」を目指しているそうだ。

内容を細分化・モバイル特化したマイクロラーニング

マイクロラーニングは、その名のとおり学習教材を小型化したものになり、短時間・細分化・モバイル特化といった点を強化し、コンテンツ制作を行うもの。現在、同校では3DCG/動画制作クリエイター向けにYouTubeチャンネルを開設したり、現状のWebデザイナー講座のリニューアルに取り組んでいる。

学習者一人ひとりに適した学びを提供するアダプティブラーニング(動画×AI)

さらにその先の学習スタイルとして目指しているのが「アダプティブラーニング」だ。アダプティブ(対応)と付いているように、学習者に対応した、個別対応学習の形を意味する。

対応させる技術としてAIを活用したり、学習者の興味を高めるためのゲーミフィケーションといった要素を含んだ形で学習教材が作られる。

アダプティブラーニングのポイントは、学習者の成長や心境の変化に合わせて、学習内容が修正、改善できる点。たとえば、入学時と中間でのカウンセリングの実施だったり、その過程での学習進捗度により、学習者個人のデータを蓄積し、その“個人”に最適の学習を提供することが、これからの学習のゴールになるというもの。

すでにデジタルハリウッドではアダプティブラーニングを取り入れた授業について検討しており、今後実際に取り入れていく予定とのこと。

デジタルハリウッドが考える2017年時点でのベストアンサー

最後に、同校が考える2017年時点でのベストアンサーが紹介された。

①学習者の状況・心情を踏まえた“導き”が必要
②短期間で習得できるマイクロラーニングは実施すべき
③アダプティブはAIではなく、人的で(①に基づく)

個人的に印象的だったのは、アダプティブの部分を機械(AI)だけに頼るのではなく、そこに人的なチカラを活用することで、より充実した、人間らしい教育ができると考察している点。まさにこれは、今さまざまなメディアで取り沙汰されている「AIに人間の仕事が奪われるのではないか?」に対する1つの答えになるのではないだろうか。動画学習の普及とともに集合学習の意味や価値について再考する声が聞こえてくる中、人的にアダプティブを実現するために集合学習の価値がが今まで以上に高まっていくとも考えられる。

以上、簡単ではあるが近未来教育フォーラム2017から、eラーニング・動画学習に関するセッションの様子をお届けした。今回紹介された内容は、8年という長い実績を持つデジタルハリウッドならではの内容でもあり、さらに、その先の提案として「マイクロラーニング」や「アダプティブラーニング」が提示されたのが非常に興味深い。

とくに動画メディアに関しては、教育分野にかかわらずますます注目を集め、スマートフォンおよびインターネットインフラの進化が、その状況をさらに促進することが予想される。

学習という観点からも、これまではテキスト中心で行われていた授業が、動画を活用した授業に変化する、パラダイムシフトを迎えているのかもしれない。

(Visited 522 times, 1 visits today)
モバイルバージョンを終了