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2020年をイメージしよう!世界的イベントを楽しむための語学力とは?

この連載では「Welcome to 2020~今こそ知っておきたい、語学向上の道 」というテーマのもと、世界的イベントまであと3年と迫った日本人の中でも「大人」つまり学校での教育課程が一通り終わっている私たちがどのように語学学習と向き合っていくべきなのかを考察します。

第1回目は、2020年の東京オリンピックを迎える上での、語学習得の方向性を考えていきましょう。

ちなみに、全世界で最も話されている言語は中国語の約11億人。しかしそのほとんどは母国語話者となります。一方英語は、母国語としてはおよそ3億人しか話さないものの、非母国語話者をも入れると全世界で15億人です。そこに「時おり機会のあるときに、たどたどしく英語を扱う」というケースを含めると、さらに英語話者の人数は多くなります。やはり英語は、圧倒的に世界でのコミュニケーションの媒体になる言語と言えます。ですので、本連載でも、語学向上の「語学」を、「英語」に絞って考えていきます。

「未来の私たち」のための教育改革は、「今の私たち」を救ってくれない

2020年といえば、大きく2つの出来事が思い浮かびます。

1つは、教育改革。新しい教育指導要綱が施行される年です。

公立小学校で5年生から導入されている英語学習が、2020年からは3年生からと前倒しになるのを始めとして、小学校・中学校・高校とすべてにおいて、英語教育が変わります(詳細はETでのこちらの連載を参照ください)。

大学入試も大きく変わります。2020年を最後にセンター試験がなくなり、同2020年より「大学入学共通テスト(仮称)」が始まります。英語に関しては「聞く」「読む 」の2技能テストから、「話す」「書く」を取り入れた4技能に移行します。

が、これらはあくまでも小学校就学~10代の人々「=未来の大人」を対象にした教育変革であるということ。保護者や教育に関わる人々の英語力も向上することが求められるでしょう。ですが、2020年に向けて、「今の大人」の英語力に文部科学省が世話を焼いてくれているわけではありません。

2020年 オリンピックイヤー

そして2020年といえば、もちろん東京オリンピックの年です。

いったい、その時の東京はどうなるのでしょうか?

ロンドンオリンピックでは、開催時期の混雑を避けようと、逆に外国人旅行者が減ったというケースもあります。が、「年間2000万人の訪日外国人旅行者」という目標は2016年に達成され、2017年1~3月期の外国人旅行者は過去最高を記録しました。さらに政府は、「2020年に訪日外国人旅行者を4000万人にする」という目標を掲げています。それらを鑑み、現状の2倍近い外国人観光客が東京を訪れている風景が想像できます。

最も外国人観光略が多いエリアである銀座四丁目の交差点にたたずみながら、目に止まる外国人観光客の数を2倍にしたところを想像すると2020年をイメージしやすいかもしれません。きっと相当な多国籍感を感じるはずです。

ちなみに、2017年現在の訪日外国人観光客の国籍は、上位から韓国、中国、そのあと台湾、香港、米国、タイと、近場であるアジア圏が上位を占めています。また選手団の国籍を考えると、毎回大規模な選手団を送り込むのが米国・欧州諸国・中国・韓国・中南米あたりです。これらを鑑みた他言語対応はもちろん必要でしょうが、共通言語の1つとして英語対応で選手・観光客をサポートするのが現実的と筆者は考えています。

ボランティアの応募は2018年

さて、そんな世界的イベントがやってくる2020年を楽しむために、私たちはいったいどんな英語力・コミュニケーション能力を身につけておくべきなのでしょうか?

オリンピックに際して「ボランティアとして関わりたい」と思っている人は少なくありません。

大会ボランティアは2018年の夏頃に募集されると言われています。

ボランティアにも種類があり、競技運営や会場案内・大会関係者の輸送や警備などを行う「大会ボランティア」と、空港・駅・観光スポットなどで外国人観光客や日本の観光客に案内を行う「都市ボランティア」の2つがあります。それぞれ8万人、1万人ほどを募集するとのことです。このボランティア募集に際して英語選考基準はまだ決まっていません。

もちろん、英語不要のボランティア枠もあります。ですから、希望したボランティアができるか否かは、「2018年の今頃どんな英語力を示せるか?」にかかっているとも考えられます。

そんな中、大人を対象とした「新教育指導要綱」のような、いわばレールに則った強制的・義務的な英語学習の仕組みはありません。宿泊施設・交通機関・医療機関など、2020年に向けて確実に英語や他言語対応ができないと危機的である箇所を除いては、「誰かが英語学習の枠を用意してくれるわけではない」という状況ではないのです。

本気で、ボランティアをやりたい!と思ったならば、オリンピックに出場するアスリートと同様に、今から「主体的に」準備勉強をして、ボランティア募集に備える必要があるのです。

おもてなしのコミュニケーション講座

「公式ボランティアまでいかないが、英語コミュニケーションを楽しみたい!」という場合、あるいはボランティア応募をするにしても、1つ注目したいのが、東京都を始め、地方自治体が行う「外国人おもてなし語学ボランティア」育成講座です。

外国人おもてなし語学ボランティア
https://omotenashi-volunteer.com/

これは、大会競技中の公式ボランティアとは別に、自主的に街中で外国人観光客を助けるボランティアの育成を行うというもので、「外国人おもてなし語学ボランティア」を2019年度までに5万人育成することを掲げています。

この育成講座が指導するのは2つの内容です。

■語学講座(2時間×5回)
1つは、2時間×5回の語学講座。中学校で学習する程度の語彙・表現を用いた、初級者向けの講座です。

外国人と道案内等の簡単なやり取りができる程度の会話力を身に付けるため、テキストを活用し、受講者同士のロールプレイングを交えながら、定型的な表現を中心に学習します。(おもてなしボランティアHPより)

■おもてなし講座(3時間半1回完結)
もう1つが、3間半1回完結の「おもてなし講座」。

外国人とのコミュニケーションに関する基礎知識や、外国人に対する「おもてなし」の心を身につけるため、「おもてなし」や異文化コミュニケーションについて映像やグループワークを通して学習します。(おもてなしボランティアHPより)

外国人おもてなし語学ボランティア育成講座から見えてくること

この講座の概要から、2つのことがわかります。

1つは、

「都が主導する本講座は、英語力を上げてくれる要素は高くない。」

2時間の講座を5回受けただけで、たとえ英語を思い出し理解し直す、あるいはいくつかの英文を覚えることはできても、劇的に英語力が上がる時間量としては到底不足しています。講座ではあくまでも、英語の学び直しの糸口を提供してくれているに過ぎません。

もう1つは、

「講座を通して、コミュニケーション能力を高める方法を知ることができる。」

「英語力に関わらず、外国人観光客を助けよう」というマインドが芽生え、いくつかの具体的なコミュニケーション方法がわかる。そうすれば、世界的なイベントで英語を使ったコミュニケーションを楽しむことができるかもしれません。英語レベルによってはボディランゲージのようになるかもしれませんが、少なくとも国際交流の一端を味わうことができるでしょう。

ちなみに、上記の「おもてなし講座」の受講基準には、「英検2級以上・TOEIC500点以上相当、または英語による簡単な日常会話ができる方」とあります。が、証明書類の提出は不要なことから、やはり講座としての趣旨は、英語力UPというより、コミュニケーション方法の指導が中心なのです。

英語という語学力の向上はもちろん重要ですが、アイコンタクト・ジェスチャーといった非言語コミュニケーション能力の向上と、コミュニケーションをするにあたってのマインド醸成があれば、私たちが2020年という世界的なイベントを国際交流という観点から楽しむことは大いに可能であるように思えます。

まとめ

都の自主的なボランティアを育てる「外国人おもてなし語学ボランティア」育成講座などを通じて、英語力に関わらず、コミュニケーション能力を見直し高めることは非常に意義深い活動です。

というのも、この「おもてなし」というキーワードは、2020年のオリンピック誘致の際から一貫して打ち出されてきました。実際に東京オリンピック組織委員会が掲げる「ボランティアが果たす役割」にも「日本人の強みである「おもてなしの心」や「責任感」を活かして行動」という文言が謳われています。

こういった心持ちや振る舞いを自身に醸成することは、東京オリンピックの持つビジョンに準じ、一体感を持ちながら世界的イベントを楽しむという意味で非常に重要です。

その一方で繰り返しとなりますが、オリンピックを迎えるために「英語の学習をしよう!」と、誰かが力強く(強制的・制度的に)牽引してくれているわけではありません。そんな中、私たちはどのように語学を向上させていくのか?(あるいはいかないのか?)これらについては、今後連載を通して考察していきます。

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