2020年、次期学習指導要領~国語科はどう変わるか

2020年、次期学習指導要領~国語科はどう変わるか

2016年12月21日に中央教育審議会によって出された「幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について(答申)」を数回に分けて読みとっていくシリーズ。今回のテーマは国語についてです。

国語力が先決! 英語学習に食われる恐れはないか

2017年1月16日付の産経ニュースで、次のような記事が掲載されていました。

【主張】「次期指導要領 土台となるのは国語力だ」

英語教育の拡大によって本来培われるべき国語力が育たないことを危惧している内容で、そうだよね、国語力は大事だよねと筆者も同意します。ただし、この記事、個人の主観に終始しており、エビデンスにやや乏しい感じも否めませんので、深掘りしていこうと思います。

実は、子どもに母国語が定着する10~12歳まででないと第二言語の習得は不可能になるという臨界期仮説というのがあります(参考リンク)。ですから、子どもをバイリンガルにしようと思う保護者はできる限り早めに英語を学ばせようと考えるわけです。

一方で、この10~12歳のとき、同時に2つの言語を学んでいると、母国語がどちらかわからず混乱してしまい、後々の思考プロセスに支障をきたすという説もあります。日本語は「S(主語)-O(目的語)-V(述語)」の順で話しますが、英語は「S-V-O」の順であることからだけでもわかるように、もともとの言語の構造が異なるので、思考もごちゃごちゃになってしまうのは容易に想像できますね。

産経ニュースの記事を書かれた方は後者の考えをお持ちの方なのだと思います。実際に次期学習指導要領では、今まで第5・6学年が受けていた外国語活動(年間35単位)は第3・4学年へスライドされ、第5・6学年は外国語(年間70単位)として教科化が検討されています。つまり、9~12歳という母国語の確立が図られる時期に外国語を学ばせるわけで、外国語に逼迫されて国語教育がおろそかになってしまうかもしれないという懸念が出てくるのもわからなくはありません。

しかし、国語教育の指導時数は現行でも改訂案でも、第3・4学年は年間245単位、第5・6学年は年間175単位と変化はありません。外国語の時間が純増するだけです。この時数比だけみてみれば、日本語と外国語のどちらが母国語か迷うなどということもないでしょう。

また、12月6日に公表された2015年の学習到達度調査(PISA)で、日本の読解力は前回より平均点が22点も下がり、順位が落ちたことなどより、子どもたちが文章を正確に理解できていないのではないかとも指摘されています(参考「国際学力テスト 語彙不足に警鐘 読解力低下で専門家」(毎日新聞))。

そこで、答申では「教科等を越えたすべての学習の基盤として育まれ活用される資質・ 能力」として「言語能力」を挙げており、「読解力を支える語彙力の強化や、文章の構造と内容の把握、文章を基にした考えの形成など、文章を読むプロセスに着目した学習の充実、情報活用に関する指導の充実、コンピュータを活用した指導への対応など、学習指導要領の改訂による国語教育の改善・充実を図っていくこと」を述べています。決して、国語教育に割くパワーを減らそうというわけではないのです。

今の国語教育の課題は?

国語教育における課題をもう少し詳しくみていきましょう。
現状、次のようないくつかの課題があるとされています。

【小学校】

  • 文における主語を捉えること
  • 文の構成を理解したり表現の工夫を捉えたりすること
  • 目的に応じて文章を要約したり複数の情報を関連付けて理解を深めたりすること

【中学校】

  • 伝えたい内容や自分の考えについて根拠を明確にして書いたり話したりすること
  • 複数の資料から適切な情報を得てそれらを比較したり関連付けたりすること
  • 文章を読んで根拠の明確さや論理の展開、表現の仕方等について評価すること

【高等学校】

  • 教材への依存度が高く、主体的な言語活動が軽視され、依然として講義調の伝達型授業に偏っている傾向があること
  • 文章の内容や表現の仕方を評価し目的に応じて適切に活用すること
  • 多様なメディアから読み取ったことを踏まえて自分の考えを根拠に基づいて的確に表現すること
  • 国語の語彙の構造や特徴を理解すること
  • 古典に対する学習意欲が低いこと(日本人として大切にしてきた言語文化を積極的に享受して社会や自分との関わりの中でそれらを生かしていくという観点が弱く、学習意欲が高まらない)

具体的にどう変わるの?

前述の課題を踏まえ、次期学習指導要領における国語科はどのように変わるのでしょうか。

①教育課程の示し方の改善

まずは、資質・能力を育成する学びの過程についての考え方を明確にし、小・中・高等学校で系統的に学べるようにすることが述べられています。

とくに、「情報を編集・操作する力」、「新しい情報を、既に持っている知識や経験、感情に統合し構造化する力」、「新しい問いや仮説を立てるなど、既に持っている考えの構造を転換する力」を働かせること、一つ一つの学習活動において資質・能力の育成に応じた言語活動(言葉による記録、要約、説明、論述、話合い等)を充実させることなどが大切とあります。

したがって、より一層、児童生徒が主体的に言語活動を通して学んでいく機会が多くなっていくでしょう。

(参考資料・サイト3の4ページ目より抜粋)
(参考資料・サイト3の4ページ目より抜粋)

②教育内容の改善・充実

大きく変わりそうな部分は、高等学校の科目構成です。

話合いや論述などの「話すこと・聞くこと」、「書くこと」の領域や日本人として大切にしてきた言語文化を積極的に享受して社会や自分との関わりにおいて生かしていけるような学習に力を入れるような枠組みが検討されています。

現行は、「国語総合」「国語表現」「現代文A」「現代文B」「古典A」「古典B」があり、うち「国語総合」のみが共通必修科目ですが、以下のように変わるようです。

【共通必修科目】

「現代の国語」…実社会・実生活に生きて働く国語の能力を育成する。

「言語文化」…上代(万葉集の歌が詠まれた時代)から近現代につながる我が国の言語文化への理解を深める。

【選択科目】

「論理国語」…多様な文章等を多面的・多角的に理解し、創造的に思考して自分の考えを形成し、論理的に表現する能力を育成する。

「文学国語」…小説、随筆、詩歌、脚本等に描かれた人物の心情や情景、表現の仕方等を読み味わい評価するとともに、それらの創作に関わる能力を育成する。

「国語表現」…表現の特徴や効果を理解した上で、自分の思いや考えをまとめ、適切かつ効果的に表現して他者と伝え合う能力を育成する。

「古典探究」…古典を主体的に読み深めることを通して、自分と自分を取り巻く社会にとっての古典の意義や価値について探究する。

改定案 現行
科目 標準単位数 必修科目 科目 標準単位数 必修科目
現代の国語 2 国語総合 4 ○ 2単位まで減可
言語文化 2 国語表現 3
論理国語 4 現代文A 2
文学国語 4 現代文B 4
国語表現 4 古典A 2
古典探究 4 古典B 4

 
小学校低学年の学力差の背景に語彙の量と質の違いがあり、その後の思考力に大きな影響を与えることから、読書などを通して、語彙量を増やしたり語彙力を伸ばしたりする指導も図られるようです。

また、漢字指導の改善・充実の観点から、都道府県名に用いる漢字が「学年別漢字配当表」に加えられます。児童の学習負担を考慮しつつ、常用漢字表の改定(平成22年)、児童の日常生活及び将来の社会生活、国語科以外の各教科等の学習における必要性がみてとれるからです。

今、そして未来に生きる国語教育。先生たちも情報交換を

以上、2020年学習指導要領に向けての国語科の変化を総じると、語彙力・文章読解力の養成とともに、「話すこと・聞くこと」「書くこと」にも力を入れた学習、古典も含めた言語文化を大切にし、今に生きる国語教育が展開されていきそうです。話すことに苦手意識を感じやすい日本人にとって素晴らしいことだと思いますし、俳句や短歌・文語に愛着のある筆者は「言語文化」の教科書を早くみたくてうずうずします。

ただ身につけさせたい力が指導要領に書かれていたとしても、日々多忙な先生方がすべてを読みこなすことは不可能です。結局はカリキュラムがどう変わったか、教科書がどう変わったかなど、制度として守るべきことや手に取る教材によって指導方法が決まりますから、先生たちがリーチしやすい場所に、工夫の凝らされた教材がたくさんシェアされていくことが大切です。

たとえば、現在でもSENSEI NOTEなどで活発な情報交換がされています。
先生方も積極的に指導法をアクティブ・ラーニングしていただければと思います!

参照資料・サイト

  1. 答申:PDFデータ
  2. 答申要約:PDFデータ
  3. 答申別紙:PDFデータ
  4. 第二言語学習に適した時期

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