2020年、次期学習指導要領~外国語その1:国際基準に近づくための枠組みとは?

2020年、次期学習指導要領~外国語その1:国際基準に近づくための枠組みとは?

2016年12月21日に中央教育審議会によって出された「幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について(答申)」を数回に分けて読みとっていくシリーズ。今回のテーマは外国語についてです。

外国語は、小学校高学年での教科化等、次期指導要領の中でも注目度の高い教科です。2017年1月30日の有識者会議で指導計画素案や教材例が大筋で了承されたこと、指導者の育成に懸念があることなど、トピックスがいくつかあるので、3回に分けてお伝えしていきます。

追記:2017年2月14日に学習指導要領改訂案も公開されたため、内容を改定案に揃えました。

■日本の英語能力レベルは「低い」

Brexitやトランプ現象でナショナリズムが顔を覗かせる場面もあるものの、先日の日米首脳会談を見ても、日本の政治経済は他国との協調によって成り立っており、今後もグローバルな視点で物事を考え、必要に応じて外国語でコミュニケーションをとっていくことが求められるのは明白です。

しかし、留学・語学教育事業を展開する私立教育機関「イー・エフ・エデュケーション・ファースト・ジャパン」によると、日本の英語能力ランキングは72カ国中35位(2016年11月)。2015年に比べて5位順位を下げています。アジアではシンガポールが非常に高い能力レベルであり、次いでマレーシア、フィリピン…。日本は19カ国中10位で、能力レベルは「低い」です。

外国語学習をなるべく早めに、なるべく多く…という流れになるのは、このような報告も一因なのでしょう。そのほか、言語認知科学が専門の大津由紀雄明海大学副学長・外国語学部教授によると、言語認知科学に理解のない経済界からの要請で、早期に英語を学ばせるほどよいという風潮になっていること、英語教室などで早期英語教育を受けられる子とそうでない子との機会不均等をなくすために学校に外国語教育を求める世間の声があることなどが背景にあるようです。

(大津先生ご自身は「英語を使える=グローバル人間」ではなく、「グローバル人材育成」と謳う次期指導要領の外国語教育に異を唱えています。)

「英語を使える=グローバル人間」ではない!(『「グローバル人材育成」の英語教育を問う』 大津由紀雄教授インタビュー

■今の外国語教育の課題と目標は?

中教審答申では、次のようなことを課題としています。

  • 学年が上がるにつれて児童生徒の学習意欲が落ちること
  • 学校種間の接続が不十分で、進級・進学後に、それまでの学習内容や指導方法等を発展的に生かせていないこと
  • 中・高等学校で、文法・語彙等の知識がどれだけ身に付いたかに重点が置かれ、コミュニケーション能力の育成(話すこと・書くことなど)が不十分であること
  • 中・高等学校の生徒の英語力では、習得した知識や経験を生かし、コミュニケーションを行う目的・場面・状況等に応じて適切に表現する機会が不十分であること

そこで、①各学校段階の学びを接続させる②「外国語を使って何ができるようになるか」を明確にすることが掲げられました。具体的には、小・中・高等学校で一貫した指導を実現するため、国際的な基準であるCEFRなどを参考に、段階的に実現する領域別の目標が設定されています。

「聞くこと」「読むこと」「話すこと」「書くこと」の4技能ではなく、外国語の学習等のための「聞くこと」「読むこと」「話すこと(やり取り:interaction)」「話すこと(発表:production)」「書くこと」という5つの領域において、単に、知識・技能だけが示されているのではなく、思考したり表現したりする言語能力が示されていることが特徴です。実際のコミュニケーションに主体的に取り組んでいけるような内容が求められているわけです。

(別紙13-3より)

■具体的にどう変わるの?

小学校・中学校・高等学校すべてに変化があるのがポイントです。

①教育課程の示し方の改善

外国語で言語活動をするには、以下の学習プロセスを経ることが大切だと述べられています。

  1. 設定されたコミュニケーションの目的・場面・状況等を理解する
  2. 目的に応じて情報や意見などを発信するまでの方向性を決定し、コミュニケーションの見通しを立てる
  3. 対話的な学びとなる目的達成のため、具体的なコミュニケーションを行う
  4. 言語面・内容面で自ら学習のまとめと振り返りを行う

また、単に繰り返し活動を行うのではなく、言語活動の目的・使用の場面等を意識できる具体的な課題を提示することにも触れられているので、より練られた教材が出てきそうです。(次回、指導素案や教材例を紹介します。)

②教育内容の改善・充実

【小学校】

いちばん大きな変化は、今まで高学年(第5・6学年)で行われていた「外国語活動」が、中学年(第3・4学年)に前倒されることです。高学年には新たに「外国語」が設けられ、教科化されるため、評価も伴ってきます。

  • 外国語活動:中学年、年間35単位、「聞くこと」「話すこと」が中心、外国語学習への動機づけ、評価なし(特記事項があれば文章で)
  • 外国語:高学年、年間70単位「読むこと」「書くこと」も加わる、総合的・系統的に扱う学習、評価あり

小学校の年間授業日数は約200日間=40週ですので、35単位であれば週に1回、70単位であれば週2回授業が行われるわけです。

改訂案 現行
科目 3学年 4学年 5学年 6学年 科目 3学年 4学年 5学年 6学年
外国語活動 35 35 外国語活動 35 35
外国語 70 70

 

また、現行の学習で浮かび上がってきた以下の課題改善に努めていくことが記されています。

  • アルファベットの文字や単語などの認識
  • 国語と英語の音声の違いやそれぞれの特徴への気付き
  • 語順の違いなど文構造への気付き

【中学校】

年間140時間であることに変わりはありませんが、小学校の外国語活動で学んだことがうまく生かされていない現状を踏まえ、具体的な課題等を設定するなどして、意味のある文脈の中でのコミュニケーションが行われることになりそうです。

また、高校との接続の観点から、外国語で授業を行うことを基本とするなど指導の改善が図られます。

【高等学校】

科目構成が大きく変化するようです。

現行は、「コミュニケーション英語基礎」「コミュニケーション英語Ⅰ」「コミュニケーション英語Ⅱ」「コミュニケーション英語Ⅲ」「英語表現Ⅰ」「英語表現Ⅱ」「英語会話」で、うち「コミュニケーション英語Ⅰ」が必履修科目ですが、次期指導要領では以下のような構成になります。

【共通必修科目】

「英語コミュニケーションⅠ」
…「外国語を通じて、情報や考えなどを的確に理解したり適切に伝えたりすることができる力」(CEFRのA2レベル相当)を育成するため5つの領域を総合的に扱う科目。中学校の学び直しの要素を入れる。

【選択科目】

「英語コミュニケーションⅡ」
「英語コミュニケーションⅢ」
…「外国語を通じて、情報や考えなどを的確に理解したり適切に伝えたりすることができる力」(CEFRのB1レベル相当)を育成するため5つの領域を総合的に扱う科目

「論理表現Ⅰ」
「論理表現Ⅱ」
「論理表現Ⅲ」
…「発表、討論・議論、交渉」などにおいて、聞いたり読んだりしたことを活用して話したり書いたりする統合型の言語活動によって、発信能力の育成を強化するための科目

また、留学や進学等を見据えて高い英語力を目指す高校生のために、専門教科「英語」の各科目も見直し、学校設定科目で対応できるようになるようです。

改訂案 現行
科目 標準単位数 必修科目 科目 標準単位数 必修科目
英語コミュニケーションⅠ 3 ○2単位まで減可 コミュニケーション英語基礎 2 ○2単位まで減可
英語コミュニケーションⅡ 4 コミュニケーション英語Ⅰ 3

英語コミュニケーションⅢ 4 コミュニケーション英語Ⅱ 4
論理・表現Ⅰ 2 コミュニケーション英語Ⅲ 4
論理・表現Ⅱ 2 英語表現Ⅰ 2
論理・表現Ⅲ 2 英語表現Ⅱ 4
英語会話 2

 

■覚える単語が増える? 母語との区別を明確に

中教審答申の参考資料として、CEFRに基づいた「外国語教育の抜本的強化のイメージ」が以下のような模式図で示されています。

これより、現行では、中学生の英検3級程度等が50%の目標が実際は35%、高校生の英検準2~2級程度等が50%の目標が実際は32%であることがわかります。また、大学や海外、社会で英語力などを伸ばす基盤を確実に育成するにはCEFRのB2レベル相当まで引き上げる必要があり、覚える単語数も増えることになりそうです。

■覚えるべき英単語数

現状 今後(?)
小学校 600~700語
中学校 1,200語 1,600~1,800語
高等学校 1800語 1,800~2,500語
高等学校卒業レベル 3000語 4,000~5,000語程度

 

(答申別紙9ページ目抜粋)

小学校中学年から学び始め、また小学校-中学校の接続が強くなれば、覚える単語数が増えても問題ないのかもしれません。具体的なシーンを想定する学習が展開されるのなら、個別のやや細かいレベルの単語も出てくるでしょう。

次期指導要領で学年別漢字配当表に都道府県名に用いる漢字が加わるようで、現在案として出されているのは以下のようになります。小学校卒業までに教育漢字を1026字習うことを考えると、覚えるべき英単語600~700語というのは多い印象を覚えます。小学校第3・4学年は音声中心の学習であり、評定もないので、単語のスペルを覚えることはあまりないでしょうから、第5・6学年で300語ずつ覚えるのなら、漢字以上に大変なものになってしまいます。

■学年別漢字配当

学年 配当漢字数
小学校 第1学年 80字
第2学年 160字
第3学年 200字
第4学年 202字
第5学年 193字
第6学年 191字
小計 1,026字
中学校 第1学年 その他の常用漢字のうち300字程度から400字程度程度まで
第2学年 その他の常用漢字のうち350字程度から450字程度程度まで
第3学年 その他の常用漢字の大体
小計 約1130字
合計 約2,156字

 

以前の「2020年、次期学習指導要領~国語科はどう変わるか」で触れましたが、「10~12歳のとき、同時に2つの言語を学んでいると、母国語がどちらかわからず混乱してしまい、後々の思考プロセスに支障をきたすという説」があります。ですから、国語と外国語の授業において、まずは日本語と英語の構造の違いなどを理解することが大切です。そして、友だちとコミュニケーションをとる言語活動を行いながら、単語も覚えられるというような、知識の習得に偏りすぎない授業が目指されますね。

次回は、外国語の指導計画素案や教材例について触れたいと思います。
お楽しみに。

参照資料・サイト

  1. 答申:PDFデータ
  2. 答申要約:PDFデータ
  3. 答申別紙:PDFデータ

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