2017年4月28日、文科省から「教員勤務実態調査(平成28年度)の集計(速報値)について」が公表されました。
これは2016年10月・11月に、小学校教諭8,951人、中学校教諭10,687人を対象にして行われた勤務時間等に関する調査です。電通の長時間労働問題などがきっかけとなり、昨今は労働時間について厳しく管理し始めた民間企業の話をよく聞きますが、学校現場ではどうなのか…実は深刻な問題が浮かび上がってきました。
5月1日がメーデーであったことにもちなみ、先生方の勤務実態について深堀りしていきます。
■いまだに勤務時間の管理がされていない学校現場
政府の働き方改革実現会議で決定された実行計画では、長時間労働の是正にあたり、次のように規定しています。
残業上限 | |
通常 | 原則月45時間、年360時間 |
繁忙期(例外的) | (1)月100時間未満 |
(2)2~6ヵ月の月平均80時間 | |
(3)年720時間(月平均60時間) | |
(4)月45時間を超える場合は年6ヵ月まで |
上記を遵守できない違反企業には罰則も科すことが示されていますが、先生方にはあってないようなもの。現役の先生に伺ってみると、いまだに台帳記入やタイムカード打刻などで勤務時間を管理することすら行われていないようです。ですから、今回のような調査によって各校・各人の実態がある程度は明らかになりますが、日々ウォッチ&マネジメントされているわけではないので、場合によってはかなり深刻な長時間労働を強いられている先生もいらっしゃる可能性があります。
また、インタビューによると「忙しいから、新しいものを取り入れたり、勉強したりが平日はしにくい。土日も出勤している人がたくさんいます」などという話もあり、先生の負担が大きいことは明白です。
■過労死ラインをこえる中学校教諭は約6割
小学校・中学校とも、校長や副校長・教頭、教諭などすべての職種で10年前より勤務時間が増えています。1週間あたりの平均勤務時間は小学校教諭が57時間25分、中学校教諭が63時間18分でした。先生方の1週間当たりの正規の勤務時間38時間45分ですから、小学校教諭は19時間40分、中学校教諭は25時間33分が1週間当たりの平均残業時間と言えます。中学校教諭は国が示す「過労死ライン」に達する週20時間以上残業していることになるのです。小学校も副校長や教頭は過労死ラインを越えています。
(「教員勤務実態調査(平成28年度)の集計(速報値)について」より)
割合でいうと、過労死ラインの週20時間以上残業をしている教諭が中学校で57.7%、小学校で33.5%に上っています。中学校教諭が土日の部活動に関わる時間は2時間10分で、10年前の1時間6分から倍になるなど、特に中学校では長時間労働が常態化していることがわかります。
(「教員勤務実態調査(平成28年度)の集計(速報値)について」より)
■法規制が急務、早く帰る工夫も
まずは管理職が勤務実態を報告する義務を課し、場合によってはしかるべき対応・処分がなされるなど法規制によって先生たちの負担を減らせるようにしたいところですが、同時に意識の問題も解決していかなくてはいけません。
筆者が教師をやっている時代も「授業の準備等に時間をかければかけるほどよい先生」「若い先生は労働時間の長さで経験の浅さをカバー」という暗黙の文化がありました。若手の先生で遅くまで残っている先生が偉い、土日に来ている先生が偉いというようなプレッシャーがあり、休日も鬱々としていたのを覚えています。
しかし、先生が日々の仕事の生産性をあげ、休日にリフレッシュして視野を広めることこそ、教室に良い影響を与えられるのではないでしょうか。自分のクラスは自分のクラス。学校や学年で足並みをそろえる必要があるときもありますが、変に他の先生を意識して帰らないのはおかしな話ですし、長時間勤務する必要があるほど仕事を抱えているのも管理側(教育委員会や校長・教頭など)の問題です。
今までの学校文化から、「仕事の効率化」という観点の情報があまりいきわたっていないように思いますが、以下のような書籍やブログがお勧めです。1つでもTIPSを実行してくださる先生が増え、状況が改善されることを願っています。
『効率が10倍アップする!「時間」を生み出す教師の習慣』
http://www.toyokan.co.jp/book/b165868.html
『多忙感をスッキリ解消! 「できる教師」の仕事術 時間を生み出し成果を上げる31の技術と習慣』
http://www.meijitosho.co.jp/detail/4-18-161120-0
「生徒の心に火をつけるためのブログ」~【随時更新!1秒でも早く帰宅する】中学教師が残業時間を0に近づけるためにできる仕事術10選~
http://blog.livedoor.jp/aoihorizon/archives/1062306675.html
今回の調査結果によって松野文部科学大臣が危機感を表明したため、状況は少し変わるかもしれませんが、子供のことはすべて先生たちに押し付け気味になっており、世の中の働き方改革の流れと、教育現場の実態が乖離していることが明らかになりました。繰り返しになりますが、状況改善には行政側の制度改革と先生側の継続的な意識改革の双方を行っていく必要があります。これが改善されると、教員志望の学生も増え、教員の質向上にも繋がりますから、定期的に注目したいものです。
■参考資料
- 「教員勤務実態調査(平成28年度)の集計(速報値)について(概要)」
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