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教科書はどう変わる?――デジタル教科書の導入に向けて

2017年5月23日に、今後の教科書の改善点について、文科省より報告書が出されました。この報告書には、「次期学習指導要領の実施に向けた改善」と「デジタル教科書の導入の検討に関連した改善」のふたつが記されており、前回は「次期学習指導要領の実施に向けた改善」について触れました。今回は「デジタル教科書の導入の検討に関連した改善」の主な内容を整理していきます。

■デジタル教科書導入に向けて

1.デジタル教科書の導入と教科書検定制度の関係

昨年12月の「デジタル教科書」の位置付けに関する検討会議最終まとめでは、デジタル教科書について次のように記されています。

  1. 紙の教科書とデジタル教科書の学習内容(コンテンツ)は同一であることが必要
  2. デジタル教科書は、基本的に紙の教科書のレイアウトを前提に制作されることより、改めて検定を経る必要はないとすることが適当
  3. 動画や音声等は、検定を行うことが困難などの理由から、基本的には検定を経ることを要しない教材とすることが適当

つまり、デジタル教科書は画面の拡縮は可能なものの、紙の教科書と同じ扱いになるということです。たとえば、難しい用語をクリックすると辞書に飛んだり、漢字の読みや書き順を学べるサイトへ飛んだり、当該学年の学習の前段階となる既習内容へ飛んだりすることを容易にはできません。これはひとえにリンク先のサイトの品質を担保できず、誤った内容を児童生徒たちに教えてしまうリスクを軽減するため。納得できるものの、Webのメリットを活かしきれない感はあります。

2.URL・QRコード等の取扱い

今の教科書でも、動画や音声等を含めて教科書の内容と関連のある様々な教材にアクセスするためのURL・QRコード等が掲載されていますが、現行の検定基準では明確な取り扱いが定められていません。しかし、今後も掲載の増加が予想され、各教科における取扱いを統一する必要があるため、ルールを明確にすることが求められます。

ただし、一般のWebサイト上の情報は、リンク切れでアクセスができなくなることや、内容を容易に変えられることから、URL・QRコード等が参照するWebサイト上の情報のすべてを審査することは不可能です。

そのため、URL・QRコード等は、あくまでも学習上の参考情報であることが再確認されました。掲載されたURL・QRコード等の参照先が明らかに不適切な情報でないか、本文と対応しているかなどの観点を検定基準に設け、限定的な範囲での審査にとどめることの適切性も発表されています。

また、教科書上に掲載するURL・QRコード等は、教科書会社のコンテンツのみに限定するのではなく、他の学習上有益なサイトのリンクが貼られることも考えられます。そこで教科書会社は、URL・QRコード等で導かれるWebサイトの内容について、検定申請の際の添付資料として提出することが必要になってきます。ただし、すべての参照先を審査することは現実的でないことから、審査対象となる紙媒体は、教科書会社による教科書関係Webサイトのリンク先の情報などに限定されることになりそうです。

■デジタルの良さを感じられる授業を

せっかく1人1台タブレットを支給され、紙の教科書の代わりにデジタル教科書を使うことになっても、ごく限られたサイトしか閲覧できないという制約が出てきてしまいます。ですから、デジタル教科書からのリンクはできずとも、授業中に学習内容について、自由に検索できる時間を設けるなどというような工夫があってよいと思います。この場合、もちろん、児童生徒らが関係のないサイトへ飛んでいないかどうか、教師が見えるかたちにすべきです。

以前にもご紹介しましたが、近畿大学附属中学校・高等学校(大阪府東大阪市)では、LINE等で生徒同士がやり取りすることを禁じていないからこそ、子どもたちが積極的に学べているということでした。

要するに、保護者や教師と子どもの信頼関係がしっかりと築かれ、子どもが何をしているかの管理体制が整っていさえすれば、ICTによって大きな教育効果が見込まれるということです。2020年以降も当面は、紙の教科書とあまり変わりばえしないデジタル教科書かもしれませんが、授業内容や手法によってデジタル機器を生かすことも殺すこともできるというわけです。教科書会社は電子版の試供品を配布しているので、手に入れて、どう活用できそうか、確認するところから始めてみましょう。

■参照サイト

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