小学校の教科担任制は是か非か~福島県の導入検討を機に~

小学校の教科担任制は是か非か~福島県の導入検討を機に~

■学力向上を狙う福島県

福島県教育委員会が小学校に教科担任制を導入することを検討しています。教科担任制とは、文字どおり教員が専門科目ごとに授業を担当することで、中学校で広く採用されている制度です。しかし、小学校は1人の教員が1クラスの全教科を指導する学級担任制が多く、教科担任制を全面導入している都道府県はまだ少ないのが現状です。

今回、福島県が教科担任制導入を検討している理由は、長年課題となっている県内の子どもたちの学力向上。2016年度の全国学力・学習状況調査(全国学力テスト、小学校6年生と中学3年生が対象)で、福島県は国語と算数・数学の学年別8科目のうち7科目において全国の平均正答率を下回ったことに危機感をもっています。

5・6年生のクラスを中心に、国語・算数・理科・社会の各教科の内容をもっとも得意としている教員が指導にあたる方法をとることで、クラス間で成績に差が出るのを防ぎ、学年全員に質の高い同一の指導が行き届くことを目指します。現在県下の14校で試験的に実施されており、2019年度までの成果をみて他校にも展開していく予定だそうです。

「小学校で「教科担任制」 県教委、学力向上へ検討」(福島民報社)

■一般的にいわれる、学級担任制/教科担任制のメリット/デメリット

小学校で学級担任制が採られているのはそれなりの理由があり、やはり学級担任が児童一個人のよいところもよくないところもすべて把握し、よいところは伸ばしつつ、よくないところは指導するというかたちが、子どもを安心させられるというのが最大の理由でしょう。

先生側としても、その子が苦手な教科の指導担当になるとよい点を褒めづらいです。しかし、その子の得意な教科も一緒に指導していれば得意教科の授業でその子を輝かせてあげることができます。また、教科担任制では、情報交換のための時間のロスや、話の食い違いが生じる可能性も高いです。他にも、次のようなメリット/デメリットがあります。

学級担任制 教科担任制
メリット ・担任教師と児童の結束が強くなる。
・児童の表情や行動の変化を一日の生活、全教科の指導を通して観察することができる。
・授業時間が弾力的に運用できる。
・より教科横断的な授業を組める。
・一つの課題に対しより深い指導ができる。
・学級担任とそりが合わない児童も、別の教科で活躍できる。
デメリット ・専門外の教科への不安が生じる。
・担任の負担が大きい。
・児童の実態を把握しにくい。把握に時間がかかる。
・授業時間が弾力的に運用できない。
・教科の枠を越えられない。
・指導にあたる教員が不足している。

 

■すでに導入している兵庫県

実は、兵庫県は教科担任制を随分前から採り入れています。兵庫県は、2009・2010年度に、①教員の専門性を生かした学力向上、②複数の教員による児童の多面的理解、③中学校への円滑な接続をねらいとして、教科担任制と少人数学習集団の編成を組み合わせた「兵庫型教科担任制」の実践研究に取り組んできました。その成果と課題は次のとおりです。

「兵庫型教科担任制」実践研究のまとめ(PDF)より

教員の交換授業や配置形態などを工夫したり、学級経営を基盤とした組織的・協力的な生活指導の充実を図ったりする課題はあるものの、教員の指導方法の工夫改善や、少人数授業によるきめ細かな指導が推進されつつあり、一定の教育効果が得られたようです。

この成果と課題を受けて、現在も兵庫県は教科担任制を継続しています。教科担任制は、国語・算数・理科・社会から2教科以上選択し、担任の交換授業を実施することを原則としています。また、少人数授業は算数と理科において、学年や学級を少人数学習集団に編成し、指導しています(同室複数指導含む)。

■児童の実態に合わせること、効果検証をすること

兵庫県の報告にあるように、算数や理科は教科担任制に向いている教科のようですが、国語や社会はそこまでふさわしくないということがわかります。しかし、「授業の準備」という観点では、国語や社会を1学年につき1人の先生が教えるというのは効率的です。理科のような実験がある教科は準備が必要なので、教科担任制に大変ふさわしいといえます。

また、小学校低学年で教科担任制というのも考えもので、教師が入れ替わり立ち替わりになり、教科間で矛盾するような授業が展開されてしまうと、学習の基礎部分がまだ身についていない子どもたちを戸惑わせてしまうのではないでしょうか。そもそも低学年〜中学年の教科内容はそこまで専門性の高いものでもありません。

以上から、各教師の指導の違いに対応できる可能性が高まり、やや教科専門性も必要となる高学年の授業から教科担任制をとるのがよいと考えられています。

教科としても、音楽や図工、家庭科、理科などといった専門的スキルや準備時間を要するものを専科の先生に指導してもらうという仕組みは多くの学校でとり入れられています。しかし、これは比較的児童数の多い学校での取り組みで、各学年単学級編成のような学校ではなかなか実現されません。教科担任制を行うには、教員の数の確保が必須だからです。

試験的に福島県が教科担任制を行うことが子どもたちにどのような効果をもたらすのかは、定性だけでなく、定量的に測定していく必要があると考えます。教師の主観で物事が判断されやすいのが学校現場。「この子たちは○○という特徴だったから」だとか、「○○の整備ができていなかったから芳しい結果が得られなかっただけ」などという、毎年指導対象や状況が異なることを言い訳に、基準を設けない悪い癖が散見されます。

例えば小テストのデータを管理し続けて経過をみてみたり、5年生(または学校①、クラス①など)ではAという手法、6年生(または学校②、クラス②など)ではBという手法をとってどちらが習熟度が高かったか比較してみたり、とエビデンスベースで効果をみることが、教科担任制の是非を最終的に判断するための材料となります。福島県には、兵庫県のような定性結果だけの報告ではなく、定量的な結果を出していただきたいと期待しています。

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