本を読まない高校生が57.1%~子供の読書量を増やすためには

本を読まない高校生が57.1%~子供の読書量を増やすためには

2017年8月1日に行われた「文部科学省にて子供の読書活動推進に関する有識者会議(第1回)」によると、子供の読書活動に関していくつかの課題が明らかになりました。2016年時点で、高校生が本を読まない割合(以下、不読率)は57.1%にも上るのです。5人中3人が本をまったく読まないというのは由々しき事態です。今後の取り組みをどうしていくべきかも踏まえてみていきたいと思います。

■異様に高い高校生の不読率

2013年に策定された「子どもの読書活動の推進に関する基本的な計画 (第3次計画)」では、不読率について目標が掲げられています。現状と比較すると次の通りです。

小学生 中学生 高校生
2016年度時点(現状) 4.0% 15.4% 57.1%
2017年度目標 3.0%以下 12.0%以下 40.0%以下
2022年度目標 2.0%以下 8.0%以下 26.0%以下

 

2016年度時点で、まだ2017年度目標より高い割合となっていますから、2017年度内にどこまで下げられるかが問われているわけです。また、2022年度の目標と現状では大きな乖離があり、とくに高校生に関しては現状より半分以下の割合までもっていくことになります。果たしてこれは可能なのでしょうか。

不読率
(参考:「子供の読書活動に関する現状と論点(PDF)」、P3)

本を読まない高校生にその理由を聞くと、最も多いのが「他の活動で時間がなかったから」の64.5%、次いで「他にしたいことがあったから」の47.3%。視野や行動範囲、交友関係も広がり、勉強や部活、課外での活動にも力が入る高校生だからこそ、読書に時間を割くことができないのだということがよくわかります。また「ふだんから本を読まないから」という回答も32.8%と高い割合を示しています。

高校生が本を読まない理由
(参考:「子供の読書活動に関する現状と論点(PDF)」、P4)

さらに詳しい調査では、「他の活動等で時間がない」高校生は、中学生までの読書量が多く、本が好きである傾向にありますが、一方で「ふだんから本を読まない」高校生は、中学生までの読書量が少なく、本が好きではないという傾向にあるようです。

ですから「他の活動等で時間がない」「他にしたいことがある」などの理由で高校生になって本を読まなくなる子供には「限られた時間の中で読書をしたり、読書の優先順位が上がるようなきっかけづくりを行う必要」があり、中学から高校にかけてずっと「ふだんから本を読まない」子供には「高校生になるまでに読書習慣を形成させる必要」があります。


高校生が本を読まない理由
(参考:「子供の読書活動に関する現状と論点(PDF)」、P5)

高校生になると、家族の影響や学校からのアプローチよりも、「本屋での宣伝・広告、テレビや雑誌、新聞、ネットでの宣伝や広告」からの情報をもとに本を読もうとする傾向が強くなってきます。また「知りたいことや興味・関心がひかれることができたこと」といった自分起因のもの、「友達がおすすめの本を教えてくれたり貸してくれたりすること」といった友達の影響なども高い傾向にあります。以上から、SNSを含んだメディアに高価値の情報を流す、友達と読書を一緒にする時間を設けるなどが取り組みとしては有効だということがわかってきます。

高校生が読書をするきっかけ
(参考:「子供の読書活動に関する現状と論点(PDF)」、P7)

■読書とみなすものが異なるという背景

下のグラフを見てわかるように、糸賀雅児氏(慶應義塾大学名誉教授・絵本専門士委員会委員)によると、「読書」の範囲やとらえ方は、世代により、また各種読書調査により、それぞれ異なっているようです。したがって、多くの高校生は、教科書や参考書、コミックでも「読書」しているといえるのではないだろうかという問題提起がされました。ネットの記事や論文だって長いものであれば読書といえそうな気がします。「読書をしているか」ではなく、「活字に触れているか」という質問にすれば、また数値は異なるでしょう。これだけスマートフォンやタブレットが普及してきた時代ですから、一概に「高校生の読書機会が少ない」ともいえない気もします。とはいえ、小・中学生の不読率は着々と下がってきていますから、高校生へのアプローチが第一優先でしょう。

10代から60代までの男女819人に「あなたはこれを読書と言うか?」を尋ねた結果
(参考:糸賀委員提出資料(第1回)PDF
『「体を温める」と病気は必ず治る』を読書とする割合の世代比較
(参考:糸賀委員提出資料(第1回)PDF

■世界との比較と言語性知能

これまで国内の数値を見てきましたが、実は世界的にみても日本人の読書時間は少ないことがわかっています。世界第1位のインドでは週10.7時間が読書に割かれているのに対し、日本ではその半分以下の週4.1時間しか読書に割かれていません。

また、家庭あたりの平均蔵書数はOECDの主な国の中で最下位となっています。これには家が狭いということが大きな理由の1つでしょう。それでも読解力の得点が中位層にあるのは教科書などで読書の質・量を担保できているからなのかもしれません。

(参考:OECD資料による)

読解力などといった言語性知能を発達させるには何よりも読書が有効です。この言語性知能は親からの遺伝的影響が非常に少ないため、読書ができる環境が整い、習慣がつきさえすればいくらでも伸ばすことが可能です。

■読書に関する法律と、今後の取り組み

実は、「子どもの読書活動の推進に関する法律」が2015年12月22日に公布・施行されています。しかし、その内容を知っている人は少ないのではないでしょうか。

第二条では読書環境の整備推進は国の責務とされており、第三条では子どもの読書活動の推進に関する施策を総合的に策定・実施することが地方公共団体の責務とされています。また、第八条では政府による子どもの読書活動の推進に関する基本的な計画策定の義務、第九条では都道府県・市町村の子どもの読書活動の推進に関する施策についての計画策定の努力義務について書かれています。

子どもの読書活動の推進に関する法律(平成十三年十二月十二日法律第百五十四号)

第二条 子ども(おおむね十八歳以下の者をいう。)の読書活動は、子どもが、言葉を学び、感性を磨き、表現力を高め、創造力を豊かなものにし、人生をより深く生きる力を身に付けていく上で欠くことのできないものであることにかんがみ、すべての子どもがあらゆる機会とあらゆる場所において自主的に読書活動を行うことができるよう、積極的にそのための環境の整備が推進されなければならない。
(国の責務)
第三条 国は、前条の基本理念にのっとり、子どもの読書活動の推進に関する施策を総合的に策定し、及び実施する責務を有する。
(地方公共団体の責務)
第八条 政府は、施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、子どもの読書活動の推進に関する基本的な計画を策定しなければならない。
第九条 都道府県は、当該都道府県における子どもの読書活動の推進に関する施策についての計画を策定するよう努めなければならない。

市町村は、当該市町村における子どもの読書活動の推進に関する施策についての計画を策定するよう努めなければならない。

 

ですから、国や地方公共団体は読書に関する施策を実行する必要があります。今までも、国は調査研究・読書コミュニティの形成・イベント等での推進活動などを、地方公共団体は全校一斉読書活動・学校-図書館-民間団体の連携・各校への司書教諭の配置などを積極的に行ってきており、法律施行後に比べて子供たちが読書をする機会が増えてきました。

小さい頃から切れ目なく読書の機会を提供したり、図書館を使った調べ学習コンクールを開いたり、家読(うちどく)キャンペーンを行ったり…と様々な取り組みをしている地方公共団体・学校がいくつもあります。それぞれのよい事例を真似しあって、全国の読書活動が発展していってほしいものです。

取り組み事例

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