学校における働き方改革、本質の見極めを

学校における働き方改革、本質の見極めを

36協定に基づいて民間企業が長時間労働の是正に努めている流れを受け、10年も20年も周回遅れの教育現場でも、ついに働き方が見直され始めています。2017年8月4日に行われた「学校における働き方改革特別部会(第2回)」で、先進事例の調査結果や、具体的な改善案が出されつつあり、少しずつ現場が変わっていくかもしれません。

■日本の教員は「何でも屋」

国立教育政策研究所 初等中等教育研究部 藤原文雄総括研究官によると、各国の教員の業務は次の表のようになっています。

(参考:「諸外国の学校の役割と教職員等指導体制の比較(PDF)」、P.2)

教員が担当する業務(○)の数が最も多いのはドイツの20個、ついで中国が19個、日本が18個でした。しかし、部分的にあるいは一部の教員が担当する場合がある業務(△)としては、ドイツが2個、中国が10個、日本が12個ですから、日本の一部の先生方は表中の国の中で最も多忙といえるわけです。指導も、事務も、トラブル対応も…と日本の教員はまるで「何でも屋」。

また業務の種類が多岐にわたり、数が多いこと以上に、部活動の指導にあたることで平日の午後から夕方にかけての時間や、土日もまるまる潰れるなど、拘束時間が非常に長いことも問題となっています。

一方、アメリカ、イギリス、シンガポール、そして意外にもお隣の韓国も、教員の業務は限定的です。学校の運営に関わるものはほとんど割り当てられておらず、児童の指導に関わるもののみを担当していることがわかります。

■教員の役割の明確化とシステム構築の必要性

イギリスでは1998年から、「教員がしなくてよい業務」が定められており、学習指導以外の多くが免除されています。出欠確認や試験結果の分析、ファイリング、データ入力、集金…どれも別の人でもできるようなことは教員は行わなくてよいのです。

(参考:「諸外国の学校の役割と教職員等指導体制の比較(PDF)」、P.3)

日本の教員の中には、深夜勤めの保護者の子供が朝起きれないため、家まで迎えに行く、電話をかけるなどといったことをしている人もいます。その時間は、既に登校している子供たちには対応できないので、本来の業務をストップさせているともいえそうです。本末転倒な気がしてしまうのは私だけでしょうか。

これに対して、アメリカでは、子供の安全確保のための監視の時間は限定的ですし、授業開始のベルに遅れた場合には、児童は事務室を訪れ、遅刻証明書を得た後、教室に向かうシステムになっています。さらに一定の時刻を過ぎても学校に着かない場合は、保護者が子供を事務室に連れて来なければなりません。このようにシステマチックに運営がされていると、教員の負担も軽くなりますし、子供の規範意識も高まります。

(参考:「諸外国の学校の役割と教職員等指導体制の比較(PDF)」、P.4)

■重い「責任」の荷を肩から降ろす仕組みを

教員がすべき仕事の優先順位がつけられず、あれもこれもとプラスオンされていってしまうのは、民間企業でも同じように見受けられますので、これは日本人の悪い癖なのかもしれません。「全人教育」という言葉が一人歩きして、何でもやる必要があるという意識が芽生えてしまい、本質は何かが見えなくなってしまうのです。

今回の会議で出された「検討事項に係るこれまでの主な意見の整理(PDF)」も、課題のカテゴライズはできていますが、まったく優先順位がわかりません。

以前、筆者が「小学校の低学年の教科担任制は難しい」と寄稿しました(「小学校の教科担任制は是か非か」)が、学習指導以外の事務作業においては別の人が行っても何ら問題はないはずです。筆者も教員時代に、定年退職された元教員の方にテストの丸つけを手伝っていただいたり、授業の準備を手伝っていただいたりしていました。今考えると、もっと他の事柄もお任せできることがあったのではないかと思います。

学級担任ともなると、「一国一城の主」としてすべて自分で責任を負う必要があると考える方も多いです。仕事を任せるのがあたりまえ、多面的にみんなで子供を見ていくことが子供にとってもよい結果をもたらすという意識に切り替えていく必要があります。これには、マネジメント層がきっちりと「やらないこと」を示してあげなくてはいけません。そして保護者を説得していかなくてはいけません。

従来、他人にやってもらっていたことを差し戻されると、人は最初は抵抗感を示しますが、慣れていくものです。あるいは慣れなければ別の何かが調整・改善されたり、新しいモノ・サービスが生まれたりします。これについて、喫緊で想像がつくことといえば、保護者が働く企業への申し入れや調整でしょう。何よりも、人口が減少している日本で子供は大切に育てられていくべきという共通認識があります。一企業のためにという考え方よりさらに上位概念で物事を捉えることが多くの人に求められています。最終的には、教員も保護者も、学校も企業もwin-winである状態を目指したいですね。

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