ついに緊急提言。学校の働き方改革

ついに緊急提言。学校の働き方改革

リンダ・グラットン『LIFE SHIFT』の影響もあってか、なんでも「人生100年時代」といえばよいという風潮もどうかと思いますが、「2007年に日本に生まれた子どもの50%は107歳まで生きる」とのこと。医療技術の発達した現在ですから、大人でも自分の人生が100年である可能性はあります。そして、精神疾患で休職や退職を余儀なくされる人が多い教員という職業だって、どう働き、どう暮らすのか、考え直すときがいよいよやってきました。

■緊急提言の3本柱

2017年8月29日に「学校における働き方改革に係る緊急提言」が出されました。次の3つの柱が示されています。

  1. 校長及び教育委員会は学校において「勤務時間」を意識した働き方を進めること
  2. 全ての教育関係者が学校・教職員の業務改善の取組を強く推進していくこと
  3. 国として持続可能な勤務環境整備のための支援を充実させること

具体的には次のように記されています。

■校長及び教育委員会は学校において「勤務時間」を意識した働き方を進めること

①業務改善を進めていく基礎として,適切な手段により管理職も含めた全ての教職員の勤務時間を把握すること。
→勤務時間管理は、労働法制上、校長や教育委員会に求められている責務ですが、「タイムカードなどで退勤の時刻を記録している」学校は小学校10.3%、中学校13.3%だそうです。「校務支援システムなどICTを活用して退勤の時刻を記録している」学校は小学校16.6%、中学校13.3%。民間企業だったらありえないような旧態依然とした現状は一刻も早く改善されるべきです。

②教職員の休憩時間を確保すること。
→休憩時間確保のためには、諸会議や部活動を適正な時間に設定することや、勤務時間外には保護者や外部からの問合せに留守電やメール対応する体制を整備すること、長期休暇期間に一定期間の学校閉庁日の設定を行うことなどが考えられます。また、部活指導員、PTA、保護者、地域住民等の理解を得る取り組みが必要と記されています。

③管理職の役割分担を明確にし、組織・時間・健康安全などのマネジメント研修を充実し、意識改革と実践力の向上を図ること。
→マネジメント研修を充実させることで意識がどこまで改革されるかはわかりませんが、ないよりはあった方がよいということなのかもしれません。その研修に参加することで長時間労働をまねくのであれば本末転倒ですので、やめるべきかとは思いますが、生産性が高められるのであれば成功といえるでしょう。

■全ての教育関係者が学校・教職員の業務改善の取組を強く推進していくこと

①教育委員会は早急に所管する学校に対する、時間外勤務の削減に向けた業務改善方針・計画を策定すること。
→所管する学校に対する業務改善方針・計画等を策定している教育委員会は都道府県で85.1%、政令市で55.0%、市区町村で7.6%にとどまっているそうです。都道府県で業務改善方針・計画が取り決められていても、より教員に身近である市区町村レベルに降りてきていないのであれば意味がありません。

②統合型校務支援システムの導入によって、業務の電子化による効率化などを図ること。ICTによる教材の共有化を進めること。
→市区町村と連携し、都道府県単位での統合型校務支援システムの共同調達・運用に向けた取組を推進することが重要とされています。

③国及び地方公共団体等においては、調査のみならず、学校に対する依頼・指示等について整理・把握し、その精選及び合理化・適正化を進めること。
→調査して現状を把握するのは誰でもできますが、そこから行動を起こすことが大切です。とにかく仕事の種類や量が多い教員に対して、やらなくてよい仕事を示し、フォローに回ることが国や自治体に求められています。

④地方公共団体は、給食費の公会計化を進めるとともに、学校徴収金について、口座振替納付等による徴収、事務職員等を活用しながらの未納金の督促の実施等、教員の業務としないよう直ちに改善に努めること。
→電気代や水道代が口座振替の時代に、給食費は毎月徴収されるものにもかかわらず、ずっと現金受け渡しだったというのがナンセンスすぎます。口座振替そのものは日本で1960年代から始まっていますが、学校で導入されてこなかったのは、1クラス40人程度の集計等を担任が行うことによって事務が分散化されるからということなのかもしれませんが、それ専門の事務職員を増強すればよいはずです。

⑤事務職員を活用することで事務機能の強化、業務改善の取組を推進するよう努めること。
→2017年4月に学校教育法等が一部改正され、事務職員の職務規定が見直されました。これまでのやり方のままになっていないか、業務の連携や分担の在り方を見直してみるべきです。

■国として持続可能な勤務環境整備のための支援を充実させること

①学校・教職員の勤務時間管理及び業務改善の促進

  • 業務改善を加速するための実証研究やアドバイザー派遣の充実
  • 統合型校務支援システムの導入促進
  • コミュニティ・スクールや地域学校協働活動等の活用
  • 学校徴収金の公会計化の促進及び徴収・管理業務の負担軽減に向けた調査研究
  • 環境改善のための空調設置等の施設整備の促進

②「チームとしての学校」の実現に向けた専門スタッフの配置促進等

  • スクールカウンセラー・スクールソーシャルワーカーについて、課題を抱える学校への重点配置、質の向上や常勤化に向けた調査研究
  • 多様なニーズのある児童生徒に応じた指導等を支援するスタッフの配置促進
  • 教員の事務作業(学習プリント印刷や授業準備等)等をサポートするスタッフの配置促進
  • 部活動指導員の配置促進や部活動の運営に係る指針の作成
  • スクールロイヤーの活用促進に向けた体制の構築

③学校の指導・運営体制の効果的な強化・充実

  • 教員1人当たり担当授業時数の軽減とそれに伴う授業準備の充実に向けた小学校における専科教員や中学校における生徒指導担当教員の充実
  • 校長や副校長・教頭等の事務関係業務の軽減に有効な主幹教諭・事務職員などの充実による学校運営体制の強化

参考:
学校における働き方改革に係る緊急提言(PDF)

上記の緊急提言では見直すべきところが多すぎて、逆に長時間労働になりかねないのではという心配があります。もちろんどれも対策を講じる必要があるものばかりですが、重要度と実現可能性の2軸で4象限に割り振りし、各自治体や学校ができるところから着手していくべきでしょう。

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