教えるというアプローチから考える「自分の強み」とこれからの教育

教えるというアプローチから考える「自分の強み」とこれからの教育

ヌーラボが取り組む「日本語学習制度」

先日、Great Place to Work Institute Japanが世界共通の基準で調査分析を行う2018年日本版「働きがいのある会社」ランキングの小規模部門/従業員25-99人で8位に選出され、福岡本社の他、国内に2拠点、海外に3拠点(アメリカ・オランダ・シンガポール)を構えるIT企業の株式会社ヌーラボ

同社はグローバル企業として、海外へのサービス展開はもちろんのこと、自社内におけるグローバル化を積極的に行っている。その1つが「日本語学習制度」である。

この制度は同社に所属する第一言語が日本語以外の社員に向けて、チーム内のコラボレーションを強化するため、社内に講師を招くなど日本語学習をサポートするというもの。この制度を導入した背景には、拠点が国外に増えたことによりヌーラボ社内の公用語を英語とし、第一言語が英語以外の社員向けの「英語学習制度」をこれまで運用してきた中で、組織規模の拡大とともに、第一言語が日本語以外の社員の割合が高まり、社員から「日本国内ユーザーの声を直接理解したい」などの要望が聞かれるようになったといったことが挙げられる。

開始から3ヵ月が経過し、日本語スキルの上達による業務遂行スピードやチームのコミュニケーション活性化といった効果はもちろん、知的好奇心や相互への関心の深まりなどにも繋がり、他者とコラボレーションした仕事がより楽しくなるといった効果が現れているそうだ。

ラーニングピラミッド

さて、ここである図を紹介したい。

これは、アメリカ国立訓練研究所(National Training Laboratories)の研究によって導き出された、学習定着率を表す「ラーニングピラミッド(Learning Pyramid)」だ。この図が表すものは、

  • 講義:5%
  • 読書:10%
  • 視聴覚:20%
  • 実演:30%
  • グループディスカッション:50%
  • 実践:75%
  • (他社への)教育:90%

というように、ピラミッドの底辺に近づく行為ほど、学習内容が定着する割合が高まるというもの。

先ほど紹介したヌーラボの「日本語学習制度」。これは、日本語以外を母語・母国語とする社員に対する教育が目的ではあるが、日本語を話せる社員が対象社員に対して日本語を教える状況も生まれる。結果として、自社内における相乗効果、また、ラーニングピラミッドにおける90%の定着率を生み出す環境が生まれることにもなる。

逆に、別の言葉を話せる人間がその言葉を教えるという状況も十分に有り得る。

外に目を向けるだけではなく、自分を見ている相手を見る

今回、筆者がこの事例を取り上げた理由に、改めて自分を見つめること、また、自分を見ている相手を見ることの大切さを感じたからだ。今、教育現場では、グローバル化であったり、来るべきAI社会に向けて、外国語の学習やプログラミング教育といったように、自分のスキルを上げていくことに意識が高まっているように思う。

それ自体は非常に大事だが、単に習うという意識ではなく、自分が持っているスキルを活用して、そのスキルを身に付けたい相手に教えるというアプローチも可能だろう。これはいわゆるアクティブラーニングの考え方にも通ずる。

とくに「日本語」は言語体系として、非常に難しい言語の1つと言われている(たとえば、英語を母語にする人にとって、アラビア語・中国語・日本語・韓国語の習得はとくに難しいという調査結果もある)。

生まれたときから日本語を使える立場としては、それを1つの媒体として、さまざまな人に教えることで、別の新しい知識やスキルを教えてもらえる環境を生み出せるとも言える。

インターネットの登場において、コミュニケーションコストは大幅に下がった。だからこそ、これからの教育において、単に知識の習得やスキルアップ、経験を増やすための教材や環境を用意するだけではなく、まず、今の自分の力を自分で知り、強みを改めて認識する、そういった意識を向上させる教育も必要になってくる、と筆者は考えている。

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