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ICT活用時代の教員の在り方:マイクロソフト認定教育イノベーター~活用から発信へ

今、多くのIT系企業が教育分野に積極的に参入し、これからの時代に即した教育環境を整備すべく各社の強みを活かした戦略・展開をしている。今回紹介する日本マイクロソフト株式会社もそのうちの1社だ。

今回、同社において、教育分野の中でもとくに教員向けのサービスを担当しているパブリックセクター統括本部文教本部の原田英典氏、寺島つむぎ氏にお話を伺う機会を得たのでその模様をお届けする。

開いた世界の“教育現場”

マイクロソフトはワールドワイドで教育関係者向けのコミュニティ「Microsoft Educator Community」を運営している。その内容は、マイクロソフトからの情報発信やサービス・プログラムの提供以外に、参加者自身の情報発信・交流が国境の壁を越え、インターネットを通じて行えるというもの。先日紹介した「Skype in the Classroom」もそのメニューの1つである。

Microsoft Educator Community
https://education.microsoft.com/

今回はまた別のメニューである「マイクロソフト認定教育イノベーター(グローバルプログラム名:Microsoft Innovative Educator Expert。以降MIEE」について取り上げる。MIEEは、ICT活用を推進する教育者向けのプログラムで、マイクロソフトが公式に運営し、IT企業の立場からサポートを行うというもの。

テクノロジーの活用とその効用を“伝える”ことの価値

今回話を伺った原田氏、寺島氏はTeacher Engagementという職域で、教員を対象とした「MIEE」の運営をはじめ、現場の教育実践サポートに関わっている。MIEEはワールドワイドで6年ほど継続しているプログラムで、ここ日本では昨年100名を超えるMIEEが誕生した。

MIEEの仕組みは認定を希望する教員が公式サイトから申し込むことで審査が行われる。応募条件は文部科学省が定める教育機関(自治体・行政の学校、一部大学)の教員や教育に携わる自治体の職員であること。

その認定の基準は大きく2つある。1つは「教育の中でテクノロジーを活用している」こと、もう1つは「その活用内容を世の中に発信している(または発信することに取り組んでいる)」こと。

原田氏はこの認定基準と現状について次のようにコメントした。

「今の日本の教育分野は、時代の流れと相まって積極的なテクノロジー活用が進んでいる状況です。ですから、前者の認定基準については(応募する教員の多くが)満たしやすいと言えるでしょう。一方、後者の、その内容を発信する、という点についてまだまだ支援を強める必要があります。さまざまな理由が考えられますが、その中でも“発信することを重要視している教員は限られている”ことが大きな原因として考えられます。そもそも教員自身が校外に情報発信することは業務内では限られていますし、また、そのための機会がほとんどなかったからです。

私たちは、教員の皆さんが教育に活用しやすいテクノロジーの提供はもちろんのこと、その成果や実績を発信しやすい環境整備に注力しています」。

なぜ、マイクロソフトが教員の発信力に注目するのか、その点についてはこう述べている。

「ITやインターネットの世界ではより簡単に、そして重要になった“参加すること”“発信すること”の意義、その価値は年々大きくなっており、それは教育の分野でも同様です。MIEEはその1つの形であり、MIEEという認定基準に発信することを盛り込んだのもそのためです。まだまだ浸透しているとは言い切れませんが、他の教員の教え方や授業の内容というのは、実は教員自身にとって非常に参考になることが多いですし、それがまた新しい教育活動にもつながるからです。

私たちマイクロソフトは、その発信部分について積極的にサポートするために、このような仕組みを準備しています」。

Microsoft Educator Communityのサイトでは、ワールドワイドのMIEEのプロフィールを公開しているとともに、登録されている教員同士はもちろん、外部の人間も誰でもMIEEにコンタクトできるようになっている。

マイクロソフト認定教育イノベーター(MIEE)
https://education.microsoft.com/microsoft-innovative-educator-programs/mie-expert

MIEEにはグローバルティーチャー賞トップ50の教員も

2017年度に日本で認定されたMIEEは110名ほどいる。その中の1人には、教育界のノーベル賞とも言われているグローバルティーチャー賞トップ50に選ばれた滋賀県立米原高等学校の堀尾美央先生も含まれている。

堀尾先生は、「外国人より猿の方が多い環境にいる生徒たちに、海外の生徒とかかわる機会を増やしたい!」という想いから、滋賀県の自然豊かな土地にある米原高校で授業や部活動等にSkypeを活用し、海外の学校との交流を実践したことが評価された。

他にも非常に先進的で多様な取り組みを行っている教員が多くいるので、興味のある方はぜひプロフィール欄をご覧いただきたい。また、前述のMIEEのサイトには、自身の授業で使用した資料を公開している教員もいるので、今後の授業の参考にもなるはずだ。

ITを正しく活用し、環境の変化に対する意識改革を目指す

ここ数年で言われているとおり、IT/インターネットの登場は社会や生活を大きく変えた。それは教育分野もまた同様である。

「世の中の変化とともに教員のITに対する感情も日々変わってきています。日本の今の教育システムというのは、非常に完成度の高いものです。チョーク(黒板)&トーク(話す知識)があればどこでもできる、という仕組みになっています。ですから、これまで教育に関わってきた立場の方からすればわざわざIT/インターネットを使う必要はないと考える人もいるでしょう。

しかし、IT/インターネットはチョークや黒板の置き換えではありません。IT/インターネットがもたらすもの――それは社会変化です。社会が変化すれば当然ながら教員が教えるべき内容も変わります。今、教育の世界にもその意識を持つ人たちが増えてきた、私自身実感しています。

社会に開かれた教育課程が重視されるこれからの学校での学びの活動では、IT/インターネットを活用した教育環境は、非常に重要です。そうなると、教員の役割も変わるはずです。これまで求められていたように教科書に載っている内容や自分が知っている知識を教えるだけではなく、生徒自身が自ら主体的に学ぶ環境としての教室を整備する、言わばファシリテーターとしての役割が求められていくでしょう。

さらに、今の時代、子どもたちがコンピューターやインターネットの活用に慣れている分野も増えていますし、そういった子どもたちが現代社会で学んでくる技能を教室で活かさない手はないと思います。こういった状況をふまえると、今後、教師も児童生徒もクラスや教室といった1つのチームを成功に導く仲間として協力しあうことが、日々の学習活動自身となるような授業運営も出てくると思います。

私たちマイクロソフトは、そうした時代に合った教育に対し、教員の皆さんがより良い学びの活動を実現できるよう、さまざまな角度からのサポートを最大限行ってまいります」(原田氏)。

教育分野の最前線にいる立場から、まさに今感じている教育の課題と可能性について話を伺うことができた。

IT/インターネットが教育の世界にもたらす効果は、この先もまだまだ大きくなるはずだ。

パブリックセクター統括本部文教本部の原田英典氏(左)、寺島つむぎ氏(右)

 

マイクロソフト認定教育イノベーター 2018年度プログラム

2018年4月23日より、マイクロソフト認定教育イノベーター 2018年度プログラムの募集が始まります。

対象者

日本国内の初等中等教育および特別支援教育を行う学校にてICT活用の実践を行っている教育関係者

応募条件

マイクロソフト認定教育イノベーター 2018年度プログラムでは、下記の条件を満たすICT活用を実践している教育者を対象に募集を行います。

  • Microsoft Innovative Educator バッジを取得済みであること
  • 学習者はICTをその操作の学習だけでなく、他の様々な学習活動に活用していること
  • 実践だけでなく、他の教育者への情報発信、実践共有などについて前向きなこと

 

募集期間 2018年4月24日(火)から2018年7月14日(土)中
選考結果の通知 2018年8月24日(金)
活動期間 2018年9月1日(土)から2019年8月31日(土)まで

 

詳しくは公式ページを参照のこと。

マイクロソフト認定教育イノベーター 2018年度プログラム
https://education.microsoft.com/mieej_2018

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