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Artを加えてActiveに!みんなで考えるこれからの教育――みんなの教育改革実践フォーラム2018レポート①

2018年11月、EducationTomorrowのイベントが開催

2018年11月25日、東京都にある聖徳学園中学校・高等学校にて、eポートフォリオの実用性・可能性、そして、これからの日本における教育について、みんなで考えるイベント「みんなの教育改革実践フォーラム2018」が開催された。

みんなの教育改革実践フォーラム2018
https://esibla-forum2018.peatix.com/

本イベントは、私たちEducationTomorrowにも非常に関わりのあるメンバーが参加しており、まさにEducationTomorrowが伝えたいこと・目指したいことを「カタチ」にした場となった。

今回から3回に分けて、当日の様子をお届けする。

イベントは、今回の会場を提供する聖徳学園中学校・高等学校 伊藤正徳氏の挨拶で幕を開けた。

オープニングセッション:STEAM教育と脱ガラパゴスの教育改革の実現に向けて

続いて、主催の1つ、日本アクティブラーニング協会理事長でもあり、本メディアの運営母体サマデイグループCEOの相川秀希氏と、日本学術振興会顧問・日本アクティブラーニング協会会長の安西祐一郎氏の2名により、オープニングセッションが行われた。

Artを取り入れることが、これからの教育のカギ

オープニングセッションのトップは、日本アクティブラーニング協会理事長相川秀希氏。

最初に登壇した相川氏は、トークを進める前にまず、本メディア編集長でもある小菅将太氏を招き入れ、小菅氏に季節に合わせたXmasソング3曲のピアノ演奏を促した。

なぜいきなりピアノ演奏が始まったのか?――聴講者の多くがそう思ったに違いない。筆者自身、正直驚いた。が、このあとに続く話でその理由がわかった。

相川氏は、演奏が終わったあとに、これまでのノーベル賞受賞者を例に挙げ、受賞者たちが受賞した専門分野以外に持っている特技や能力について触れた。これまでノーベル賞各賞の受賞者たちには、皆、共通項があるというのだ。

それは、舞台芸術であったり、工芸であったり、絵画であったり、音楽であったり。

相川氏が調べた結果によれば、最も受賞確率が高い異分野は「舞台芸術(22倍)」、ついで「文学(12倍)」「工芸(7.5倍)」「絵画(7倍)」「音楽(2倍)」と、ノーベル賞の受賞確率の高さと、これらの分野――いわゆる芸術分野との相関関係を紹介した。

「今、世界、とくに教育先進国と言われているアメリカでは、STEM(Science, Technology, Engineering and Mathematics)教育からSTEAM教育へシフトしています。この追加されたAが意味するのは”Art”、つまり、芸術分野なのです」と、ノーベル賞受賞者の例と合わせて、今、そして、これからの教育に求められる要素として芸術の必要性を強く説いた。

さらに「アートは自分たちの偏見を打ち破るツールかもしれません」と、限界を迎えていると言われる現代教育の壁、偏見を打ち破るためにもアートはもっと取り入れていくべきことを強調し、現在、相川氏やこのあとに続く安西氏らが中心となり、日本アクティブラーニング協会が開発する「非認知能力 25の指標」を紹介し、安西氏へバトンタッチした。

評価の新指標の開発が最優先、その先にあるコミュニケーションの本質

相川氏からバトンを受けた安西氏はまず、現在、日本でも積極的に取り組まれている高大接続改革を紹介した。

日本学術振興会顧問・日本アクティブラーニング協会会長の安西祐一郎氏。

「高大接続改革はまさに教育改革と同義です」と、その重要性を訴えるとともに、「よく高大接続改革や教育改革の話が出ると“今までの知識や技能が無駄になる”といった極端な論調を耳にしますが、そんなことはまったくなく、今までの知識や技能に加えたり、変化・進化させることが改革につながるのです」と、最近の世の中で耳にしがち・目にしがちな極端な対比・対抗軸に対して釘を刺すメッセージを伝えた。

さらに「皆さん、最初にピアノ演奏があり驚いたでしょう。私も驚きました。さらに相川さんがどのぐらい話すかわからなかったので、時間配分も今から考えているところです」と、会場から笑いを取るとともに、オープニングセッションが予定調和ではないことをさり気なくアピールした。

その上で「(いつでも想定外のことが起きる可能性があるとして)これからの教育に求められるであろう、臨機応変・自由自在・創造的に活用する思考力・判断力・表現力は、私たちにも必要なのです。そして、そのためには、やはりアート的思考・アプローチが大事ですね」と、安西氏もまた、STEAM教育の“アート”部分の重要性を、違った表現で強く訴えた。併せて、アートのアプローチに則った評価の新指標開発に、いち早く取り組むべきであると、教育関係者に喚起を促した。

10年後にとくに必要になるであろう、教育内容を具体的に説明する安西氏。

そして、現状の課題や具体的な施策についても触れ、最後に「これからの教育では、技能や知識を伝える、教えるだけではなく、相手の気持ちを考えながら、心を感じながら、コミュニケーションを取ることが求められていく」と、多様な時代、さまざまな技術が日々登場する、答えのない時代だからこそ必要となる、人間の素養を「教育のカギ」とし、トークを締めくくった。

アートからアクティブへ

今回はまず、オープニングセッションの模様をお届けした。相川氏、安西氏の話は、トーンやストーリー構成は違えども、本質的な部分は同じように感じられた。それは、これからの教育では芸術性(アート)が必要だということだ。

芸術性とは、誰かに教えられて身に付けられるとは限らず、生徒、そして、教育者いずれの立場でも、自らが能動的に取り組むべきものであり、そうした環境を整備していくことこそが、これからの教育のカギを握っているのではないか、と2名の話を聞いて筆者は強く感じた。

また、ここ数年、日本で言われているアクティブラーニングの“アクティブ”を、より一層価値のあるものにするためには、教育の世界にも“アート”を取り込んでいくことが、これからの教育関係者に求められているように思う。

後編では、各校におけるeポートフォリオの導入事例、また、アートを盛り込んだ授業内容の紹介などについて取り上げる。

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