2018年1月、さまざまなクリエイティブツールの開発・提供を行うアドビ システムズ株式会社(以降アドビ)は、慶應義塾大学SFC研究所ファブ地球社会コンソーシアム内の高大連携教育ワーキンググループの企業メンバーに参画し、1月16日から提供が開始された「授業レシピ」の開発に加わった。
ファブ地球社会コンソーシアム
https://www.fabsteps.org/
授業レシピとは
今回の発表により、大学生向けの授業案と高校生向けのワークショッププログラムの2種類の「授業レシピ」が提供された。この授業レシピは、名前のとおり、授業のためのレシピで、教育機関が授業を行うにあたり、役に立つノウハウが体系的にまとめられている。
2018年2月16日現在、次の3つのレシピが公開されているので、興味のある方はぜひ見てもらいたい。
- SGH SUMMER CAMP 2017 授業レシピ(福岡雙葉学園)
- GIGA PROGRAM Experience & Engagement Design(慶應義塾大学SFC)
- 非デザイナーのためのデザイン教室(FAB 3D CONTESTとの連携)
インターネット時代の創造的問題解決能力への取り組み
さて、同じくアドビが1月11日に発表した「学校現場における『創造的問題解決能力』育成に関する調査」によれば、教育関係者の80%以上が「創造的問題解決能力の育成のために教育課程の改訂の検討が必要である」と回答したそうだ。
この調査でアドビは「創造的問題解決能力」を次の4つのカテゴリとスキルでまとめている。
- 分析的思考と抽象的思考
- コラボレーションとコミュニケーション
- 臨機応変な対処
- デザイン
2018年現在、インターネットが普及し、スマートフォンの浸透によって、誰もがいつでも手軽にコミュニケーションを図り、そして、真贋含め、さまざまな情報に到達できる時代となった。また昨年2017年は実用的なAI元年とも呼ばれたように、これからは、AIを交えた社会が一般化していくだろう。
結果として、上記のカテゴリやスキル、1つ1つに対して、インターネットやITが補足してくれる環境が整備されつつある。とくに2番目のコラボレーションやコミュニケーションのコストに関しては大幅に下がった。
一方、視点を変えると、インターネットやITはあくまで補足ツールであり、何かを生み出すには人間自身の自発的な考え・行動が必要となる。つまり、これまで以上に能動的に学習したり行動しないと、「創造的問題解決能力」が衰えてしまう危険性があると筆者は考えている。先ほどの調査結果において、教育関係者の80%以上が「創造的問題解決能力」を育成するための教育課程が必要と答えたのは、まさにその裏付けとも言える。
インターネットがなかった時代においては通用していた教育方法は、今では通じない部分も出始めている。だからこそ、先に紹介した「授業レシピ」の開発は、教育現場とIT企業がタッグを組んだ、とても健全な取り組みだ。この「授業レシピ」を道具として、これからの学生たちの「創造的問題解決能力」がより一層育成されることは、これからのインターネット社会において非常に大切なことだ。
今後、本メディアでは、実際に授業レシピを撮りいている現場を取材し、改めて読者の方々へ報告したい。