国内のEdTechの現状とこれから――近未来教育フォーラム2018レポート

国内のEdTechの現状とこれから――近未来教育フォーラム2018レポート

2018年11月22日、「近未来教育フォーラム2018」が開催された。本メディアでは、一昨年昨年に続き、今回もまた取材を行った。今回はその中から、EdTechトラック「EdTechは教育に何をもたらすのか?~大きく変わる世界の教育と日本のこれから~」の模様をお届けする。

デジタルテクノロジーとイノベーターの創造性で教育を変える

スピーカーはデジタルハリウッド大学大学院教授・一般社団法人教育イノベーション協議会代表理事の佐藤昌宏氏。佐藤氏はEdTechを「テクノロジーを活用した教育のイノベーション」として、単にテクノロジーを活用した教育ではない、もっと広義で本質的な意味で捉えている。

こうした考え方に基づいて、これまでEdTechをテーマとした各省庁の委員などをつとめながら、EdTechに関連する各種セミナーやイベントを開催してきた。今回のセッションでは、自身の経験をふまえながら、EdTechに取り組む意義、これからの日本の教育関係者が目指すべき指針、そして、求められる人材像について語った。

EdTechの今

佐藤氏はまず、今年6月に政府が発表した「Society 5.0」の話題を取り上げた。これは、日本が提唱する未来社会のコンセプト。 科学技術基本法に基づき、5年ごとに改定されている科学技術基本法の第5期という意味合いも含め、このような名称になっている。ここで「未来投資戦略2018」がまとめられ、閣議決定がなされたのだが、その中に「EdTech」という単語とともに、EdTechの意義や目的について触れられていることからも、「EdTechは、日本が国として注目しているコアコンセプトであり、これからの教育にとって欠かせないアプローチである」と佐藤氏は、EdTechの位置付けと必要性を始めに説明しました。

EdTechに関しては、下記動画も併せて参照してほしい。

何が変わるのか(メリット)

ここで佐藤氏は、世界のEdTechの潮流をいくつか紹介した。EdTechの動きは日本よりも、世界各国で先に進んでいることも多く、そのトレンドは大きく次の2つに分けられる。

1つは「ボトムアップ型(経済的・環境的教育格差の解消)」、もう1つは「ハイエンド型(より進んだ高等教育)」である。

(佐藤氏発表資料より引用)

ボトムアップ型の事例としては、MOOC(Massive Open Online Course:大規模公開オンライン講義)による、学習機会の拡大やクラウドファンディングを利用した経済格差による教育解消である。

一方のハイエンド型は、プログラミング教育やSTEM教育といった、次のテクノロジーを生み出す知識・技術、その先にある創造性を身につけるための教育手法・環境の整備である。

すでに本メディアでもいろいろと取り上げている中、今、こうしたボトムアップ・ハイエンド両方のアプローチでEdTechの動きが活性化しているのである。

EdTechに必要なA

そして、佐藤氏はこう続けた。

「EdTechが進むことで、教育環境が整備され(ボトムアップ型)、さらに先に進むための教育(ハイエンド型)が求められていきます。このとき、ハイエンド型で紹介したSTEM教育というのは、テクノロジーを活用した問題解決とも言いかえられるわけですが、見方を変えれば、これはプログラミングと同様に再現性があります。つまり、真似のできる知識であり、技術なのです。
しかし、EdTechが目指すものは、そういったスキルセットだけではなく、これからの時代や社会を作り出す“創造性”を身に付けてもらうことです。これが、今、米を中心に注目を集めている“STEAM”教育(STEA+A(Art))なのです」

今年の近未来教育フォーラム2018のテーマは「The ART into Future」。キーノートでも、Art(アート)の重要性について取り上げられていた。佐藤氏は、その流れも汲み取りながら、これからの教育、教育で目指す創造力の育成においてアートが欠かせない要素になる、と力強くコメントした。

奇しくも、先日のみんなの教育改革実践フォーラム2018のオープニングセッションでも取り上げられていた「Art」が、本フォーラムのテーマとして掲げられていたが、2019年以降の教育改革では「テクノロジー」「アート」、この2つの要素が中心となって、新しい教育の世界が生み出されていくに違いない。

また、佐藤氏は具体的なテクノロジーとして「ブロックチェーン」を取り上げ、次のようなスライドとともに、教育利用におけるブロックチェーンの可能性を紹介した。

(佐藤氏発表資料より引用)

 

これから求められる教育イノベーター

以上、佐藤氏のセッションは、EdTechをテーマに、今とこれから、そして、必要なこと、取り組むべき課題について取り上げた内容だった。最後に佐藤氏は「このような動きになっている理由は、今、教育の世界で仕組みのリデザイン(再設計)が求められているからです。EdTechはそのリデザインを実現するために必要な人材、それは教育イノベーターだと考えます」と、教育改革を実践する、教育の世界におけるイノベーターの登場が求められていることを投げかけ、セッションを締め括った。

EducationTomorrowでも、さまざまな教育改革やそれを実現している人材を数多く取り上げてきている。ぜひ、この流れに乗って、本誌メディアに登場する人材はもちろん、読者の中からも、一人でも多くの教育イノベーターが登場することに期待したい。

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