2019年7月29日、東京大学 伊藤国際学術研究センターにて、Adobe Education Forum 2019が開催された。Adobe Education Forumは毎年夏に開催され、今年で7回目。今回も多くの教育関係者が詰めかけ、会場定員250名すべてが埋まる盛況となった。
Adobe Education Forum 2019
https://www.adobe-education.com/jp/aef2019/
今回のテーマは「創造的問題解決能力を育むSTEAM教育」
Adobeが考える「創造的問題解決能力」とは、創造性に富んだ革新的な方法で問題や課題に取り組む手法を指す。
世の中の仕事の多くが、機械(Machine)に代替され自動化される将来が確実視される中、創造性を用いて問題解決を図る、という機械にはできない人間ならではの能力の重要性が今後高まっていくため、テーマとして取り上げられた。
そしてSTEAM教育とは、一般的には、Science(科学)、 Technology(技術)、 Engineering(工学)、Mathematics(数学)を統合的に学習するSTEM教育に、 Art(芸術)を加えた教育手法といわれているが、Adobeでは、AはLiberal “A”rts(幅広い基礎教養)と提唱する。さらに問題解決のプロセスにおいては、すべての分野の知識を横断的に組み合わせるCreativity(創造性)が重要である、という見解を示した。
PhotoshopやIllustratorなどの創造性を刺激するAdobeのデジタルクリエイティブツールを用いながら、創造性を育ませるSTEAM教育を実践している企業や学校、学生から、それぞれの取り組みや事例に関する発表がなされた。
コンサルタント業界から見たビジネスにおけるCreativityの重要性

デザインコンサルタント事業を多方面の業界にグローバル展開するIDEOは「Creative Confidence」(創造性に対する自信)を提唱し、ビジネスにおいてもCreativityの重要性が高まっていることを解説した。

「VUCA」の中でも、Uncertainty(不確実性)が、ビジネスにおいて最も頭を悩ます課題と言われている。
IDEOもクライアントから「顧客の将来的なニーズを知りたい」といった主旨の要望を受けることは多いが、どんな業界でも変化が激しすぎて、3年後の未来ですら予測が難しい。
この状況下で、未来を予測する最良の方法は、自ら「未来を創ること」であり、自発的に周囲の環境に働きかけることで、不確実性をコントロールできる可能性が高まる。
ビジネスの場でCreativityの注目度が高まっているのは、不確実性への最良の対策手段であるからだと野々村氏は語った。
またIDEOが考える、Creativityを発揮しやすくためにすぐに実践できる “コツ”も紹介された。

そのコツとは「実験上手になる」こと。
つまり、ニュージーランド航空との事例のように、プロダクトを完成させるまでの実験段階では、「小さく 安く 速(早)く 多く」というモットーを意識して、資金的にも時間的にも負担をかけない方法で、トライ&エラーを繰り返すことだ。
試行錯誤の回数は多ければ多いほどよく、その積み重ねが創造的な考えを見出すことにつながる。
IDEOの提唱するCreative ConfidenceやDesign Thinkingなど、詳細を知りたければ、野々村氏の著作『0→1の発想を生み出す「問いかけ」の力』をチェックすることをお勧めしたい。
高校生・大学生対象の実践的なワークショップ
ちなみに、フォーラムの講演会場の外では、高校生・大学生が実際にAdobeのクリエイティブツールを用いて動画やポスターなどを制作する3つのワークショップ(下記)が、講演と同時並行で開催されていた。
- 東京大学のキャンパス案内プレゼン動画を、Premiere Rushで制作する
- 今ある社会課題に対する解決方法をグループ内で討議し、得られた結論をSpark Postでビジュアルプレゼンテーションにまとめる
- IllustratorやPhotoshopを使って、研究成果の発表ポスターを制作する
フォーラムの参加者たちは、講演の休憩時間にワークショップに立ち寄り、学生たちにどのように成果物を作ろうとしているか、課題への取り組み姿勢やツールの使い勝手などについてヒアリングしていた。