前回に続いて、Adobe Education Forume 2019の模様をお届けする。
小・中・高・大まで、発達段階別のデジタルクリエイティブ教育の実践事例
基調講演の後には、アプリ開発や地域の振興事業支援、映画のポスター制作など、企業と学校、学生が連携したさまざまなデジタルクリエイティブ教育の実践事例が、小・中・高・大と発達段階別に紹介された。
どの事例でも共通していたのは、成果物の制作に携わった学生たちが、デジタルツールを用いて、自分のアイデアを形にしようとCreativityを発揮していたことだ。
小学生が制作するハイクオリティなアプリ紹介
まずは、当メディアでも以前取り上げたことのある「Kids Creator’s Studio」で、本格的なプログラミングとデザインを学ぶ2人のプレゼンテーションが発表された。


2人ともプロジェクト参加当時は小5で、それぞれが制作した高いクオリティのアプリ、開発から得られた経験をまとめたプレゼンテーションが発表された。
地域の課題を中学生がITを駆使したアイデアで解決!
続いては、ライフイズテック株式会社が展開する、地域の中高生向けIT教育事業プロジェクト「Creative Project Based Learning」。
中学生たちが、地域の課題に対して、アプリ開発やWeb、映像制作、デザインなどの、IT技術を駆使しながら解決に取り組むプロジェクトで、全国36自治体と連携して展開している。
当プロジェクトは経済産業省「未来の教室」実証事業の1つとして実施された。
今回のフォーラムでは福岡県嘉麻市、桂川町の中学生たちからプレゼンテーションがなされた。
嘉麻市、桂川町は、どちらもかつては炭鉱で栄えた地域であったが、現在は人口減少に悩む、日本の地方によくある課題に直面している市町だ。
市のプロモーション動画に地元のゆるキャラを起用する、町にある古墳を「ホテル」に例えて古墳の魅力をわかりやすく伝わるアプリ、など中学生ならではの柔軟なアイデアで、地域の課題へ取り組んだ様子が紹介された。


「世界を変える映画」を高校生の視点で考えポスターで表現
高校生3組と大学生10組が、架空の「世界を変える映画」を設定し、その宣伝ポスターを作るプロジェクト「Make It! Student Creative Day」が2019年2月に初開催された。
このプロジェクトに参加した高校生たちが、ポスター制作の様子やAdobeのデジタルツールの使い勝手についてプレゼンテーションした。



大学で実施されるデジタルクリエイティブ教育
本フォーラムの最後には、アドビシステムズ株式会社 デザイナー デジタルクリエイティブ講座講師 近藤祐爾氏、国立大学法人 千葉大学 副学長 小澤弘明氏から、大学でのデジタルクリエイティブ教育への取り組みについて講演がなされた。
北海道大学、山形大学、筑波大学、千葉大学、横浜国立大学で実施される「デジタルクリエイティブ基礎」講座についても概要が説明された。
講座では、Adobe Creative Cloudのツールを活用して、タイポグラフィーやメディアへの最適化方法など、基礎的・実践的なデザイン手法について学習できる。
今後の社会で重要視される創造的問題解決能力を養える教育を、Adobeと大学が協力し合いながら実現する方針だ。


デジタルの良さ~多くの試行錯誤ができるからこそ生み出せるCreativity
創造的問題解決能力は、すでに実社会でも求められる重要な能力だろう。
この創造性は、基調講演での野々村氏、最後の講演での近藤氏からも述べられたように、多くの試行錯誤ができる環境だからこそ生み出せる能力ではないか。
Adobeのデジタルツールは、アナログな方法よりもはるかに“やり直し”が容易なため、試行錯誤の回数を増やしCreativityを発揮するための強力なサポートになる。
今後もAdobeが取り組む、教育環境のデジタルツールの普及活動に注目していきたい。