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2018~2022年に実施、教育のICT化に向けた環境整備5か年計画の今とこれから~「教育サミット」東京大会レポート

2018年2月28日、全国ICT教育首長協議会が主催する「地域サミット」東京大会が品川プリンスホテル(東京都品川区)で開催された。

「地域サミット」は、文部科学省が推進する「学校におけるICT環境の整備について(教育ICT化に向けた環境整備5か年計画)」に基づく地方財政措置を活用した、教育のICT化の先進事例や環境の構築方法を学ぶための勉強会で今年初めて、大阪、福岡、東京の3都市で開催された。

東京大会には、全国の地方自治体や教育委員会など、教育現場のICT化について関心や問題意識の高い教育関係者が100名以上集まった。

ICT環境整備における”今“の課題と取り組み方


 
基調講演では、文部科学省 髙谷 浩樹 情報教育・外国語教育課長が、2020年度より実施される「新学習指導要領」にも盛り込まれている、学校のICT環境整備を推進するためには、現在の日本の教育現場のICT化がどのような状況にあり、課題にどのように取り組んでいくべきか解決策を述べた。

まず、日本の教育現場のICT化の現状は、OECD諸国と比較しても遅れており、「危機的な状況」にあることを強調した。

たとえば、教育用コンピューターは、3クラスに1クラス分の普及を目標としているが、5.6人/台しか普及していない。無線LAN、電子黒板の整備率も目標では100%と設定しているが、それぞれ34.5%、26.8%と目標から遠く及ばない。このように「目標に対して、実現できていない点と、まず向き合うことが大事」と、高谷氏は述べた。

また、都道府県別でICT化の整備状況を見ると、教育用コンピューター普及率が、最低で7.9人/台(埼玉県)、最高で1.8人/台(佐賀県)と地域によって差が大きい点も問題視している。

文部科学省の地方財政措置は、2018~2022年度の間、単年度1,805億円が投じられているにもかかわらず、その財源が有効に活用されていない現状を明らかにした。

政府は対応策としてこれまでにも、ICT環境整備の状況を市区町村単位ごとに公表(整備状況の見える化、各自治体の問題意識を高める)、「全国ICT教育主張協議会」と連携した全国の首長へのPR活動、「ICT活用教育アドバイザー」の派遣などに取り組んできた。

さらに今後は、全教育委員会に対し、自治体で整備が進まない要因の調査分析をした上で、文部科学省、経済産業省、総務省が連携して、必要十分な機能を有するICT機器などの整備について、できる限り費用を低減して調達できるための方策の提案を検討しているという。

その方策は「地方自治体のための学校のICT環境整備 推進の手引き」としてまとめ、文部科学省のホームページでPDFで公開している。

佐賀県多久市、石川県加賀市の取り組み

続いては、実際に教育現場のICT化に取り組む、2つの自治体の首長の講演が開かれた。

佐賀県多久市:ITベンダとの協業による、現場に即したICT教育を目指して


 
全国ICT教育首長協議会の会長でもある、佐賀県多久市 横尾 俊彦 市長は、人口減少に悩む日本の多くの地方自治体と同じく、多久市がおかれた厳しい教育現場の現状から説明した。

多久市は、人口規模が771位(日本の市、885のうち)と小さいため財政事情も厳しい。超過勤務時間が月80時間を超える教師が1/4以上もいて、決して良いとは呼びない労働環境であったという。

そこでSoftbank C&Sと日本Microsoftとも提携した、全国初の「学習系・校務系のフルクラウド化」に取り組み、現場の教師が常に最新情報を確認できる教育環境のICT化を実現。
煩雑な業務の時間短縮につながり、多久市内にある小中学校3校の教師の超過勤務時間を15%以上削減することに成功した。

横尾市長は、多久市に根付きながら世界で活躍できるハイスキル人材を育むことを目指し、自己肯定感に満ちITを駆使した学び方を身につけた子供を育みたい、と力説した。

石川県加賀市:手を動かしながら学べるICT教育


 
石川県加賀市 宮元陸 市長は、加賀市が行っている先進的なICT教育の施策を紹介した。

2016年にはIoT・AIを利用した産業活動を創出・活性化、2017年にはシングルボードコンピューター「Raspberry Pi」を希望者全員に無料配布するIT教室、2018年には、ブロックチェーン都市宣言、スマートインクルージョン推進宣言、プログラミング教育に関する連携協定(みんなのコード)など、国内初を含む多くの施策に取り組んできた。

「教育に贅沢はない」と語り、今後も積極的にICT教育に取り組んでいくことを熱弁した。

Surface Goを使った体験学習も


 
勉強会の最後には、子供たちが受けるデジタルデバイスを使用した授業の体験講習が開かれた。

参加者用のテーブルには、1人1台分のSurface Goが設置されていた。

スタイラスペン付きでノート代わりになり、クラウドを活用すれば遠隔地にいる子供にもデバイスを通して課題を与えることができる。

教育用に適した機能が一通り揃ったデバイスが、現在では5万円を下回るほど安価になっており、参加者にもデジタルデバイスの積極的な導入を勧めていた。

5か年計画の継続に期待

以上、「地域サミット」東京大会の模様をお届けした。今回は初開催でもあり、まずは、それぞれの立場で考えた課題の洗い出しが行われた場となった。まだ残り4年弱ある中で、それらの課題をどのように解決していくのか、また、原理原則ではなく、実際の教育現場に即したICT教育の整備がどのようになっていくのか、引き続き、本メディアでも注目していきたい。

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