SDGs JAM SESSION ジャズの殿堂でSDGsと非認知スキルを考える

SDGs JAM SESSION ジャズの殿堂でSDGsと非認知スキルを考える

11月26日、東京にあるジャズの殿堂で「SDGs JAM SESSION」と題する教育イベントが行われた。主催は、これまで「教育ポートフォリオ研究会」や「みんなの教育改革実践フォーラム」等を開催してきた日本アクティブラーニング協会。MINKYO(みんなの教育改革)の一環として実施された今回のイベントにも、全国の民間企業、教育機関から250名を超える参加者が集まり、ステージやジャズセッションを通じて、SDGsとこれからの人財育成、とりわけ「非認知スキル」の重要性について考える機会となった。

SDGs JAM SESSIONは都内にあるジャズの殿堂で行われ、来場者270名がディナーとドリンクを楽しみながら参加した。

なぜジャズと教育の組み合わせなのか?

SDGs JAM SESSIONは、MINKYOの一環として行われた。このMINKYOは、「教育のレギュラトリーサンドボックス」を実践するプロジェクトとして、全国の有志が集い、様々な活動に取り組んでいる。

レギュラトリーサンドボックスとは、既存のルールにとらわれずに、新しいアイディアや技術の実証実験を行えるようにする制度のこと。既存の法律や条例は、AIやブロックチェーンなど、新規のテクノロジーが登場する前に定められたもので、当然ながらその扱いについての取り決めはない。そこで、そのような取り決めを行おうとしても、議論している間に、技術はさらに進歩していく。ルールが決まるまで待っていると、適用できるのは世代遅れの技術となってしまう。レギュラトリーサンドボックスはこうした事態を防ぐための措置だと言える。

MINKYOプロジェクトは、教育分野において、このレギュラトリーサンドボックスを実行しようという取り組みだ。自由度の高い実験場に有志が集まり、これまでにない教育手法やシステムを試し、その過程で得られた知見を共有している。

SDGs JAM SESSIONは、誰もが知るジャズの殿堂で、世界的にも活躍するプロのジャズアーティストの演奏を交えて行われた。一般的に、教育イベントとなれば、壇上で事例発表があり、質疑応答があるなど、一定のトーン&マナーがあるものだが、そういった「常識」さえも変えていこうという試みだ。また、一見無関係にも思えるような要素をつなぎあわせた場に何が生まれるかを参加者全員で体感しようというねらいがあった。

世界的に活躍するジャズピアニストの平戸祐介氏がバンドを組んで演奏を行った。

ジェフリー・サックス博士によるSDGs認定プログラム

SDGsカリキュラム(円盤型教材)を活用した実証研究の様子。非認知スキルを発揮する脳の活動状況をモニタリングしている。

このSDGs JAM SESSIONは、SDGsを策定・牽引するジェフリー・サックス博士から認定を受けたSDGsカリキュラム(円盤型教材)を活用して行われ、参加者には修了証が手渡された。

円盤型教材では、絶対的な正解のない想定外の問題が設定されている。この問題に挑む過程では、正解も不正解もなく、一人ひとり多様で個性的な解答が生み出され、その結果、思いもよらない発想との出会いにつながる。

かたや、SDGsは、従来型のアプローチだけでは解決できない目標群であり、イノベーティブな発想や行動が求められる。したがって教育においては、これまで通りの学力を伸ばすだけでなく、人財の隠れた才能を開花させるような施策が必要だ。その点、円盤型教材を使って行うSDGsカリキュラムは、個性的な発想や表現を鍛えることができ、いわば「SDGs人財」を育成するプログラムとなっている。これが認定の趣旨だ。

日本アクティブラーニング協会は、この一人ひとりの個性にあたる力を「非認知スキル」と位置づけて、実証研究も行っている。この実証研究は、非認知スキルの可視化をテーマとしたもので、内閣府のSIP(戦略的イノベーション創造プログラム)の一環として、東京大学、三浦学苑と共同で進められている。

SDGsと非認知スキルとジュディ・ガーランド

会の冒頭では、竹中平蔵氏がキックオフスピーチを行い、次のように語った。

国連に行くとグローバルウォーミングとは誰も言っていない。グローバルクライシスと言われている。私たちはSDGsを真剣にとらえなければならない。地球環境が大きく変化し、私たちは目の前に重大な問題を抱えている。これらは知識で答える問題ではなく、私たちの頭脳と心を総動員し、アクションを要する、より次元の高い問題としてとらえなければならない。その際にはやはり試験の点数を伸ばすだけではなく、非認知スキルを鍛えることが求められる。
SDGsと非認知スキルの重要性を語る竹中平蔵氏。

今回のSDGs JAM SESSIONは、往年のハリウッドを代表する大女優、ジュディ・ガーランドの生き方を題材として、彼女と関わりの深い楽曲をジャズセッションで演奏する構成となっていた。その理由について、日本アクティブラーニング協会の相川秀希理事長はこのように話した。

ジュディ・ガーランドの歌唱には彼女の生き方が滲み出ている。これを非認知スキルで見立てたり、SDGsの視点からとらえたりすると見えてくることがあるのではないか。非認知スキルもSDGsも、人の人生と一体となっている。これらがジュディ・ガーランドの中にどう息づいているか、自分がジュディ・ガーランドだったらどう生きるかを考えながら参加してみてほしい。アートの力を借りると、こうした言葉にできないことを直に体感できる。

その後、会の進行によって、来場者全員がジュディ・ガーランドの半生を振り返り、彼女が映画「オズの魔法使」で歌った「Over the Rainbow」が披露された。この他、「Let it snow! Let it snow! Let it snow!」や「The Christmas Song」など、クリスマスシーズンおなじみの曲目も演奏された。どちらも第二次世界大戦末期、1945年の真夏に作曲された曲だ。うだるような暑さの中、雪を願う心や、ホリデーシーズンに憧れる思いが名曲をつくりあげたのだという。このような表面的には見えない背景や奥行きが語られながら、ジャズ演奏が展開されていった。

次回の開催は来年11月を予定している。

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