リアルとバーチャルで身に付ける発想力――Nintendo Labo VR Kit

リアルとバーチャルで身に付ける発想力――Nintendo Labo VR Kit

2019年3月、日本のエンターテイメント界のトップランナー企業である任天堂がVR技術を使った新しいあそびを発表した 。それが「Nintendo Labo VR Kit」だ。

Nintendo Labo VR Kit(2019年4月12日発売)
https://www.nintendo.co.jp/labo/kit/vr.html

「Nintendo Labo」は、2018年4月に第一弾となる「Nintendo Labo Toy-Con 01: Variety Kit」が発表され、たくさんのユーザに楽しまれているので目にしたり、実際に体験した読者もいるかもしれない。

そして、今回VRへ参入との話を聞き、任天堂の協力のもと「Nintendo Labo VR Kit」を体験する機会を得たので、その模様を紹介しながらVRと教育について考察する。

Virtual Realityを手軽に楽しめるNintendo Labo VR Kit

今回発表された「Nintendo Labo VR Kit」は、Nintendo Labo第4弾で、VR技術との連動が特徴だ。今回のToy-Con 04「VR Kit」には、次の5種類のToy-Con(自分でつくれるコントローラ)が用意されている。

  • VRゴーグル
  • バズーカ
  • カメラ
  • ゾウ
  • トリ&風

それぞれのToy-Conの特徴に合わせて、さまざまなゲームが用意されている。たとえば、ゾウToy-Conは、象の形をしたコントローラで、鼻の部分が高い自由度で動作し、3D空間に絵を描くことができる。また、トリ&風Toy-Conでは、鳥の視点と風による風圧を組み合わせた、いわゆる4D(デジタル以外のリアルな要素を取り入れたもの)体験ができるコンテンツが用意されている。

このように、今までの枠を越えた、ゲームやコンテンツを提供できるキットとなっている。

教育の観点から見たVR

EducationTomorrowでは、これまでもVRと教育に関わる記事を多数取り上げてきた。ここで、Nintendo Labo VR Kitについても、教育の観点から考察してみる。

視覚以外の感覚につながるVR

まず、ゲームの感覚でVRを体験できること、この手軽さがなんと言ってもNintendo Labo VR Kitの魅力の1つだ。また、従来のヘッドマウントディスプレイによるVR体験と比べて、さまざまなコントローラが用意されており、視覚以外の感覚が活用できる点も見逃せない。

先ほども紹介したように、ゾウToy-Conは、象の形をしたコントローラで、この動きがVR空間内と連動する。視覚以外の手の感覚・腕の感覚とつながっており、バーチャル空間内に物理的な所作を実現できる。これは以前、本メディアで紹介したTilt Brushにも通ずるものだ。

子どもはどうなる? VR教育で揺れる夢うつつ現象

さらに、トリ&風Toy-Conは、視覚に関して鳥の視点(上から見下ろす)に加えて、自分自身の足の動きから風を起こすことで風圧を感じる仕組みが用意されている。筆者は実際体験させてもらったのだが、大げさではなく、視覚(鳥の視点)と触覚(風圧)の組み合わせにより、上空を飛んでいる錯覚、まさに、バーチャルリアリティな体験ができた。

今までこうした体験をするためには、現実空間に道具や環境を用意する必要があったのだが、Nintendo Labo VR Kitがあれば、室内で同様の体験が行えるのだ。

VR空間を創る体験――Toy-ConガレージVR

これらはとても素晴らしい体験ではあるが、誤解を恐れずに書くと、従来のVR技術とその体験の延長と言える。筆者がNintendo Labo VR Kitの中で、とくにインパクトを感じたのが、「Toy-ConガレージVR」である。

Nintendo Laboの既存シリーズに用意されている「Toy-Conガレージ」は、いわゆるビジュアル型のオブジェクト指向のプログラミング言語で、「Toy-Conガレージ」の仕組みは「何をしたら」→「何が起こる」の組み合わせを、Toy-Conとソフトウェアで表現していくもの。目的の動作となるオブジェクトを線でつなぐだけで、Nintendo LaboのToy-Conと連動したソフトウェアが生み出せる。今回発表されたNintendo Labo VR Kitに用意されている「Toy-ConガレージVR」は、それをVR空間内にも対応させたものだ。

Toy-Conガレージの設計画面。直感的なインターフェースなのが特徴。
設計画面では、VR領域を再現しながら開発を進めていくこともできる。

筆者がとくに注目したいのは、これまでのToy-Conガレージでは、コントローラを通じてソフトウェア空間(Nintendo Switch内)の表現を生み出すことが目的だったが、今回は、さらにVR Kitが生み出すVR空間にまで、その表現範囲が広がったことである。

取材時に担当者がものの数分で作ったサンプルアプリ。中央のキャラクターがToy-Conと連動してVR空間で動く。

VRの可能性については、さまざまなところで取り上げられているため、詳しくは言及しないが、Nintendo Labo VR Kitではリアルとバーチャルのつながりを、(利用者に)体験させるだけではなく、創り出させる(発明させる)機能を持っている点が、これまでのVRデバイス・ソフトとは大きく異なるだろう。

リアル×バーチャル、体験と発明から生まれる「学び」

人が何かを学ぶには、自分自身で体験して習得することに加えて、人に教えることで異なった視点から学び得られることが多々ある。

Nintendo Labo VR Kitは、リアルとバーチャルの掛け合わせ、そして、体験と発明という2つのアプローチから、利用者や利用者の周囲にいる人たちへの「学び」を提供する教材になりうるのではないだろうか。そして、そこで得られた学びの先に、人の持つ可能性や発想力が育成されるのではないかと筆者は考えている。

VRに関しては利用者年齢制限(推奨)など、まだまだ、使用にあたって試行錯誤されている点はある。しかし、Nintendo Labo VR Kitの登場により、これまでエンターテイメントの色合いが濃かったVR技術が、その枠を越え、一気に教育の分野に近づいてきたと筆者は感じている。教育関係に関わる方たちには、ぜひ実際の教育現場への導入に向けてさまざまな取り組みを実現してもらえたらと思う。そして、未来に向けてユニークかつ多様な発想力を持つ人材育成につながっていくことに期待している。

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