大人の学習環境について考える~新しい環境に適用するためのオンラインプログラミングスクール「フィヨルドブートキャンプ」

大人の学習環境について考える~新しい環境に適用するためのオンラインプログラミングスクール「フィヨルドブートキャンプ」

大人向けプログラミングスクール

本メディアの記事「社会人を取り巻くプログラミング学習から見るリカレント教育と教育改革のこれから」でも取り上げたように、今、子供向けのプログラミング教室と同様に、社会人向けのプログラミング教室も活況を呈している。

その動きは元号が令和に変わって、さらに加速している。

今回紹介するのは、少しユニークな大人向けのオンラインプログラミングスクール「フィヨルドブートキャンプ」だ。

プログラミング言語コミュニティから、潜在ニーズを顕在化

フィヨルドブートキャンプは、2019年5月からリニューアルしたオンラインプログラミングスクールだ(リニューアル後については後述)。提供するのは、合同会社フィヨルドのエンジニア駒形真幸氏(写真右)とデザイナー町田哲平氏(写真左)。

もともとは両名が所属するフィヨルドのインターンとして実施されていたプロジェクトで、2017年10月19日に開催された「Rails Developers Meetup #6 東京会場(RailsDM)」で発表したことがきっかけで、駒形氏周辺からの問い合わせが増え、事業化に踏み切ったそうだ。

「IT業界、とくにサービス事業者の多くが、エンジニアやデザイナー志望の学生を対象としたインターンを実施するシーンが増えてきました。一方で、未経験者の転職時におけるインターンはまだまだなく、そういった背景からスタートしたのが、フィヨルドブートキャンプです」と、駒形氏は立ち上げた背景を説明した。

「RailsDMで、6年間自社で実施していたインターンシップの仕組みと成果を報告をしてみたところ、“ぜひビジネス化してほしい”“うちに向いているエンジニアがいたら紹介してほしい”と、社外からの反響が思いのほか大きく、事業化に踏み切ったのです」と、事業化に向けての経緯を教えてくれた。

「こういった事業化例は非常に珍しいと思っています。形にできた大きな要因として、駒形も私も開発コミュニティに参加しており、コミュニティ内に潜在化していた人材育成のニーズに対して、フィヨルドブートキャンプがマッチしたことが挙げられると思います」と、実際の現場に漂う、潜在的な人材育成に対するニーズを汲み上げられたことが、非常に大きかったとのこと。

インターンでできること、インターンの壁

実社会の中で学べる強み

フィヨルドブートキャンプの大きな特徴の1つが、知識を学びながら、実社会につながっているという点。

受講生は、フィヨルドブートキャンプで用意された講義内容を、OJT(On-the-Job Training)の形式で学習しながら、実社会へのアウトプットが行える。また、フィヨルドの2名に加えて、企業のエンジニア陣が、新人教育さながらにメンターを務める。講義が進み、応用的な内容に入ると、実際の企業の案件の中での課題を解決したり、実習を行うこともある。

この点こそ、フィヨルドブートキャンプが一般的な社会人向けスクールと一線を画す部分だ。

インターンの壁

ただ、実際に始めてみて、いくつかの課題が出てきたそう。とくに受講者全員がプログラマになれるとは限らないという点。

「全員がプログラミングスキルを持っているわけではなく、場合によっては、ITとはまったく関係ない職業経験者の受講があります。そうした方が受講した場合、全員がプログラマ適正を持っているとは限らないため、スクール受講に対してのミスマッチが起こりうる点は、現状の課題の1つです。また、受講の結果、スキルを身に付けられたとしても業務未経験では、実際に採用してくれない会社が多いという現実がありました」(駒形氏)と、未経験者を対象にしているがゆえの課題について教えてくれた。

もう1つ、町田氏は「サービスリリースの背景として、私たちの人のつながりがあります。企業側から発注していただく場合、私たちのつながりのある会社のみに限定されてしまいます。受講者にとっては、就業先の選択肢が増やしづらいという点が見えてきました」と、コミュニティから発生したがゆえの悩みを述べた。

教育環境も日々変化する時代に

このインタビューを実施したのは、実はまだ元号が平成の4月。取材時には「ゴールデンウイーク明け、新しい元号のタイミングでアップデートしたサービスをリリースします」(駒形・町田)と、展望について教えてくれていた。

そして、去る2019年5月8日、リニューアルした「フィヨルドブートキャンプ」がリリースされた。特徴は月額制2万9,800円で受講できるという点。これまでのものは、企業から発注を受けた場合に募集をしていたため、スクール受講者は無料で学ぶことができた。しかし、前述のような「プログラマ適正問題」「就業先限定問題」という問題があり、受講者(利用者)の満足度を高めづらかったのも事実。

事業化後1年が経過し、改めて発注側(育てたい側)と受講者側(学びたい側)のそれぞれのニーズとゴールを再検討し、受講者から受講料を徴収する月額制モデルへ変更したとのこと。ただし、受講内容については、大幅に変わっていない。興味のある方は、ぜひフィヨルドブートキャンプのサイトを訪問してみてもらいたい。

フィヨルドブートキャンプ
https://bootcamp.fjord.jp/

今回は、ある企業が始めた大人向けのプログラミングスクールについて、誕生から現状までを紹介した。この中で筆者が注目したいのは、「人材育成のニーズは(教育分野に限らず)さまざまなところに潜在的に存在する」ということ、そして、「状況に合わせて教育環境、教育する側・される側の条件を変更する必要性」の2点だ。プログラミングスキルのように、習得する知識そのものの変化が大きく、さらに、今、動き始めている日本国内での働き方改革といった外的要因をふまえると、フィヨルドブートキャンプのように、時流に合わせて学習環境を変化させていくことも、教育分野において求められることなのかもしれない。

新しくなったフィヨルドブートキャンプは始まったばかりである。今後どういった成果が生まれるのか、ぜひまた改めてレポートしたいと思う。

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