モノを拡大して見ることができるiOS標準機能~ICT活用の現場から⑥

モノを拡大して見ることができるiOS標準機能~ICT活用の現場から⑥

駅の改札口やバス停の待合室などで、時刻表をスマホのカメラアプリで撮影している人を見かけたことはないだろうか。

これには人それぞれに撮影した理由があると思う。

時刻表をスマホに保存していつでも確認できるようにしておきたい人。知人や家族に時刻表の情報を教えてあげたい人などさまざまだ。

そして中には「時刻表の文字を手元で拡大表示して見たい人」もいる。

肉眼では時刻表の文字が小さくて見えないため、写真としてスマホやタブレットに保存し、画面内で拡大して時刻を確認するという使い方だ。

晴眼者でも場合によってはこうした使い方をすることもあるだろう(時刻表に近くまで寄れない場合など)。しかし視力が低い人にとって「モノを拡大して見る」使い方は、さまざまな場面で応用できる。

「視覚障害」は全盲だけではない

一般に視覚障害と聞くと「目がまったく見えない(全盲)人」というイメージを持つ人が意外に多い。しかし見え方は人それぞれによって異なり、はた目には全盲に見えてもわずかに見えるという人もいるし、またその逆もある。

路上で白杖を使い歩いている人を見かけたことがあるだろう。その場合も、「白杖を使っているから全盲だ」と思うかもしれないが、視力が残っている人で白杖を使う人もいる。

見えている場合でも見え方は一様でなく、視野の一部が欠損して見える視野狭窄や、色の見え方が通常と違う色弱もある。

視覚障害に限らず、世の中には見た目から判断できない障害を抱える人が数多くいる。そのために誤解を生じ、日常生活に支障をきたしてしまうことも多い。

視力不足を補う機器

視覚障害者の中には拡大読書機などの機器を使い、新聞や本、書類などを拡大して見る人も多い。

一方でこうした専用機器は、設置するための大きなスペースが必要だったり、補助が出るとはいえ高額な場合も多い。

先日会った弱視の方は「拡大読書機を持っているが場所を取るし型も古くなったので、あまり使わなくなってしまった」と話していた。

拡大読書機代わりのアプリ

スマホやタブレットでは障害者の利用を想定したアプリも数多くあり、その中には拡大読書機の代わりとして使えるようなアプリもある。

読字補助ツールアプリ「明るく大きく」

私が以前よく使っていたのは「明るく大きく」というアプリで、カメラに投影した対象を拡大縮小したり、色味を変えたりなどの機能を備えていた。

タブレットであればそれなりに大きな画面サイズで見えるし、当然他のアプリも使用できる。「拡大読書機専用」ではない幅広い使い方ができる点も便利だ。

iOS標準の「拡大鏡」が登場

そしてiOSではバージョン10からアクセシビリティ機能の1つとして「拡大鏡」が標準搭載された。

iOS 10から標準搭載された機能「拡大鏡」

拡大鏡では前述の「明るく大きく」と同様、カメラに投影した対象の拡大縮小表示や、色覚異常に合わせた色味の変更、フォーカスの固定、撮影による静止機能など障害をカバーする機能が使える。

特別支援学校の中には、弱視の児童の机に「拡大鏡」を起動した状態のiPadを黒板に向けて固定することで、児童が常に黒板の文字を大きく見えるようにしたケースもある。

何よりこうした拡大鏡の機能をOSが標準搭載したことはとても重要だ。

アプリによってはOSのバージョンアップに伴い使用できなくなる可能性があるが、OSが標準で搭載してくれるのであればそうしたリスクも少ないし、わざわざアプリをインストールする手間もない。

日常生活や勉強などさまざまな場面で活用できるこうした機能を、誰もが手軽に利用できる環境は歓迎されるべきだし、こうした機能や機器の活用方法はぜひ多くの方に知っていただきたい。

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