教育のICT化は日々さまざまな状況で進んでいる。たとえば、教科書のデジタル化、インターネット動画を活用した授業など、教師や生徒が直接関係する内容(コンテンツ部分)に関するものは、非常にわかりやすく、また、さまざまなメディアで取り上げられている。
今回は、コンテンツそのものではなく、コンテンツをつなぐ部分、「情報共有」に関するICT化の観点から、教育分野に最適なツールを1つ紹介する。
Stock――シンプルに情報を記録し、共有できるツール
今回紹介するのは株式会社リンクライブが提供する情報共有ツール「Stock」だ。
Stock
https://www.stock-app.info/
今回、株式会社リンクライブ代表取締役社長 澤村大輔氏に、そのシンプルさとリリース後の反響、利用者からの声について伺ってみた。
まず、Stockの最大の特徴は、なんと言っても「シンプルに情報を記録し、利用者間で共有できる」点。澤村氏は「世の中にはたくさんの情報共有ツールがありますが、利用者のリテラシーによっては機能過多になってしまうものが見受けられました。私たちは、ITの専門知識がない方たちでも、パソコンを使うのと同じように、Stockを使ってもらえるよう、シンプルさを追求しました」とコメントする。
具体的には、管理する情報をフォルダごとに分類でき、さらに、「ノート」というテキストメモを使って、テキストデータや画像データをまとめて、利用者間で共有できる点。

この画面は、あるプロジェクトでのStockの利用例である。「01_ネクストラボ株式会社」というフォルダの中に、さまざまなノートが議事録として記録されている。ご覧の通り、ノートの中身は、テキストや打ち合わせ時の写真など、1つのファイル内に閉じられており、一目瞭然だ。
また、ユーザ同士のやりとりを、個別のメッセージあるいはノートに紐付けたメッセージなど、利用シーンに合わせたコミュニケーションが取りやすくなっているのも特徴である。
「多くの方がパソコンを使うことになれてきましたが、Webやアプリで情報管理ツールを使うとなると、まだまだ一般的ではない状況もあり、使うのに臆病になってしまいます。Stockでは、その点をまず解消できるよう、“フォルダ”と“ノート”というわかりやすいネーミングをし、さらに、使い方もパソコンの使用方法と同じようにすることで、使い始める最初の一歩を後押しています」(澤村氏)
また、情報共有ツールで一般的なタスク機能と利用者への割当についても行える。

「これまで、企業や自治体、学校関係者など多くの方にご利用いただいていますが、皆さん、使い始めやすい、とシンプルさを評価してくださっています」と、澤村氏はStockが目指す狙いが、利用者に届いていることを教えてくれた。
教育現場での採用が進む~シンプルがゆえに学習コストが低いメリット
Stockは今、教育関連での注目を集めている。
2019年7月30日に発表された佐賀県武雄市と佐賀県立武雄高等学校が連携した官民共同事業「地域創生参画事業」および「高校生のまちづくり参画事業」の2事業への正式導入のニュースもその1つである。
「もともと武雄市の担当からお問い合わせをいただきました」と澤村氏は正式導入のきっかけについて教えてくれた。「(担当者が)いくつかある情報共有ツールを選ぶ中で、チャットタイプのものでは情報が流れてしまい追いづらく、ファイル管理サービスでは(ファイル作成や閲覧が面倒で機動性に欠けるしコミュニケーションもできないので)プロジェクトを円滑に進めることができなかった」とのこと。
そこでStockを見つけ、正式導入につながった。
現在、自治体・学校関係者(教員・生徒)含め500名(うち高校生が400名)の利用者がいるそうで、おおむね「簡単」という評価をもらっているそうだ。
「この事例に関しては、まだ、導入が始まったばかりなので、最終的な評価はこれからになるかと思います。ただし、最初にもお伝えしたStockの“シンプルさ”が伝わってくれているのは嬉しいですね。また、これからプロジェクトが進むに連れ、時間が経過します。その際、フォルダやノートといった機能、Stockのタスクやメッセージ機能により、情報の共有と時間を超えての伝達がしていけるのではないか、と期待しています」(澤村氏)。

ICT化の目的は、利用者をサポートして、教育の質を高めること
以上、情報共有ツール「Stock」について、開発元の澤村氏へのインタビューと併せて紹介した。繰り返しになるが、ICTツールにとって「シンプルさ」はとても重要な要素だ。とくに、利用者のスキルの差やICTの登場や普及の時期が異なる世代が同じものを使う場合、共通認識のもとで使い合えることが大切になる。
また、今回のStockのように蓄積することに特化していることは、小中高のように年で区切りがある現場だけではなく、大学の研究室やゼミのように、毎年学生が入れ替わる場合でも、しっかりと情報の伝達が行える。
これからICT化を進める教員や教育関係者は、まず、自分たちがどのような教育環境を目指していくのか、そこからスタートすることをお勧めする。先ほど紹介した武雄市の担当者は利用者を想定し、目指すゴールに最適なものとしてStockを選択している。
今、教育現場が取り組んでいる教育のICT化とは、教育環境をICT化することではなく、教育そのものをICTでサポートし、教育の質を高め、その時代に最適化していくことが最も大事だということを忘れないようにしたい。
(取材・文・構成:馮富久)