音声読み上げ機能を活用するためのポイントその2~ICT活用の現場から⑨

音声読み上げ機能を活用するためのポイントその2~ICT活用の現場から⑨

前回はiOSに標準で搭載されている「VoiceOver(ボイスオーバー)」について、使用時に変更となる操作のポイントや多様化した起動方法について紹介した。

今回はVoiceOverをできるだけ快適に使いながら、iPhoneやiPadを操作するためのポイントをいくつか挙げていきたい。

開きたいアプリをピンポイントでタップしなくてもOK

前回も紹介したとおり、通常はアプリのアイコンをただタップすればアプリを開くという操作が、VoiceOver起動時には「開きたいアプリを一度タップしてから、1本指で2回素早くタップ」という操作になる。そして、このときポイントになるのが「アプリをピンポイントで2回タップしなくても開ける」ということだ。

たとえば開きたいアプリを一度タップするとアプリの名前が読み上げられる。次の操作でアプリを開く場合は1本指で2回タップすれば開くのだが、この時は開きたいアプリから離れた位置(隣のアプリだったり何もない空白の部分など)をタップしてしまっても、正常にアプリは開くということだ。

写真アプリを開こうとしている場面。指先はアプリから離れているが、一度タップしてアプリ名が読み上げられフォーカス(枠)が表示されていればOK

「アプリを開きたいのにアプリをタップしなくていい?」と不思議に思うかもしれない。

これは晴眼者だと気づきにくいのだが、全盲の方の立場になって考えるとよくわかる。

常にスイカ割りをし続けるのは疲れる

全盲の方の場合、画面を視認して操作することはできない。だから「どこかを狙ってタップ」という操作が難しい。

画面内に配置されたアプリの大まかな位置は頭の中でわかっていても、開きたいアプリやWebサイトのリンクを常に「狙ってタップ」するのは面倒な操作なのだ。

例えるなら「常に目隠しをしてスイカ割りをし続けている」というイメージだ。目隠しをしたまま正確にスイカを割っていかなければ正しく操作できないというのは、考えてみればかなりのストレスを感じることだろう。


 
またVoiceOverではジェスチャーと呼ばれる操作を行うことで、画面内を自動で読み上げたり、1本指で画面を左右にフリックすることで、前後の項目を1つずつ移動しながら読み上げていくという便利な使い方がある。

この使い方を覚えると、画面からほとんど手の位置を移動させることなくアプリを探したり、Webサイトを読み進めていくことができる。

画面サイズの小さなiPhoneならともかく、Webサイトをパソコンと同等に大きく表示できるiPadの場合、Webサイトによってはリンクや文章など、読み上げ対象となるオブジェクトが広い画面のあちこちにたくさん散らばっていることになる。

不規則に並べられた大量のスイカ

これらを逐一手探りで読み上げていくことの大変さを前述の例えで言えば、広い砂浜に不規則に並べた大量のスイカを目隠しで次々に割っていくという様相だ。

スイカを割る操作に夢中になっていると、今の自分が砂浜のどこにいるのかわからなくなってしまったり、足元のスイカに躓いてそれまでの立ち位置がわからなくなってしまうこともある。

しかも、スイカを割ることで瞬時に新しい砂場に移動(ホーム画面からアプリ画面への遷移)することもあり、そうなるとスイカの位置はリセットされる。そのためユーザは新しい砂場に配置されているスイカの位置を覚えていく必要があるのだ。

効率的な操作方法を覚えることはコントローラを使いこなすことと同じ

これまでの例え話から、画面操作が全盲の方にとっていかに大変かがおわかりいただけたのではないかと思う。VoiceOverを使って音声を頼りに操作できるとはいえ、やはり晴眼者が画面を見ながら操作するのとはいろいろ勝手が違うのだ。

とはいえ上でも少し紹介したジェスチャーを覚えることで、より効率的に画面内を操作することもできる。たびたびの例えで恐縮だが、ジェスチャーを覚えることは便利なコントローラの操作を覚え使いこなすことと似ている。

コントローラを使いこなせれば砂場に散らばったスイカを1つ1つ手で割っていかなくても、その場から動くことなくコントローラを使った遠隔操作で、しかも正確にスイカを割ることができる。

コントローラに搭載された機能の中には、自分の現在地を把握(ホーム画面で何ページ目の何行何列目のアプリを触っているか)したり、一瞬でスタート地点(画面の一番上)やゴール地点(一番下)に移動するといったものもある。

ジェスチャーは使用する指の本数や弾く方向、タップする回数などによって細かく機能が分かれている。

いきなりすべてのジェスチャーを覚えるのは大変だしその必要もないのだが、基本的なジェスチャーを数個使えれば操作が格段に便利になるはずだ。

VoiceOverのジェスチャー機能については、社会福祉法人日本ライトハウス情報文化センターのサイトでジェスチャー一覧表が公開されている。ぜひ参照されたい。

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