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人財育成講座で教えている障害者・シニアへのICT講習におけるポイント2 ~ICT活用の現場から⑬

前回に続いて今回も、筆者が青森県で開講している「障害者・シニアの方にiPadを教える人財育成講座」から、障害に関わる方や教育関係者にとって参考にしてもらえそうなポイントをお届けしたい。

iPadとPCとの比較


 
講座で定番としている内容の1つに、iPadとPCとの比較がある。

iPadが世に登場した頃よく言われたのが「PCと何が違うんだろう」という点だった。

PCとiPad、似ている点があってもよいがやはり「PCにはできない」「iPadならでは」というポイントがなければユーザは広がらない。

著者はiPadを初代から使っているので、一見当たり前と思うようなPCとの違いを日々体験しているわけだが、iPadをあまり使ったことがない方にとってはそもそも「iPadのことを学ぶ意義」がなんなのかピンとこないまま受講される方もいる。

そのためiPadが持つ、iPadならではの特性や、PCとiPad両方が備えている機能なども含めて、PCとiPad双方の違いについて基本的なことからじっくり説明するようにしている。

例としては以下のようなポイントを挙げ説明している。

上で挙げたポイントの1つ「指での操作」について説明したい。

これは言葉の通り「画面を指で直接触って操作できるかどうか」ということだ。

昨今はタブレットの性能を備えたPCも登場してきたが、PCによっては入力方法がキーボードやマウスのみで、画面をタップしての操作には対応していない機種もある。

一方でiPadは画面を指で直接タップして操作するのが基本だ。

一見するとなんでもないことに感じるかもしれないが、ここで受講生の皆さんに質問するのが講義の鉄板ネタでもある。質問はこうだ。

「画面を指で直接操作できるメリットはなんでしょう?」

「画面を指で直接操作できるメリット」とは


 
この問いかけに対し、ピンとくる人もいればまったく思いつかないといった様子の人もいる。思いつかない派の理由は、画面を指で操作することはごく当たり前すぎるからだろう。

この講座名に「障害者」というキーワードが入っており、その中でもこの質問が視覚障害に関係していることに気づけば、正解にたどり着けるかもしれない。

答えをごく端的に述べれば「弱視や視野狭窄の人にとって、マウスカーソルは見失いやすい。自分の指は見失いにくい」だ。

PCでマウスを使っている時、マウスカーソルがどこにいったか一瞬見失ってしまったという経験は誰にでもあるのではないだろうか。

たいていはしばらくマウスを動かしているとそのうち見つかるものだが、視覚に障害がある人の場合にはそれが難しい。

とくに視野狭窄(視野が狭くなる症状。中心部だけ小さく見えたり、逆に中心部だけが見えず周辺が見える、片目だけ見えるなど人によって見え方が異なる)がある場合、極端に狭い視野の中から画面内の小さなマウスカーソルを探すのは、思っている以上に大変な場合がある。

一方、画面を指で直接操作する方法であれば、マウスカーソルの代わりに自分の指を入力装置として使える。視野が狭くても自分の指の位置は感覚的に認識しやすいので、マウスを使うよりも快適に操作できるというわけだ。

上で述べたように、一見当たり前に思える「画面を指で操作できる」ということひとつ取っても、それに大きなメリットを見出せる場合もある。

ふだん何気なく使っているスマホやタブレットの操作方法や機能も、障害や事情によっては予想外の活用方法が隠れていることがある。スマホやタブレットを使うときにちょっと意識してみることで、なんでもないことの中に意外な良さを見出せるかもしれない。

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