人財育成講座で教えている障害者・シニアへのICT講習におけるポイント3 ~ICT活用の現場から⑭

人財育成講座で教えている障害者・シニアへのICT講習におけるポイント3 ~ICT活用の現場から⑭

筆者が青森県で開講している「障害者・シニアの方にiPadを教える人財育成講座」では、アクセシビリティ機能などOSに標準で搭載されている機能を活用するようにしている。

便利な機能がOSで標準搭載されていることのメリットは、この連載の第2回にも書いたので詳しくはそちらを参照いただきたい。

アクセシビリティ機能はもちろん、この講座に欠かせなくなっている標準搭載の機能がAirDrop(エアドロップ)だ。

ファイル共有機能「AirDrop」

AirDropはmacOSやiOS、iPadOSの機器同士でファイルを送受信できる機能。ユーザはWi-FiおよびBluetoothを介して他のユーザに写真やPDF、URLなどさまざまな情報をやり取りできる。

AirDropに対応している機器や環境であれば、異なるOS同士でも送受信できるので重宝している。

たとえばMacで作成した講義用資料のデータを、AirDropを使って講座用のiPadにコピー。講座では講座用のiPadをプロジェクタに接続しスクリーンに投影して講義をする。

「Macで作成したならMacをプロジェクタに接続すればよいのでは?」と思うかもしれない。しかし講座で使用しているのはiPad。説明のたびにプロジェクタへ接続する機器を切り替えるのは手間がかかるし時間のロスにもつながる。何より講座進行のテンポが狂ってしまう。

iPadにプロジェクタを接続すれば講義資料を見せて説明しつつ、状況に応じてすぐiPadのホーム画面やアプリに切り替え説明に入ることができる。

作成しやすいデバイスで資料を作成し、講義しやすいデバイスで講義をする。AirDropはこうした細々したタスクを快適にしてくれる機能だと日々実感している。

講義資料をAirDropで配布

上で挙げた例はAirDropにおける講師側での活用法だが、もちろん受講者に対してもAirDropは活用できる。講座では講義資料のデータをAirDropで配布している。


 
AirDropでファイルの共有を行うには、事前にAirDropで共有範囲を設定しておく必要がある。設定アプリから「一般」→「AirDrop」から設定できる。


 

講義資料はPDFで作成しており、標準の写真アプリでは開けない。そのため講座ではApple公式アプリ「ブック(旧iBooks)」に保存し、受講者がいつでも閲覧できるようにしている。

ITリテラシーの高い受講者の中には、取り込んだ講義資料にApple Pencilを使ってメモを書き込んでいる人もいる。第1回でも紹介したようにデジタルの筆記用具は書いたり消したりが簡単に行えるので、便利なIT機器を活用する貴重な機会にもなっているようだ。

ちなみに「講師から受講者へ資料を配布できる」ということは、逆に言えば「受講者から講師へ提出物を送れる」とも言える。さまざまな活用法が考えられるだろう。

「ネット環境がなくてもファイル共有できる」というメリット

ファイル共有というと「クラウド経由」というイメージがあるかもしれない。たしかにクラウドを使ったファイル共有は便利で、講座でも一時期Dropboxなどのクラウドサービスを使って講義資料を配布していたこともある。

しかしAirDropには「ネット環境がなくてもファイル共有できる」というメリットがある。これはとくに地方で講座を運営している筆者にとってとても大きな利点だ。

人財育成講座は公共施設や民間の研修部屋を借りて実施しているが、地方の施設で無線LANが配備されている環境は多くない。そのためネット回線は自前で用意する必要が出てくる。実際私が講座で使用しているiPadは私のiPhoneからデザリングでネット接続している。

こうしたネット接続が完備されていない環境でも、AirDropならBluetooth経由で受講者と素早くファイルを共有できる。

受け取り側の操作が少ないことも好印象

さらに言うなら、AirDropはファイルを受信する側の操作がとても少ない。せいぜい

  • ファイルの受け取りを承認する
  • どのアプリで開くかを選択する

くらいで、iPadに詳しくない受講者でもそう操作に行き詰まることなく、スムーズにPDFを受け取ってiPadで閲覧できている。

こうした操作の容易さもAirDropの利点だ。いくら便利な機能でも、ITリテラシーが高くないと操作できないようでは本末転倒だ。

人によってはベーシックでなんということはないAirDrop。しかしこの機能には活用法の幅の広さ、環境を選ばず使える柔軟性、そして何よりユーザに優しいという、ユーザにとってのメリットがたくさん詰まっている機能だと感じている。

ご注意

本記事で紹介しているように、AirDropを通じてファイルを共有したり、MacやiPhone内のデータをプロジェクタを介して不特定多数に向けて表示する場合、使用するデータに関して著作権法に則って利用することが前提となりますので、ご注意ください。
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