視覚障害のある方へのオンライン講習レポート~ICT活用の現場から㉒

視覚障害のある方へのオンライン講習レポート~ICT活用の現場から㉒

新型コロナウイルスの影響によって私たちの生活には大きな変化が起こっている。

社会人には仕事の環境が、学生には学びの場が、それぞれテレワークになったりやオンライン授業に変わったりなど「もうしばらく先のことだろう」と思っていた変化が一気に現実のものとなった。

コロナの影響は障害のある人たちにも当然ながら大きな影響を与えている。

そのためか今年は障害を持った方や関係団体からの相談が目に見えて増えた。

受けた相談の1つが「iPhoneの使い方を教えてもらえないか」という視覚に障害のある方からの希望だった。

相談者の方は私と同じ青森県内在住で、弱視の方。連絡を受けた時期は今年の4月。青森でもとくに自粛ムードが高まっていたころで、直接対面して行う講習会の類は難しい情勢だった。

オンライン講習を試すチャンス?

折しも自粛ムードが全国に広がるなか、学校現場では前述のオンライン授業の話題でもちきり。学校に行かずとも自宅から学校の授業を受けたり学級会を行うなどの事例が散見されていたことや、私自身教育の分野に関心があったことから「ひょっとしたらオンラインでiPhoneの講習会もできるのでは?」と思うようになった。

以前にもSkypeやLINEのビデオ通話などを使って、視覚障害のある方とやり取りしたことはあった。ただ講習会という形で、オンライン上でスマートフォンやタブレットの講習を、視覚に障害のある方を相手に行ったことはそれまでなかった。

しかし「これも何かの縁。それにこれ(オンラインでのiPhone講習)がうまくいけば、今までよりも多くの人に講習やサポートができるようになる」と考え、相談のあったAさん(仮名)にオンライン講習をもちかけ、かくして初の「視覚障害のある方にオンラインでiPhoneの講習」を行うことになった。

2台の端末が必要

使用したアプリはSkype。オンライン会議サービスといえばZoomの人気が高いものの、当時ちょうどZoomのセキュリティに関する懸念が話題になっていたこともあり、老舗サービスのSkypeを使うことにした。

視覚障害のある方にオンライン講習する上で抑えておきたいのが「2台の端末が必要」なことだ。

1つは相談者の方が使用する端末(今回はiPhone)。もう1つはビデオ通話で通信するための端末だ。

通常ビデオ通話というと、端末はビデオ通話で使う1台があれば問題ない。

しかし今回のように、視覚に障害のある方への講習を行う場合は、教える側(髙森)が教えられる側(Aさん)の画面を見る必要がある。

これに対応するため、Aさんには自身のiPhoneとは別に息子さんのスマートフォンをビデオ通話用にお借りした。

まず私と息子さんのスマホをSkypeでビデオ通話を繋いだ。次にAさんが使うiPhoneの画面が見えるように、息子さんのスマホのカメラからAさんのiPhoneが見えるようにセッティングしてもらった。


 
上の写真は私のiPad(Skype接続に使用)に移ったAさんの手元。

並び順を言葉で表すと「Aさん→息子さんのスマホ→AさんのiPhone」の順となる。Aさんが息子さんのスマホを腕の中に抱えるような形だ。

上の写真のように、息子さんのスマホは縦向きになっている。横向きだとカメラがAさんの腕にかかりやすくなってしまう可能性があるし、縦向きの方がAさんの操作に支障が出にくいと思われたのが理由だ。

そのぶん映像のサイズは横向きより少し小さく見えづらくなるが、画面に映る文字や音声が見聞きできたので問題はなかった。

スマホに映るiPhoneの位置は都度調整

講習を行っていると、ちょくちょくAさんの手元が画面から見切れてしまうことがあった。

ビデオ通話用に使っている息子さんのスマホは固定しているが、Aさんの手元は固定していないので、当然操作をしているうちに位置が微妙にズレてくる。

その時は都度「iPhoneをもう少し右に」「少し上の方を手前に起こす感じで」など声をかけながら、iPhoneの画面が見やすくなるよう調整を行った。

それでも初めてのオンライン講習は、思っていたよりもスムーズに進められそうに感じた。講習の内容については次回詳しく触れたい。

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