新型コロナウイルスの影響から期せずして行うことになった「視覚障害のある方にオンラインでiPhoneの講習」。
ことの経緯は前回をご覧いただくとして、今回は実際に視覚障害(弱視)の方にオンラインでiPhoneの講習を行った冒頭の様子を紹介する。
前回の終盤でも後半でも書いたように、オンラインでiPhoneの講習を行う上で重要なポイントの1つが、「相手の画面を把握しやすくしておくこと」だ。
直接対面して行う講習会と違い、オンラインではディスプレイに映る範囲でしか、視覚的な情報は入ってこない。
手や肘、端末を固定でもしない限り、操作を続けていれば自然とディスプレイから操作中のiPhoneの画面が見切れる場合も出てくる。その場合は都度、位置の調整をお願いしながら進めた。
今回は相談者から説明してほしいと指定されたアプリの導入部分を、ビデオ通話アプリ「Skype」を通してサポートした一部始終について紹介する。
アプリ「Seeing AI」の使い方を案内
オンライン会議やオンライン授業でも、長時間ディスプレイに向かい続けるのは負担が大きいため、この日は60分と時間を決めて講習を行った。
相談者の要望もあり、この時は物体認識アプリ「Seeing AI」について、アプリの初動画面から一部の機能の使い方を案内することに。
ちなみにアプリはすでに相談者が自身のiPhoneにインストール済みだったものの、最初の画面から先へうまく進めないという話だったので、オンライン越しに件の画面を見せてもらった。
弱視の方ならではの問題に遭遇
Seeing AIの初回起動画面では、Seeing AIの主な機能紹介のあと、利用規約に関する文章と、それに同意するチェックボックスが表示される。
一見なんでもない画面で、とくに操作で躓くような箇所はないように思える。自分自身でも事前にSeeing AIをインストールし、VoiceOver(iOSの音声読み上げ機能)を使って操作に支障がないか確かめていたのだが、大きな問題はなかった。
しかし相談者のiPhoneに表示されたSeeing AIの画面を目にしたとき、理由に合点がいった。
上の図は、当時相談者のiPhoneに表示された画面と同じ状態を、私のiPhoneで再現したものだ。
2枚の画像を見比べれば一目瞭然。相談者のSeeing AIに表示された説明文の文字サイズが、通常よりもかなり大きなサイズで表示されていたのだ。
これはiPhoneの文字サイズを通常よりも大きく表示するように、設定で変更していたためだ。
「テキストサイズを変更」と「さらに大きな文字」
iPhoneに表示される文字サイズは「設定」アプリの「画面表示と明るさ」内にある「テキストサイズを変更」から調整できる。アプリによっては適用されないが、設定アプリのメニューやメモアプリなど純正のアプリでは対応しているものが多い。
そして「さらに大きな文字サイズに」することも可能だ。
「設定」アプリの「アクセシビリティ」→「画面表示とテキストサイズ」→「さらに大きな文字」を有効にすると、文字通りさらに大きな文字サイズに変更できる。
話を戻すと、相談者のiPhoneにはこの「さらに大きな文字」機能によって、通常よりもかなり大きなサイズで説明文が表示されていたということだ。
弱視の方にとって大きなサイズで文字を表示できることはメリットだ。しかし今回のように音声読み上げと並行して使った場合、思わぬ問題が生じる。その問題とは何か。答えは次回にお示ししたいと思うので、この記事を読んでくださった皆さまには、一緒にお考えいただきたい。