視覚に障害のある方へ講習するときに配慮しておきたい準備のポイント~ICT活用の現場から⑮

視覚に障害のある方へ講習するときに配慮しておきたい準備のポイント~ICT活用の現場から⑮

講座や講習会を充実したものにするためには、内容はもちろんのこと、そこまでに至る入念な準備が欠かせない。

こと障害のある方を対象とした講習会などの場合、健常者を対象とした準備に加えて、それぞれの障害に配慮した準備が必要となる。

今回は視覚に障害のある方へiPhoneやiPadの講習をする際、配慮しておきたい5つの準備のポイントを紹介したい。

①インターネットに接続できる環境か事前にチェックする

アプリやアクセシビリティ機能によってはインターネットがなくても使用できるが、幅広い用途を紹介するのであればインターネット接続は必須だ。

とくにSiriなどの音声を認識させる機能の多くはインターネットがないと動作しない。視覚障害があるハンデを音声で補いたい場合のことを考えても、講習会の会場でインターネットに接続できるかどうかは事前に確認しておきたい。

前回の記事でも書いたように、地方における公共施設や民間の研修部屋では設備面での不安を考慮しておく必要がある。Wi-Fiなどの設備が整っていなかったり、導入されていたとしても回線速度が遅かったり、部屋によって接続できない場合があるなど不安定なケースがよくある。

回線付きのデバイスであれば安心だが、Wi-FiモデルのiPadを講座で使用したい場合はモバイルルーターやスマホのテザリングなど、自前でインターネット環境を整えられるようにしておくのがお勧めだ。

②アプリの並び順を統一する

視覚に障害がある方の場合、目視でホーム画面内のアプリを見つけることが難しいことがある。とくに複数人を対象とした講座の場合、ホーム画面内のアプリの並び順はすべてのデバイスで統一した並びにしておくと説明がしやすいし、探す側も安心する。

ちなみにiPhoneやiPadにはホーム画面のアプリの並びをリセットする機能がある。「設定」アプリの「一般」→「リセット」→「ホーム画面のレイアウトをリセット」を行うと、アプリの並びを工場出荷時の状態に復元できる。講座用に数十台の端末を用意するときなどに重宝するので覚えておきたい。

設定アプリのリセット画面

③(必要に応じて)画面の向きを固定する

iPhoneは縦向きで使用することが多い一方で、iPadはアプリや個人の好みによって縦向きに使うか横向きに使うかは異なる。

アプリに制限がある場合などを除いて、基本的にはiPadを縦向きから横向き(もしくはその逆)に持ち替えると、画面の表示もそれに合わせて見やすい向きに補正される。

一見すると便利だが、視覚に障害がある場合、この便利な機能がかえって使い勝手を損なってしまうことがある。

上で述べたように視覚に障害がある方の場合、画面の変化を視覚的に捉えることが難しい。iPadは少しの傾きでもすぐに反応するため、当事者が気づかないうちに画面の向きが変わってしまうことがある。向きが変わると同じホーム画面でもアプリの位置が変わってしまうため、「ここにあったはずのアプリが見つからない」と困惑してしまうのだ。

こうしたトラブルを防止するために有効なのが、画面の向きを固定することだ。

iPadにおける画面の向きを固定する方法は、新しい世代の機種はコントロールセンターから切り替えられる。古い機種の場合は筐体側面に切り替え用の物理ボタンがあり、そこで切り替えられる場合がある。ちなみに人によっては向きを固定せず自然のまま操作を試したいという場合もあるので、向きを固定するか否かは本人の希望を聞いて決めるのがよいだろう。

コントロールセンターから「画面の向きのロック」をオンにした状態

④iPadの型番やOSをチェックする

上で述べたコントロールセンターのように、iPadの新旧やOSの違いによってiPad自体の機能や操作方法が異なる場合がある。たとえばカメラアプリの場合、iPadの機種によってフラッシュが使えるものと使えないものがあったり、撮影できるモード(パノラマやポートレート)の対応具合が異なる場合がある。

アクセシビリティの関係でいえば、顔認証機能が使える機種はその特性を活かし、視線で操作を行えるアプリもある。

とはいえ、一概に新しい機種を揃えればよいかといえばそうとも言えない。最近のiPhoneやiPadはホームボタンがない機種が登場しているが、ホームボタンがある機種を使いたいというニーズは依然として高い。値段もホームボタンがある機種の方が安価だ。機種を選ぶ際は機能面だけでなく当事者の希望も踏まえて検討されたい。

⑤アプリのアップデートや変更がないかチェックする

アプリによってはアップデートにより画面のレイアウトが変わったり機能が追加される場合がある。問題点が解消されればよいが、アップデートによってはかえって使いにくくなってしまう場合がある。音声読み上げの面でいえば、アップデートのたびにVoiceOverでの読み上げ具合が変わってしまい、苦労するという声を当事者から聞くことがある。

講座などで紹介したいアプリが決まっている時には、アプリに変更がないか、あるとしたらどういった変更なのかを事前にチェックしておくことをお勧めする。

以上5つのポイントを挙げたが、これら以外にも当事者からの要望があればそれに合わせた事前準備が必要になることもある。可能な範囲で要望に合わせた柔軟な準備をしておくことが、充実した講習につながるはずだ。

(Visited 35 times, 1 visits today)

Related Post

Other Articles by 髙森三樹